シフト制のパート・アルバイトに有給休暇を何日付けるか。契約で働く日数が決まっていれば付与日数表に当てはめられますが、毎月のシフトで日数が変わる人は、その前の判断に迷います。
令和8年(2026年)6月19日、厚生労働省の「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定)が改正されました。所定労働日数を算出しがたい場合に、過去の労働日数の実績を使って有給休暇の日数を計算できることが明記されています。改正後の留意事項
法律や付与日数表が変わったわけではありません。私が今回の改正で注目したのは、先の勤務日数が分からない人について、何を根拠に計算するかが示された点です。
比例付与の基本ルールと付与日数表
比例付与は、働く日数が少ない人の年次有給休暇を、所定労働日数に応じて付与する仕組みです。「所定」とは、契約などで働くことが決まっている時間や日数を指します。
対象となるのは、週所定労働時間30時間未満で、週所定労働日数4日以下の人です。週以外の期間で労働日数を定めている場合は、年間216日以下が対象です(労基法39条3項、労基則24条の3)。
日数が少なくても、週30時間以上なら通常の労働者と同じ日数を付与します。パートやアルバイトという名称だけで比例付与に決めることはできません。
初回の付与要件は、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していること。その後も、直前の1年間について出勤率の要件を確認します(労基法39条1項・2項)。
表を使う際の基準日
有給休暇を付与する日を「基準日」といいます。原則として雇入れ6か月後が初回で、その後は1年ごとです。
表は、基準日時点の週所定労働日数と勤続期間を組み合わせて読みます。週以外で日数を定めている人は、年間所定労働日数の欄を使ってください。出典は厚生労働省リーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」です。
| 週所定労働日数 | 年間所定労働日数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
シフト制の有給が決めにくかった理由
この留意事項でいうシフト制は、契約時には具体的な労働日や労働時間を確定せず、その後に作るシフト表で勤務が決まる働き方です。
毎月の勤務日数に幅があると、基準日になっても、この先の年間所定労働日数が分からないことがあります。勤続期間の列は選べても、日数の行を選べない。付与日数表だけでは答えが出ないのは、このためです。
ただし、日数を決めていないからといって、有給休暇の付与を見送ることは認められません。継続勤務と出勤率の要件を満たした人には付与が必要で、会社はその日数を決める根拠を用意する必要があります。
2026年6月改正で示された「実績ベース」の計算方法
実績で数えてよいのは、所定労働日数を算出しがたい場合に限られます。 シフト制でも「週3日」などと所定が決まっている人は対象外です。その場合は、従来どおり基準日時点の所定労働日数で判断します。
今回の留意事項では、所定労働日数を算出しがたい人について、過去の実績を年間所定労働日数に置き換える方法が示されました。初回とその後では、集計する期間が異なります。
| 基準日 | 1年間の所定労働日数とみなす日数 |
|---|---|
| 雇入れ6か月後(初回) | 雇入れから6か月間の労働日数の実績 × 2 |
| 雇入れ1年6か月後以降 | 前年の労働日数の実績 |
集計期間と表への当てはめ
この方法で出した日数を、付与日数表の「年間所定労働日数」に当てはめます。そこから勤続期間の列をたどれば、付与日数が分かります。
半年分を2倍するのは初回だけです。雇入れ1年6か月後以降は、前年の実績をそのまま使います。ここでいう前年は、前の基準日から1年の期間です。会社の年度や給与計算の締め日とは区切りが違うことがあります。
計算例:完全シフト制アルバイトの付与日数
Aさんは架空の例です。所定労働日数の定めがない完全シフト制のアルバイトで、週所定30時間未満、各算定期間の出勤率は8割以上とします。
| 基準日 | 実績 | みなし年間所定労働日数 | 該当する行 | 付与日数 |
|---|---|---|---|---|
| 雇入れ6か月後 | 6か月間で60日 | 60日 × 2 = 120日 | 73〜120日 | 3日 |
| 雇入れ1年6か月後 | 前年140日 | 140日 | 121〜168日 | 6日 |
| 雇入れ2年6か月後 | 前年100日 | 100日 | 73〜120日 | 4日 |
前回の付与日数との違い
実績ベースでは、勤続期間が延びても付与日数が毎回増えるとは限りません。Aさんは、雇入れ2年6か月後の付与が6日→4日です。前年の実績が変わり、表で使う行が変わったためです。
この4日は、その基準日に新しく付与する日数です。すでに付与した有給休暇の残日数を、この計算に合わせて減らす話ではありません。
契約に「月○日程度」と書いている場合
労働条件通知書や契約書に「1か月○日程度」と書かれていても、所定労働日数を算出しがたい場合があります。そのような人については、目安の日数を使う方法も示されています。
使えるのは、目安から計算した有給休暇の日数が、実績から計算した日数を上回る場合です。比べる対象は、年間の労働日数だけでなく、表に当てはめた後の付与日数です。
目安を使ったほうが少なくなるなら、この扱いで付与日数を減らすことはできません。
実績より多くなる場合の5日付与
先ほどのAさんの契約に、目安として「1か月12日程度」と記載されていたとします。初回の付与日数を目安から求めると、次の計算です。
12日×12か月=年約144日 → 121〜168日の行 → 雇入れ6か月後は5日。
Aさんの初回は、実績ベースでは3日でした。目安で計算した5日のほうが多いため、目安を用いて5日を付与して差し支えありません。
「1か月12日程度」と書いてあれば必ず5日を付与しなければならない、という意味ではありません。留意事項は、実績による日数を上回るときに、目安での算定も認めています。
誤解しやすいポイント
シフト表の有無と対象者
シフト表を使っている会社でも、働き方は同じとは限りません。「毎週月・水・金」と所定が決まっている人に、実績ベースの計算を当てはめることはできません。
また、年や月の労働日数が決まっていて、勤務時間のパターンを組み合わせる交替勤務は、この留意事項の対象外です。私なら、勤怠の集計に入る前に、契約で日数をどう定めているかを確かめます。
今回の改正は、対象となる人に使える計算方法を示したものです。すべてのシフト制労働者について実績で計算する義務を設けたものではなく、労基法や付与日数表の変更でもありません。
会社都合による日数の変更
実績が付与日数に影響するとしても、有給休暇を減らす目的でシフトを絞ってよいわけではありません。留意事項では、実際に働く日数と所定労働日数が乖離しないことが望まれるとしています。
使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることも認められません。契約上の日数と勤務の実態が離れている場合には、年休の計算だけで済ませず、シフトの決め方も確認する必要があります。
契約は週3日、実際は週5日の人
逆の食い違いもあります。契約書では週3日なのに、実際には毎週5日入ってもらっている人です。週所定30時間未満として契約上の週3日で数えると、雇入れ6か月後の付与は5日。週5日なら比例付与の対象から外れて、10日になります。
この場合にどちらで付与するかは、留意事項にも書かれていません。ただ、所定労働日数は「その日数のとおりに働く」という約束です。実態がずっと週5日なら、契約の日数のほうが実態に合わせて変わったとみられるおそれがあります。
私なら、実態に合わせて契約を直すか、実態どおり週5日として付与するのが安全だとお伝えします。繁忙期に一時的に出勤が増えた程度なら、原則どおり基準日時点の契約上の所定で判断します。
年5日の取得義務
法定の付与日数が10日以上なら、シフト制のパート・アルバイトも、基準日から1年以内に5日取得させる義務の対象です(労基法39条7項)。
たとえば、前年実績が169〜216日なら、雇入れ3年6か月後の付与で10日です。それまで対象でなかった人が、勤続期間や実績の変化によって対象に入ることがあります。
本人の請求などですでに取得した分は、年5日に含めます。会社が別に5日を追加して取得させる義務ではありません。
会社が今確認しておくこと
私なら、労働条件通知書と勤怠記録を並べて、対象者ごとに確認します。契約で所定労働日数が決まっているか、目安だけが書かれているか、日数の記載がないかによって、計算に使う情報が違うからです。
実績を使う人については、基準日に合わせて労働日数を集計できるかを確認します。初回に必要なのは雇入れから6か月、その後は前の基準日から1年の記録です。
給与計算用の月末締めデータをそのまま使うと、月の途中で雇い入れた人の集計期間がずれることがあります。勤怠システムで開始日と終了日を指定できるか、帳票から日ごとの記録を追えるかを見ておくと、付与直前の数え直しを減らせます。
目安の日数を使う場合は、実績で計算した日数も残しておきたいところです。どちらが多かったかを記録しておけば、本人から付与日数の説明を求められたときにも根拠を示せます。
就業規則の年休規定と実際の計算手順に食い違いがないかも確認します。担当者向けには、集計期間、使った日数、表の該当する行が分かる記録を残すと、翌年の確認や引き継ぎに使えます。
取得状況と管理簿の保存
付与日数が10日以上になった人は、年5日の取得管理の対象にも加えます。付与処理と取得管理を別の担当者が受け持つ会社では、対象者を引き継ぐ手順も必要です。
年次有給休暇管理簿には、労働者ごとに基準日、取得した時季、日数を記録します。保存期間は、有給を与えた期間中とその満了後3年間(労基則24条の7。本則は5年間で、附則71条により当分の間3年間)です。
計算に使った勤怠記録や契約書も、管理簿と照らし合わせられるようにしておくと、付与日数と取得状況の両方を確認できます。
まとめ
所定労働日数を算出しがたいシフト制では、初回は6か月の実績×2、その後は前年の実績を使って付与日数を計算できます。契約に目安があれば、実績で計算した場合より付与日数が多くなるときに、目安で算定して差し支えありません。
自社で確かめるなら、次に基準日を迎える人の労働条件通知書と勤怠記録から始めるのがよいと思います。所定日数の定め、集計する期間、付与日数の根拠を確認し、10日以上なら年5日の取得管理にも反映します。
- 厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日、改正 令和8年6月19日) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf
- 厚生労働省リーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
