東京都内で従業員を雇っている、10〜50人規模の会社の社長・人事担当者へ
東京都内に事業所やオフィスがあって、従業員が10〜50人くらい。
パートさん・アルバイトさんも何人か雇っていて、人事担当は社長ひとり、または総務との兼任。
採用は都内だけでなく、埼玉・千葉・神奈川から通ってくる人もいる。
そんな会社に向けて、この記事を書いています。
2026年8月5日に東京地方最低賃金審議会が「1,280円」への引き上げを答申し、9月1日に東京労働局が正式に決定・公示しました。現行の1,226円から54円増、率にして4.40%の上昇で、2026年10月1日から発効します。
「うちのパートさんの時給、いま何円だっけ」と一瞬考えた方は、最後まで読んでいただきたいです。

結論:9月中に賃金表を洗い直し、10月の給与に間に合わせる
先に結論を言います。
東京都の最低賃金は、2026年10月1日から1,280円に引き上げられます。2026年9月1日に東京労働局が正式に決定・公示しました。現行の1,226円から54円増です。
もう「見込み」ではなく、額も発効日も確定した話なんですよね。だからこそ、対応を10月まで先送りすると間に合いません。
最低賃金の適用は、実際に働いた日を基準に判断します。10月1日以降に働いた分の賃金から、新しい額(1,280円)以上を支払う必要があります。逆算すると、9月中に賃金表の見直しを終わらせて、10月の給与計算に反映させておくのが安全な進め方です。
東京都の1,280円は、2026年度に各都道府県が目安どおりに引き上げた場合の全国加重平均(1,176円)を104円上回り、今回も全国トップの水準です。「日本一高い」という数字のインパクトに気を取られがちですが、確認すべき実務は他県の会社とまったく同じです。
参考までに、2025年度(令和7年度)の東京都最低賃金(1,226円)は発効が10月3日でしたが、今回は10月1日と明確に決まっています。
東京都の最低賃金は、どう決まったのか
念のため、決定までの流れを整理しておきます。
最低賃金は、①中央最低賃金審議会が全国の目安額を示す、②各都道府県の地方最低賃金審議会が地域の実情に応じて答申する、③労働局長がその答申(意見)の要旨を公示する、④公示の日から15日以内に労使が異議を申し出る機会を経る、⑤労働局長が最低賃金を決定し、その決定した事項を公示する、という流れで決まります(最低賃金法10条・11条・14条)。
東京都は、中央の目安「Aランク54円」どおりの答申を受けたのち、異議申出の手続きを経て、2026年9月1日に東京労働局が1,280円への改定を正式に決定・公示しました。
最低賃金の効力は、決定した事項の公示(最低賃金法14条1項)の日から起算して30日を経過した日から生じます(最低賃金法14条2項)。9月1日公示・10月1日発効は、この原則どおりの日程です。
最低賃金の適用は、給与の支払日ではなく、実際に働いた日(労働日)を基準に判断します。2026年10月1日以降に働いた分の賃金から、新しい額(1,280円)以上を支払う必要があります。
決まった以上、あとは10月1日の発効に間に合うよう手を動かすだけ、というのがこの記事の立場です。
この場面でよくある失敗
東京都内の会社で、最低賃金の引き上げ時期によく見かける失敗を挙げます。
- パート・アルバイトの時給だけ直して終わりにする:正社員の月給を時間換算したときに1,280円を下回っていないか、確認が抜けやすいです
- 「東京は元々高いから大丈夫」と油断する:全国最高水準だからこそ、新卒や未経験者の初任時給を低めに設定している会社ほど、1,280円との差が縮まっていることに気づきにくいです
- 勤務地ではなく本社所在地で最低賃金を判断してしまう:最低賃金は実際に働く場所の都道府県で決まります。埼玉・千葉・神奈川の店舗や現場で働く従業員に、東京都の額をそのまま適用するのは誤りです
- 給与計算期間が10月1日をまたぐケースで単価の切り替えを忘れる:締め日が月末でない会社(たとえば20日締めなど)では、9月30日までの労働分と10月1日以降の労働分で単価が変わります。期間を分けて計算しないと、10月分の一部が旧単価のまま残りがちです
- 通勤手当や家族手当を合算して、最低賃金と比較してしまう:最低賃金の比較に使う賃金には、通勤手当・家族手当・臨時に支払われる賃金などを含めません。合算すると実質下回っていても気づきにくくなります
どれも「知らなかった」では済まされない部分ですが、忙しい時期ほど後回しにされがちなんですよね。

見落としやすい「特定最低賃金」——東京都はむしろ心配しすぎなくていい
大阪府など一部の県では、業種によって地域別より高い「特定最低賃金」が別に設定されていて、これが実務上の落とし穴になることがあります。
東京都にも、鉄鋼業やはん用機械器具製造業など、いくつかの業種に特定最低賃金が設定されています。ただし、東京都の場合はこれらの改定がここ数年止まっており、地域別最低賃金(10月1日以降は1,280円)をすでに下回っている状態です。
つまり、対象業種に当てはまる会社であっても、地域別の1,280円さえ満たしていれば、特定最低賃金を理由に不足が生じることはありません。地域別と特定の両方が適用される場合は高い方以上を支払う必要がありますが、東京都では地域別のほうが高いため、実務上は地域別だけを見ておけば足ります。
「特定最低賃金が何かよく分からない」という会社も、東京都に関しては神経質になりすぎなくて大丈夫です。ここは他県と対照的な点なので、東京都以外にも事業所がある会社は思い込みで判断せず、それぞれの労働局のホームページで確認してください。
判断軸:何から手をつけるか
「うちも当てはまるかも」と感じたら、次の軸で今の体制を点検してみてください。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 対象者の洗い出し | 時給・日給・月給の全従業員 | 現時点で1,280円を下回る設定がないか |
| 勤務地の確認 | 従業員の実際の勤務地(都内かどうか) | 埼玉・千葉・神奈川の事業所勤務者に東京都の額を誤適用していないか |
| 除外賃金の確認 | 最低賃金の比較に使う賃金の範囲 | 通勤手当・家族手当・臨時の賃金を誤って含めていないか |
| 適用の基準日 | 支払日ではなく労働日 | 2026年10月1日以降に働いた分から1,280円以上になっているか |
| 特定最低賃金の対象業種 | 自社の業種が対象かどうか | 対象でも地域別1,280円を満たせば足りる場合が多い |
| 給与ソフトの設定 | システムの最低賃金・単価設定 | 10月1日発効・1,280円が正しく反映される設定になっているか |
この6点を9月中に一度洗い出しておけば、10月の給与計算で慌てずに済みます。
全国の答申状況や大阪・千葉との比較を見ておきたい方は2026年の最低賃金はいくら?東京・大阪・千葉の見通しと中小企業の対策、対応の具体的な準備項目は2026年最低賃金 答申前にやるべき実務6つでも整理しています。
オマカセロウムくんとfreee人事労務でできること
最低賃金の対応は、金額を1つ変えるだけに見えて、実はチェックすべき項目が多い作業です。
オマカセロウムくんでは、毎年の最低賃金改定のタイミングで、顧問先の賃金表と実際の支給額を突き合わせて確認しています。
今回の1,280円への改定を受けて、対象になりそうな従業員を洗い出し、必要な賃金改定の案内までまとめて対応しています。人件費の見直しを売上や利益の構造から考え直したい会社には、最低賃金の引き上げに負けない、人件費を売上から逆算する方法も参考にしてください。

給与計算をfreee人事労務で回している会社には、最低賃金額の設定変更もあわせて案内しています。手入力で1人ずつ直すより、マスタの設定を直すほうが抜け漏れが少なくて済むんですよね。
大事なのは、ツールを入れることそのものより、10月1日の発効までに賃金表を直しきることです。
まとめ:発効を待たず、9月中に賃金表を洗い直す
- 東京都の最低賃金は2026年10月1日から1,280円(54円増)。2026年9月1日に東京労働局が正式に決定・公示済み。各都道府県が目安どおりに引き上げた場合の全国加重平均(1,176円)を104円上回り、全国最高水準
- 手続きは、答申の要旨の公示→公示日から15日間の異議申出→決定→決定事項の公示、の順で進む(最低賃金法11条)。効力は決定事項の公示(14条1項)の日から起算して30日を経過した日から生じ(14条2項)、今回は9月1日公示・10月1日発効
- 最低賃金の適用は支払日ではなく労働日基準。2026年10月1日以降に働いた分の賃金から1,280円以上が必要
- 東京都にも特定最低賃金は存在するが、地域別最低賃金をすでに下回っているため、対象業種でも地域別1,280円を満たせば実務上は足りる
- よくある失敗は、正社員の時間換算漏れ、「東京は高いから大丈夫」という油断、勤務地の誤判断、給与計算期間が10月1日をまたぐ場合の単価切替え漏れ、除外賃金の合算の5つ
- 判断軸は、対象者の洗い出し・勤務地の確認・除外賃金の確認・適用の基準日・特定最低賃金の対象業種・給与ソフトの設定の6点
- 違反時は最低賃金法4条1項・40条により50万円以下の罰金の対象になり得る
業種・従業員数・今の人事労務の回し方、困りごとを教えてもらえれば、合いそうな進め方を簡単に案内します。無理な営業はしませんので、気軽にどうぞ。LINEで相談するなら手軽にその場でやり取りできますし、LINEを使わない方はお問い合わせフォームからでも構いません。
