月曜4時間・水曜7時間のパートが有給を取ったら
月曜は4時間、水曜は7時間。そんなパートさんから「来週の水曜、有給を使いたいです」と言われたら、何時間分を払いますか?
「4時間分でいいよね」「平均5時間ぐらいだから5時間分で」。有給の日の賃金を、こんなふうに決めていないでしょうか。
ただ、有給を取った日の賃金は、労働基準法で払い方が決まっています。感覚で決めていると、「先月と金額が違う」と言われたときに説明がつきません。
パートの有給は揉めやすいテーマです。中小企業の社長や給与計算の担当者が迷いやすい、日によってシフトの時間が違う場合を取り上げます。

結論:払い方は就業規則で1つに決め、その日のシフト時間で払う
有給を取った日の賃金は、次の3つの方式のうち、就業規則などで定めた1つで払います(労働基準法39条9項)。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(以下「通常の賃金」)
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する金額(労使協定が必要)
時給のパートで「通常の賃金」を選んでいるなら、計算は時給×有給を取った日のシフト上の所定労働時間です。月曜なら4時間分、水曜なら7時間分を払います。
どの方式で払うかを、日ごと・人ごとに選び直すことはできません。
この記事で扱わないこと
この記事では、付与日数には触れません。シフト制パートの付与日数については、こちらの記事で書きました。
パートにも有給が付くという基本は、【有給とは?】パート・アルバイトももらえる?をご覧ください。
有給の日の賃金は3つの方式から選ぶ(労基法39条9項)
39条9項は、有給休暇の期間について「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより」、平均賃金か通常の賃金を払うよう定めています。
ただし書きでは、労使協定を結べば、標準報酬月額の30分の1相当額で払う方式も認めています。協定でこの方式を定めたときは「これによらなければならない」とされています。
方式1:平均賃金
原則として、直前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った額です(労基法12条1項)。賃金締切日があれば、直前の締切日から数えます(同条2項)。
時給や日給の人には最低保障があり、賃金総額を実際に働いた日数で割った額の100分の60を下回ってはいけません(同条1項1号)。
出勤日が少ないパートでは、暦日数で割ると額が小さくなるため、最低保障のほうが高くなりやすい傾向があります。
方式2:通常の賃金
労働基準法施行規則25条1項では、給与の形ごとに計算方法を定めています。
| 給与の形 | 有給の日に払う額(規則25条1項) |
|---|---|
| 時給 | 時給×その日の所定労働時間数(1号) |
| 日給 | 日給の額(2号) |
| 月給 | 月給÷その月の所定労働日数(4号) |
厚生労働省のシフト制の留意事項(改正 令和8年6月19日)にも、時給の人は「年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間」を掛けると記されています。
方式3:標準報酬月額の30分の1
健康保険の標準報酬月額を30で割った額です。5円未満は切り捨て、5円以上10円未満は10円に切り上げます(39条9項ただし書き)。
この方式を使うには、過半数労働組合、なければ過半数代表者との書面の協定が必要です。
計算例:月曜4時間・水曜7時間のパートの場合
次の架空の例で、通常の賃金と平均賃金を比べてみます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時給 | 1,200円 |
| シフト | 毎週月曜4時間・水曜7時間 |
| 直前3か月の暦日数 | 92日 |
| 直前3か月に働いた日数・時間 | 26日・143時間 |
| 直前3か月の賃金総額 | 1,200円×143時間=171,600円(手当なし) |
通常の賃金で払う場合
月曜:1,200円×4時間=4,800円
水曜:1,200円×7時間=8,400円
どちらも割り切れるため、端数は出ません。
平均賃金で払う場合
原則:171,600円÷92日=1,865.2…円
最低保障:171,600円÷26日×60/100=3,960円
高いほうの3,960円が平均賃金です。最低保障の計算は割り切れるため、端数処理は要りません。原則の額は比較のための値であり、円未満をどう処理しても結論は変わりません。
| 有給を取った日 | 通常の賃金 | 平均賃金 |
|---|---|---|
| 月曜(4時間) | 4,800円 | 3,960円 |
| 水曜(7時間) | 8,400円 | 3,960円 |
本人にとって、水曜は「働いていれば8,400円もらえた日」です。平均賃金で払うことは法律上認められていても、この差を見ると「有給を取ると損をする」と感じやすいでしょう。

よくある失敗4つ
1. 就業規則に払い方が書かれていない
正社員の規則を流用し、パートが有給を取った日の賃金については記載がないケースです。
常時10人以上の会社には、賃金の計算方法を就業規則に書いて届け出る義務があります(労基法89条2号)。
2. 「平均〇時間分」で一律に払っている
「1日平均5時間だから、有給は一律5時間分」としているケースもあります。
通常の賃金を選んでいるなら、計算に使うのはその日の所定労働時間です(規則25条1項1号)。水曜に有給を取った人へ5時間分を払っても、2時間分が足りません。
3. その日によって有利な方式を使い分ける
月曜は通常の賃金、水曜は平均賃金と、会社の負担が軽いほうをその都度選ぶやり方です。
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」のQ&Aでも、払い方は「その都度労働者ごとに選択できるものではなく」、就業規則等に定めた方法によると説明しています。
4. 有給の申し出があった日だけ、シフトを短くする
「水曜に有給を」と言われてから、その日を4時間に組み替えるケースです。
労基法136条(附則)は、有給を取った人に「賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定めています。組み替えがこれに当たるかは個々の事情によりますが、有給の申し出をきっかけに時間を短くすれば、揉める原因になります。
シフトがまだ決まっていない日の有給はどう扱う?
翌月のシフトを組む前に「15日に有給を」と言われた。その日の所定労働時間は、まだ決まっていません。シフト制で特に迷いやすい場面です。
有給は「働く義務のある日」に使うもの
留意事項には、年休を取った日は「労働者の就労義務が消滅する」とあります。働く義務のある日に、その義務をなくすのが有給です。
先に決めておきたい運用ルール
- 有給の希望は、シフト希望と同じ締切で出してもらう
- 希望の日は、ふだんどおり勤務日として組んでから有給にする
- 時間は、その曜日のふだんの時間で組む
留意事項では、使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められないとも記されています。
会社が有給を別の日にずらせるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます(労基法39条5項)。
自社の払い方を決めるときの判断軸
計算の手間とミスの少なさ
通常の賃金は、時給×その日のシフト時間で計算します。シフトの時間が給与ソフトに入っていれば、そのまま計算できます。
平均賃金では、有給のたびに3か月分を集計し、最低保障との比較も必要です。対象となる人数が多いほど、担当者の負担は重くなります。
本人への説明のしやすさ
通常の賃金なら、「働いていたらもらえた額と同じです」と説明できます。
時間単位の有給との相性
時間単位の有給(労使協定で年5日以内。労基法39条4項)の1時間あたりの額は、選んだ方式の額をその日の所定労働時間数で割って求めます(規則25条2項・3項)。時給の人に通常の賃金で払う場合は、時給と同じ額です。

規則に書いて、全員に同じように使う
どの方式を選ぶ場合も、規則に書き、全員に同じように適用することが前提です。常時10人以上の会社は、変更したら労基署への届出も必要です。手順は就業規則の変更届出とは?で書きました。
まとめ
- 有給の日の賃金は、平均賃金・通常の賃金・標準報酬月額の30分の1(協定が必要)のいずれか(労基法39条9項)
- 使う方式は就業規則などで決め、その都度選び直さない
- 時給の人に通常の賃金で払う場合は、時給×その日のシフト上の所定労働時間で計算する
- 時給の人の平均賃金は、最低保障(働いた日数で割った額の60%)と比べる
- シフトが決まる前の有給の希望は、シフト希望と一緒に受け付け、ふだんの時間で組む
まずは自社の就業規則を開き、パートが有給を取った日の賃金について、どのように定めているか確かめてみてください。
- 労働基準法 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 厚生労働省 シフト制の留意事項 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf
- スタートアップ労働条件 Q&A https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/yukyu/q5.html
