ある日、社員が医師の診断書を持ってきて「しばらく休ませてほしい」と言う。何から手を付ければよいか、迷う方も多いと思います。
- 休職は、法律でどこまで決まっているのか
- 休職中は無給にしているが、社会保険料と住民税はどうなるのか
- いつ、どうやって復職を決めればよいのか
私たちは社会保険労務士法人として、中小企業の給与計算と社会保険の手続きをお受けしています。
この記事では、申し出を受けた日から復職の判断まで、会社がすることを順に並べました。休職に入る前に本人と何を決め、何を書面に残せばよいかを確認できます。
社員から休職したいと言われたら、会社がすることは6つあります。①診断書を受け取る、②就業規則の休職規定を確かめる、③休職を発令して通知書を渡す、という順に進めます。
続いて、④無給の間の社会保険料と住民税の集め方を決め、⑤傷病手当金の申請書の事業主証明を書きます。最後は、⑥復職の診断書を受け取って判断する、という流れです。
なかでも大事なのは④です。無給の間も、社会保険料(本人負担分)と住民税はかかります。休職に入る時点で集め方を決めておけば、後から本人とのやりとりがこじれずに済みます。
この記事で扱うのは、仕事以外の病気やけがで休む休職(私傷病休職)です。仕事や通勤が原因かもしれない場合は、先に労災保険の対象になるかを確かめてください。
業務上のけがや病気で療養のために休業する期間とその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法19条1項)。私傷病休職の満了時の扱いを、そのまま当てはめないでください。
結論:休職に入る前に、6つを書面で決めておく
休職の申し出を受けてからの手順は、次の6つです。
| 順番 | 会社がすること | 決めておくこと・確かめること |
|---|---|---|
| ① | 診断書を受け取る | 休養が必要な期間の見込み |
| ② | 就業規則の休職規定を確かめる | 対象者・休職期間・休職中の給与 |
| ③ | 休職を発令し、通知書を渡す | 開始日・満了日・連絡方法・保険料の集め方・復職の手順 |
| ④ | 社会保険料と住民税の集め方を決める | 請求の時期・振込先・住民税の徴収方法 |
| ⑤ | 傷病手当金の申請書の事業主証明を書く | 休んだ期間と、その期間について受けられる報酬の額と期間 |
| ⑥ | 復職の診断書を受け取り、判断する | 診断書の提出期限・満了で復職できないときの扱い |
①から③は休職に入る前に済ませ、④の内容を③の通知書に書き込みます。⑤は休職中に毎月または数か月ごとに行い、⑥は本人から復職の申し出があったとき、または満了が近づいたときに行います。

休職は法律で決まった制度ではない
休職は、労働基準法などの法律で会社に義務づけられた制度ではありません。会社が制度を設けた場合、その内容は就業規則や労働契約で決まります。
労働基準法施行規則5条1項は、労働契約を結ぶときに明示する労働条件の一つに「休職に関する事項」(11号)を挙げています。ただし同項ただし書では、この事項について使用者が定めをしない場合、明示しなくてよいとされています。
また、常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則を作成して届け出る義務があります(労働基準法89条)。同条10号は、全労働者に適用される定めをする場合、その事項を就業規則に書くよう求めています。休職制度を設けているなら、就業規則への記載が必要です。
休職の対象者・期間・給与の扱い・復職の手順は、会社ごとに違います。手順②では、自社の規定を開いて確かめてください。
手順①:診断書を受け取る
最初に受け取るのは、医師の診断書です。就業規則に診断書の提出を定めているなら、その定めに沿って求めます。
診断書で確かめるのは、次の点です。
- 休養が必要とされている期間の見込み(「1か月の休養を要する」など)
- 診断書の日付
休養の見込み期間は、手順③で休職期間を決めるときや、傷病手当金を申請する際(手順⑤)の目安になります。受け取った診断書は、休職を発令する根拠として保管してください。
保管する際は、閲覧できる担当者を限定し、上司や同僚への共有は業務上必要な範囲にとどめます。
手順②:就業規則の休職規定を確かめる
次に、就業規則の休職規定を開きます。確認するのは次の3点です。
- 対象:誰が休職の対象か(勤続年数の条件、試用期間中の扱い、パートなど雇用形態ごとの扱い)
- 期間:休職できる期間の長さと、勤続年数による違い
- 給与:休職中の給与を払うか、払わないか
あわせて、休職がいつから始まるのかも確かめてください。「欠勤が○日続いたとき」に休職とする規定もあれば、会社が書面で起算日を指定する規定もあります。書面で指定する規定なのに書面を出していないと、いつから休職だったのかがあいまいになります。
規定が古い場合や、そもそも休職の定めが無い場合は、休職規定の見直し|中小企業が押さえるべき5つのポイントもご覧ください。休職期間・復帰の条件・再休職の通算など、見直す際の論点をまとめています。
手順③:休職を発令し、通知書を渡す
就業規則や労働契約に休職の定めがある場合は、その要件と手続に沿って休職を発令し、本人に通知書を渡します。口頭だけで済ませず、書面で伝えることをおすすめします。
休職の定めがない場合は、本人から申し出があったという理由だけで、会社が無給の休職や休職期間満了時の退職を決めることはしません。休む期間・給与・復職の手順を本人と話し合い、合意した内容を書面に残してください。
通知書に書く内容は、次の5つです。
- 休職の開始日
- 休職期間の満了日
- 休職中の連絡方法(誰に、どの手段で、どのくらいの頻度で、近況を伝えるか)
- 社会保険料と住民税の集め方(手順④で決める内容)
- 復職の手順(復職の診断書をいつまでに出すか、会社がどう判断するか)
満了日を書くのは、休職期間がいつ終わるのかを会社と本人で共有するためです。開始日と満了日が書面に無いと、満了が近づいたときに「まだ期間が残っているはず」という食い違いが起きやすくなります。
連絡方法は、本人の負担にならないように決めてください。たとえば「月に1回、人事担当にメールで近況を伝える」と、頻度と相手を具体的にしておきます。そうすれば、会社からの連絡が催促のように受け取られにくくなります。
手順④:無給の間も社会保険料と住民税はかかる
休職中の給与が無給でも、社会保険料と住民税の負担は続きます。

健康保険・厚生年金の保険料
健康保険の被保険者の資格を失うのは、死亡したときや、その事業所に使用されなくなったときなどです(健康保険法36条)。休職中も雇用契約は続いているため、資格もそのまま続きます。
保険料は、被保険者と事業主が半分ずつ負担します。事業主には、本人負担分もあわせて納める義務があります(健康保険法161条1項・2項、厚生年金保険法82条1項・2項)。ただし、健康保険組合では、規約で事業主の負担割合を大きくしている場合があります(健康保険法162条)。
本人から集める額は、加入先の保険料額表などで確かめてください。休職中に給与が出ていなくても、会社は毎月の保険料を納めなければなりません。
本人負担分は、通常、給与から差し引いて集めます。法律が給与から差し引くことを認めているのは、「前月の標準報酬月額に係る保険料」です(健康保険法167条1項、厚生年金保険法84条1項)。
休職に入った月でも、給与の締日・支払日や欠勤の状況によっては、差し引ける給与がなかったり、給与の額が保険料に足りなかったりします。無給の月が続けば、差し引く給与はありません。それでも会社は保険料を納めるため、本人負担分を立て替えることになります。
休職に入る時点で、次のように決めておいてください。
- 会社が毎月、本人負担分の額を本人に知らせる
- 本人は、決めた期日までに会社の口座へ振り込む
- 振込先の口座と、振込手数料をどちらが持つか
育児休業や産前産後休業には、保険料を徴収しない仕組みがあります(健康保険法159条・159条の3)。私傷病による休職は、この仕組みの対象には書かれていません。
立て替えた分を復職後の給与からまとめて差し引こうとすると、別の問題が生じます。健康保険法167条1項・厚生年金保険法84条1項を根拠に、前月より前の分を復職後の給与からまとめて差し引くことはできません。給与から差し引く場合は、労働基準法24条1項ただし書の労使協定に定めがあるかを確かめてください。
毎月振り込んでもらうようにしておけば、この問題は起きません。
住民税(特別徴収)
住民税を給与から差し引いて納める方法が、特別徴収です。毎年6月から翌年5月まで、給与を払う際に毎月徴収し、翌月10日までに市町村に納める仕組みです(地方税法321条の5第1項)。
給与を払わない月は、住民税を差し引く元がありません。そのため、休職中の住民税をどうするかも、休職に入る前に決めておきます。選択肢は2つです。
- 特別徴収を続ける:会社が本人から住民税の月割額を振り込んでもらい、会社から市町村へ納める
- 普通徴収に切り替える:本人が市町村から届く納付書などで、自分で納める
地方税法は、給与の支払を受けないこととなった場合、特別徴収義務者は翌月以降の月割額を徴収・納入する義務を負わないとしています(321条の5第2項)。その際は、市町村長へ届出書を出すよう定めています(同条3項)。特別徴収されなくなった税額は、普通徴収の方法で徴収されます(321条の7第1項)。
休職中も特別徴収を続けられるか、普通徴収に切り替える場合はどの届出書をいつまでに出すかを、特別徴収税額の通知書を出した市区町村に確かめてから決めてください。通知書を出した市区町村は、今の住所地の市区町村とは違うことがあります。
手順⑤:傷病手当金の申請書に事業主証明を書く
休職中で給与が出ないとき、本人の生活を支えるのが健康保険の傷病手当金です。
傷病手当金は、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給されます(健康保険法99条1項)。
1日あたりの額は、支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均して計算します。その平均額の30分の1に相当する額の3分の2が支給されます(同条2項。12か月に満たない場合は別の計算があります)。支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です(同条4項)。
給与の全部または一部を受けられる期間は支給されず、受けられる給与が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法108条1項)。
申請書を保険者に出すのは本人ですが、申請書には事業主の証明書が必要です(健康保険法施行規則84条2項2号)。会社が証明するのは、労務に服することができなかった期間と、その期間に報酬を受けられるときの報酬の額と期間などです(同条1項4号・5号)。
申請書には、労務に服することができなかった期間などについて、医師または歯科医師の意見書も添える必要があります(同条2項1号)。休職のために会社へ提出した診断書とは別に、申請書にある医師の記入欄を医療機関で書いてもらうよう、本人に案内してください。
会社は、出勤簿・賃金台帳・賃金規程をもとに、休んだ日と、その期間について受けられる報酬の額と期間を記入します。有給休暇の賃金や休職中も支払う手当がないかを確かめ、加入先の保険者の記入要領に従ってください。
申請を何か月ごとにまとめるかは、本人と決めておいてください。会社も、証明に必要な作業を予定に入れやすくなります。
支給の条件や額の計算、退職後の扱いなどは、【傷病手当金制度の詳細解説】休職から復職・退職後の対応までで詳しく取り上げています。
手順⑥:復職の診断書を出してもらい、会社が判断する
復職は、本人が「もう大丈夫です」と言った日に決めるものではありません。医師の診断書をもとに、会社が判断します。
ただし、診断書だけで機械的に決めることはしません。本人と面談し、実際の仕事内容や勤務時間などに照らして復職できるかを確かめたうえで判断します。
元の仕事をそのまま行うのが難しくても、それだけで復職できないとは判断しません。雇用契約の内容や社内で配置できる業務をふまえ、担当業務を変えたり負担を軽くしたりすることで復職できないか検討します。
満了日より前に、復職できるかどうかを書いた診断書を出してもらえるよう、提出期限を決めておいてください。たとえば「満了日の1週間前までに提出する」と決めておきます。これにより、会社が診断書を読み、本人と面談し、職場の受け入れを整える時間がとれます。
満了日の前日に診断書が届いても、判断の材料をそろえる時間がありません。提出期限は、手順③の通知書に書いておきます。
ただし、提出期限を過ぎたことだけを理由に、復職できないと決めないでください。
満了日までに復職できないときの扱い(自然退職とするか、解雇とするか、期間を延ばせるか)は、就業規則の定めによります。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、退職に関する事項を就業規則に記載する必要があります(労働基準法89条3号)。自社の規定を確かめ、休職に入る時点で本人に示してください。
満了で退職となる規定なら、休職の初めにそのことを伝えておきます。本人にとっても、見通しを立てるための材料になるためです。満了の直前に初めて知らされても、受け入れるのは難しいと考えます。
満了で退職となる規定があっても、復職できるかを確かめないまま退職扱いにはしないでください。解雇とする場合は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされるため(労働契約法16条)、これに当たらないかを確かめます。
解雇する場合は、原則として30日前に予告する必要があります。予告から解雇までの期間が30日に満たない場合は、不足する日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払います(労働基準法20条1項・2項)。休職通知書に満了日や満了時の扱いを書いただけでは、解雇予告を済ませたことにはなりません。

休職に入る日までのチェックリスト
休職に入る日までに、次の項目を確かめてください。
- 医師の診断書を受け取り、休養の見込み期間を確かめたか
- 就業規則の休職規定(対象・期間・給与の扱い・休職の始まり方)を確かめたか
- 休職の開始日と満了日を決め、書面にしたか
- 休職中の連絡方法(相手・手段・頻度)を決めたか
- 社会保険料の本人負担分を、毎月いくら・いつまでに・どの口座へ振り込んでもらうか決めたか
- 住民税を特別徴収のまま本人から集めるか、普通徴収に切り替えるかを決め、特別徴収税額の通知書を出した市区町村に、特別徴収を続けられるか、どの届出書をいつまでに出すかを確かめたか
- 傷病手当金の申請を何か月ごとにまとめるか、事業主証明を誰が書くかを決めたか
- 復職の診断書の提出期限(たとえば満了日の1週間前)を決めたか
- 満了日までに復職できないときの扱いを、就業規則で確かめて本人に伝えたか
- 上の内容を通知書に書き、本人に渡したか
休職は、本人にとっても会社にとっても先が見えにくい期間です。お金と期限のことを最初に書面で決めておけば、休職中のやりとりは近況の確認と体調の話に絞れます。
