複数の都道府県に事業所がある会社、または「共通の切替日」で運用している人事担当へ
本社は千葉、店舗は東京と埼玉にもある。
そんな会社の社長・人事担当に向けて書いています。
今年(令和8年度)の千葉・東京・大阪は、いずれも10月1日発効で決定・公示済みです。ただ、これは今年たまたまそろっただけで、発効日が都道府県ごとに決まる仕組み自体は変わっていません。
去年(令和7年度)は違いました。千葉県は10月3日、大阪府は10月16日と、発効日がずれ込んだ都道府県がかなりありました。今年そろっているからといって、来年以降も同じとは限りません。

結論:発効日は都道府県ごとに違う。自社の展開エリアを1つずつ確認する
先に結論を言います。
最低賃金の発効日は、都道府県ごとに労働局長が個別に決めて公示するものです。全国一斉に切り替わるわけではありません。
令和8年度(2026年度)は、47都道府県すべてで最低賃金が決定し、発効日が出そろいました。千葉・埼玉・東京・神奈川・大阪・愛知は10月1日発効です。
ただ、これは「たまたまそろった」だけで、全国共通のルールになったわけではないんですよね。
2026年度は、発効日が10月1日から12月2日までばらつきました。1つの都道府県だけ確認して「もう終わった」と考えるのは危ういです。
複数県に事業所がある会社は、所在地ごとの改定額と発効日を一覧にしてください。発効日より早く新額以上へ一斉に引き上げることに問題はありません。避けるべきなのは、共通の切替日を設けた結果、一部の事業所で適用が遅れることです。
なぜ発効日は都道府県でバラバラになるのか
地域別最低賃金は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、最低賃金審議会(地方最低賃金審議会)の意見を聴いて決定します(最低賃金法10条)。各県の額を実際に決めているのは、その県の都道府県労働局長です。
その前段として、実務上はまず中央最低賃金審議会が全国の引上げ目安を示し、それを参考に各都道府県の地方最低賃金審議会が独自に調査審議して答申します。この「目安から答申へ」という流れ自体は、法律に条文で書かれた手続きではなく、運用として定着している仕組みなんですよね。
答申を受けた都道府県労働局長は、その要旨を公示し、公示の日から15日以内に労使から異議申出を受け付けます(最低賃金法11条)。
異議がなければ、労働局長が最低賃金を決定し、決定した事項を公示します(最低賃金法14条1項)。
効力は、この公示の日から起算して30日を経過した日から生じます。決定でこれと別の日を定めることもできますが、定められるのは「30日を経過した日より後の日」に限られます。つまり発効を後ろにずらすことはできても、30日より前倒しにはできません(最低賃金法14条2項)。
つまり、公示のタイミングが都道府県ごとにずれれば、発効日もそのままずれます。47都道府県が同時に手続きを終える保証はどこにもありません。
実際、令和7年度(2025年度)の発効日は、10月発効が20都道府県、11月発効が13府県、12月発効が8県、翌年1月発効が4県、翌年3月発効が2県と、かなりばらついていました。
発効時期のばらつきは中央最低賃金審議会でも課題に挙がり、2026年6月23日に対応方針が整理されました。中身はこうです。公示の日から起算して30日を経過した日に発効する「法定発効」が基本。それより後ろにずらす「指定日発効」にするなら、地方最低賃金審議会の公労使委員で十分に議論し、判断理由を公益委員見解などで示す。中央最低賃金審議会は、令和8年度(2026年度)以降の地方の審議をこの考え方で行うよう要望しています。ただし、発効日を全国一律の日付にそろえる制度変更ではありません。自社の事業所がある都道府県ごとに、決定された発効日を1つずつ確認してください。

この場面でよくある失敗
複数の県に事業所がある会社で、起きやすい失敗を挙げます。
- 本社のある県の発効日を、全事業所に当てはめてしまう:京都本社・大阪店舗の会社が、京都の発効日(11月16日)に全社の切り替えをそろえると、10月1日に発効した大阪の店舗では対応が遅れます
- 給与計算期間が発効日をまたぐのに、単価切替えを忘れる:20日締めなど月末以外で締めている会社では、発効日の前後で時給が変わります。期間を分けて計算しないと、新しい額が一部しか反映されません
- 正社員の月給を時間額に直すとき、所定労働時間を間違える:月給を割る時間数に、よそで見た174時間・173.8時間・164時間をそのまま使うのは誤りです。自社の1年間の所定労働時間を合計し、12で割って月平均所定労働時間を出します(1日の所定労働時間が毎日同じなら、年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12)。その時間数で月給を割り、最低賃金と比べます。
どれも「知らなかった」で済む話ではないんですが、多店舗展開の会社ほど見落としやすい部分です。
判断軸:発効日チェック表をどう作るか
「うちも当てはまるかも」と思ったら、次の軸で自社の展開エリアを棚卸ししてみてください。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 事業所の所在県 | 従業員が所属する事業場がある都道府県すべて(派遣労働者は派遣先の事業場) | 本社所在地だけで判断していないか |
| 答申か決定か | 各県の地方最低賃金審議会・労働局の公表状況 | 答申段階の金額を確定額として扱っていないか |
| 発効日 | 各労働局のホームページの公示情報 | 県ごとの発効日を個別に控えているか |
| 給与計算期間との関係 | 自社の締め日 | 発効日が計算期間の途中に来る月はないか |
| 除外賃金・特定最低賃金 | 比較に使う賃金の範囲、対象業種の有無 | 通勤手当等を含めていないか、業種別の上乗せがないか |
この5点を県の数だけ並べて一覧にしておくと、「どの事業所が、いつから、いくらになるか」が一目で分かります。
全国の答申状況や東京・大阪・千葉の詳細は【2026年度】最低賃金はいくら?47都道府県の一覧と発効日、答申前後の準備項目は2026年最低賃金 発効日前後の実務6つ、発効時期統一の議論の背景は最低賃金の目安制度が見直しへでも整理しています。
まとめ:1つの県で確認できたら終わり、ではない
- 地域別最低賃金は都道府県ごとに労働局長が地方最低賃金審議会の意見を聴いて決定し、決定事項を個別に公示するもので、全国一斉ではない(最低賃金法10条・14条1項)
- 効力は決定事項の公示の日から起算して30日を経過した日から生じる。決定で別の日を定める場合も「30日を経過した日より後の日」に限られ、前倒しはできない(最低賃金法14条2項)
- 令和7年度(2025年度)は10月発効が20都道府県、11月発効が13府県、12月発効が8県、翌年1月発効が4県、翌年3月発効が2県とばらついた
- 令和8年度(2026年度)は47都道府県すべてで決定し、発効日は10月1日から12月2日までばらついた。千葉・埼玉・東京・神奈川・大阪・愛知は10月1日発効
- 複数県に事業所がある会社は、本社所在地の発効日を全社に当てはめず、所在地ごとの改定額と発効日を一覧にする。発効日より早く新額以上へ一斉に引き上げることに問題はなく、避けるべきなのは共通の切替日を設けた結果、一部の事業所で適用が遅れること
業種・従業員数・今の人事労務の回し方、困りごとを教えてもらえれば、合いそうな進め方を簡単に案内します。無理な営業はしませんので、気軽にどうぞ。LINEで相談するなら手軽にその場でやり取りできますし、LINEを使わない方はお問い合わせフォームからでも構いません。
あわせて読みたい
