最低賃金の発効日は県ごとに違う|10月給与の落とし穴

仕事術

複数の都道府県に事業所がある会社、または「共通の切替日」で運用している人事担当へ

本社は千葉、店舗は東京と埼玉にもある。

そんな会社の社長・人事担当に向けて書いています。

今年(令和8年度)の千葉・東京・大阪は、いずれも10月1日発効で決定・公示済みです。ただ、これは今年たまたまそろっただけで、発効日が都道府県ごとに決まる仕組み自体は変わっていません。

去年(令和7年度)は違いました。千葉県は10月3日、大阪府は10月16日と、発効日がずれ込んだ都道府県がかなりありました。今年そろっているからといって、来年以降も同じとは限りません。

都道府県ごとに異なる最低賃金の発効日を確認する経営者のイメージ

結論:発効日は都道府県ごとに違う。自社の展開エリアを1つずつ確認する

先に結論を言います。

最低賃金の発効日は、都道府県ごとに労働局長が個別に決めて公示するものです。全国一斉に切り替わるわけではありません。

令和8年度(2026年度)は、千葉・埼玉・東京・神奈川・大阪の5都府県で、10月1日発効の改正が各労働局から公示されました(2026年9月3日時点)。愛知も8月に答申が出て、10月1日発効の見込みです。

ただ、これは「たまたまそろった」だけで、全国共通のルールになったわけではないんですよね。

2026年9月3日時点でも、答申段階にとどまっている県は残っています。1つの都道府県だけ確認して「もう終わった」と考えるのは危ういです。

複数県に事業所がある会社は、所在地ごとの改定額と発効日を一覧にしてください。発効日より早く新額以上へ一斉に引き上げることに問題はありません。避けるべきなのは、共通の切替日を設けた結果、一部の事業所で適用が遅れることです。

なぜ発効日は都道府県でバラバラになるのか

地域別最低賃金は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、最低賃金審議会(地方最低賃金審議会)の意見を聴いて決定します(最低賃金法10条)。各県の額を実際に決めているのは、その県の都道府県労働局長です。

その前段として、実務上はまず中央最低賃金審議会が全国の引上げ目安を示し、それを参考に各都道府県の地方最低賃金審議会が独自に調査審議して答申します。この「目安から答申へ」という流れ自体は、法律に条文で書かれた手続きではなく、運用として定着している仕組みなんですよね。

答申を受けた都道府県労働局長は、その要旨を公示し、公示の日から15日以内に労使から異議申出を受け付けます(最低賃金法11条)。

異議がなければ、労働局長が最低賃金を決定し、決定した事項を公示します(最低賃金法14条1項)。

効力は、この公示の日から起算して30日を経過した日から生じます。決定でこれと別の日を定めることもできますが、定められるのは「30日を経過した日より後の日」に限られます。つまり発効を後ろにずらすことはできても、30日より前倒しにはできません(最低賃金法14条2項)。

つまり、公示のタイミングが都道府県ごとにずれれば、発効日もそのままずれます。47都道府県が同時に手続きを終える保証はどこにもありません。

実際、令和7年度(2025年度)の発効日は、10月発効が20都道府県、11月発効が13府県、12月発効が8県、翌年1月発効が4県、翌年3月発効が2県と、かなりばらついていました。

中央最低賃金審議会でも、この発効時期の分散が課題として取り上げられ、統一に向けた議論が続いています。ただし結論は2027年度中の取りまとめ予定で、令和8年度(2026年度)にはまだ間に合いません。

都道府県ごとにずれる最低賃金の発効日を示すカレンダーのイメージ

この場面でよくある失敗

複数県に事業所がある会社で、実際によく見る失敗を挙げます。

  • 本社のある県の発効日を、全事業所に当てはめてしまう:千葉本社・埼玉店舗の会社が「千葉が10月1日だから埼玉も10月1日」と決め打ちすると、たまたま一致していればよいですが、本来は県ごとに公示のタイミングが別です
  • 「今年はどうせ全部10月1日」と思い込む:主要都府県が前倒しでそろったからといって、答申段階の県まで同じとは限りません。決定・公示前の金額は、あくまで見込みです
  • 給与計算期間が発効日をまたぐのに、単価切替えを忘れる:20日締めなど月末以外で締めている会社では、発効日の前後で時給が変わります。期間を分けて計算しないと、新しい額が一部しか反映されません
  • 月給者の時間換算を後回しにする:時給者の単価だけ直して安心し、月給を所定労働時間で割った時間額の確認が漏れがちです
  • 特定最低賃金の対象業種を見落とす:大阪府など一部の県では、業種別に地域別より高い特定最低賃金が定められています。地域別だけ直して終わりにすると、対象業種では不足したままになることがあります

どれも「知らなかった」で済む話ではないんですが、多店舗展開の会社ほど見落としやすい部分です。

判断軸:発効日チェック表をどう作るか

「うちも当てはまるかも」と思ったら、次の軸で自社の展開エリアを棚卸ししてみてください。

確認ポイント見るもの気づくこと
事業所の所在県従業員が実際に働く都道府県すべて本社所在地だけで判断していないか
答申か決定か各県の地方最低賃金審議会・労働局の公表状況答申段階の金額を確定額として扱っていないか
発効日各労働局のホームページの公示情報県ごとの発効日を個別に控えているか
給与計算期間との関係自社の締め日発効日が計算期間の途中に来る月はないか
除外賃金・特定最低賃金比較に使う賃金の範囲、対象業種の有無通勤手当等を含めていないか、業種別の上乗せがないか

この5点を県の数だけ並べて一覧にしておくと、「どの事業所が、いつから、いくらになるか」が一目で分かります。

オマカセロウムくんとfreee人事労務でできること

複数県に展開している顧問先ほど、発効日の管理は手間がかかります。

オマカセロウムくんでは、顧問先の事業所がある都道府県ごとに発効日と改定額を一覧化し、給与計算に反映すべきタイミングを個別に案内しています。

複数都道府県の最低賃金発効日を整理して案内する労務担当のイメージ

給与計算をfreee人事労務で回している会社には、事業所ごとの最低賃金マスタの設定変更もあわせて確認しています。県ごとに手入力で直すより、事業所単位で設定を分けておくほうが、翌年以降も同じ手間で済むんですよね。

全国の答申状況や東京・大阪・千葉の詳細は2026年の最低賃金はいくら?東京・大阪・千葉の見通しと中小企業の対策、答申前後の準備項目は2026年最低賃金 答申前にやるべき実務6つ、発効時期統一の議論の背景は最低賃金の目安制度が見直しへでも整理しています。

まとめ:1つの県で確認できたら終わり、ではない

  • 地域別最低賃金は都道府県ごとに労働局長が地方最低賃金審議会の意見を聴いて決定し、決定事項を個別に公示するもので、全国一斉ではない(最低賃金法10条・14条1項)
  • 効力は決定事項の公示の日から起算して30日を経過した日から生じる。決定で別の日を定める場合も「30日を経過した日より後の日」に限られ、前倒しはできない(最低賃金法14条2項)
  • 令和7年度(2025年度)は10月発効が20都道府県、11月発効が13府県、12月発効が8県、翌年1月発効が4県、翌年3月発効が2県とばらついた
  • 令和8年度(2026年度)は千葉・埼玉・東京・神奈川・大阪の5都府県で10月1日発効の改正が公示済み、愛知も10月1日発効の見込みだが、他県は答申段階のところも残る(2026年9月3日時点)
  • 複数県に事業所がある会社は、本社所在地の発効日を全社に当てはめず、所在地ごとの改定額と発効日を一覧にする。発効日より早く新額以上へ一斉に引き上げることに問題はなく、避けるべきなのは共通の切替日を設けた結果、一部の事業所で適用が遅れること

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