この記事でわかること
- ・中小企業に適した休職期間の目安(3か月~6か月)
- ・復帰判断・診断書提出の具体的な規定例
- ・リハビリ出勤(試し出勤)で押さえるべき賃金・交通費・労災のルール
- ・再休職を繰り返させない「通算規定」の書き方
- ・対象者の範囲と、休職期間満了時の自然退職の規定例

休職の相談、本当に増えてます
最近、顧問先の経営者さんから「社員がメンタル不調で休みたいと言っている。うちの規定で対応できるのか?」という相談をよくいただきます。正直、ここ数年で一番増えた相談なんじゃないかなと思っています。
で、就業規則を見せてもらうと、休職期間が「1年」とか「1年6か月」になっていたりする。これ、おそらく作ったときに大企業のひな形をそのまま持ってきたんですよね。大企業ならまだしも、中小企業で1年間休まれるとマジでキツいですよ。その間の業務は誰がカバーするのか、人を補充するにも「戻ってくるかもしれない」と思うと踏み切れない。
今日は、休職規定を見直すときに「ここだけは押さえてほしい」というポイントをまとめます。
そもそも休職制度は義務なの?
意外と誤解されがちですが、休職制度は法律で義務づけられたものではありません。労働基準法に「休職期間は○か月にしなさい」という規定はなく、あくまで会社が任意に設ける制度です。
ただし、制度を設ける場合は就業規則への記載が必要になります(労働基準法第89条第10号)。逆にいえば、期間も条件も会社が自由に設計できるということです。だからこそ「なんとなく」で決めてしまうと、後で困るわけです。
【ポイント①】休職期間、3か月~6か月が今の相場
中小企業であれば、3か月~6か月くらいが現実的なラインです。傷病手当金の受給期間(健康保険法第99条、最長1年6か月)とは別の話なので、会社の体力に合った期間を設定すれば大丈夫です。
勤続年数に応じて段階的に設定するのもひとつの手です。
【規定例:休職期間】
- 勤続1年未満:3か月
- 勤続1年以上3年未満:6か月
- 勤続3年以上:1年
ポイントは「自社の体力に合っているか」です。社員30人の会社で1年間の休職を認めるのと、300人の会社で1年間認めるのでは、影響がまるで違います。
【ポイント②】復帰の判断基準を明確に
「治ったら戻ってきていいよ」だけでは曖昧すぎます。復帰の条件として、主治医の診断書の提出は必須です。さらに、会社が指定する医師(産業医等)の診断を受けさせることができる旨も入れておきましょう。
この「会社指定医の受診命令」は、電電公社帯広局事件(最高裁 昭和61年3月13日)で適法と認められています。就業規則に根拠規定があり、内容に合理性があれば、社員は受診に応じる義務があるとされました。
主治医は患者の味方なので、どうしても「復帰可能」と書きがちです。会社として客観的に判断できる仕組みを持っておくことが大事です。
ただし、注意点がひとつ。片山組事件(最高裁 平成10年4月9日)という重要な判例があり、「元の仕事に100%復帰できなくても、他に配置可能な業務があるなら復職を認めるべき」とされています。「元の仕事が完璧にできないから戻さない」はNGですので、軽減業務や配置転換の可能性も含めて検討してください。
【規定例:復帰の判断】
- ・復職を希望する者は、会社所定の様式により、主治医の診断書を添えて復職を申し出なければならない
- ・会社は、復職の可否を判断するにあたり、会社が指定する医師の診断を受けることを命じることがある。この場合、従業員は正当な理由なくこれを拒否してはならない
- ・復職の可否は、主治医及び会社指定医の診断結果、本人の業務遂行能力の回復状況等を総合的に勘案し、会社が判断する

【ポイント③】診断書の提出ルール
休職に入るとき、休職中の経過報告、復帰するとき。この3つのタイミングで状況を把握できる規定にしておくのがベストです。
ただし、休職中の経過報告を「毎月診断書を出せ」にするのはやりすぎです。診断書は1通3,000~5,000円かかるので、無給や傷病手当金だけで暮らしている本人にとってはかなりの負担。メンタル不調の場合、「毎月出せ」というプレッシャー自体が回復を妨げることもあります。
休職中は「毎月1回、電話やメール等で経過報告」くらいにしておいて、必要なときだけ診断書を求める形がバランスが良いです。
【規定例:診断書の提出】
- ・休職を開始する際は、主治医の診断書を会社に提出しなければならない
- ・休職期間中は、毎月1回、病状の経過を書面、電話又はメール等により会社に報告しなければならない
- ・会社は、必要に応じて休職期間中の従業員に対し、主治医の診断書の提出を求めることがある。この場合、従業員は速やかにこれに応じなければならない
- ・復職を希望する際は、就業が可能である旨の主治医の診断書を会社に提出しなければならない
【ポイント④】リハビリ出勤(試し出勤)の設計
いきなりフルタイム復帰は、本人にとってもハードルが高い。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成24年改訂)でも、正式な復職決定の前に行う「試し出勤制度等」が推奨されています。
手引きでは3つの段階が示されています。
- 模擬出勤:通常の勤務時間帯に、図書館やデイケア施設で過ごす(職場には行かない)
- 通勤訓練:自宅から職場付近まで通勤経路で移動し、そのまま帰宅する
- 試し出勤:実際に職場に出勤する(ただし業務には従事しない)
共通しているのは、いずれも「仕事はさせない」ということ。あくまで休職中の位置づけで、復帰できるかどうかを見極めるための制度です。手引きでも「事業場の都合ではなく、労働者の職場復帰をスムーズに行うことを目的として運用されるよう留意すべき」とされています。
ここがトラブルになりやすいので、以下の点は必ず規定に書いてください。
賃金:業務に従事させない以上、賃金の支払義務は発生しません。ただし、もし上司が作業の指示を出したり、内容が業務に該当する場合は労働基準法が適用され、賃金の支払義務が生じます(手引きにも明記)。「仕事はさせない」を徹底することが重要です。
交通費:賃金は発生しませんが、交通費は支給した方がいいです。通勤訓練や試し出勤は本人に出社してもらう制度なので、その費用を本人に負担させるのは酷ですよね。手引きでも「合理的な処遇を行うべき」とされており、交通費の実費支給は合理的な対応といえます。
労災:復職前の試し出勤は原則として労災保険の対象外です。「就業のための通勤」ではないため、通勤途上の事故も通勤災害として認定されない可能性が高い。民間の傷害保険等でカバーすることも検討しましょう。
傷病手当金:業務をさせず賃金が発生しなければ、傷病手当金(健康保険法第99条)の支給要件には基本的に影響しません。逆に、業務をさせて賃金が発生すると「労務に服することができない」の要件を満たさなくなり、手当金が止まるリスクがあります。これも「仕事はさせない」を守る理由のひとつです。
なお、手引きでは試し出勤の実施にあたり、主治医から「療養の支障にならない」との意見を得ることが必要とされています。期間もいたずらに長期化させず、必要な範囲にとどめましょう。
【規定例:リハビリ出勤(試し出勤)】
- 会社は、復職の可否を判断するため、休職中の従業員に対し試し出勤を命じることがある。試し出勤の実施にあたっては、主治医から療養の支障にならない旨の意見を得るものとする
- 試し出勤は、以下のいずれかの方法により行う
- 模擬出勤:通常の勤務時間帯に、会社が指定する場所(図書館等)で一定時間を過ごす
- 通勤訓練:自宅から職場付近まで通勤経路で移動し、帰宅する
- 試し出勤:職場に出勤し、職場環境に慣れることを目的として一定時間を過ごす
- ・試し出勤の期間は原則として2週間~1か月とし、会社が個別に定める
- ・試し出勤期間中は業務に従事させない。休職期間に含めるものとし、賃金は支給しない
- ・試し出勤期間中の交通費は、実費を支給する
- ・試し出勤期間中は労災保険の適用対象外となる。会社は別途傷害保険等による対応を検討する
- ・会社は、試し出勤の状況を踏まえ、復職の可否、復職後の勤務条件等を決定する
【ポイント⑤】再休職の通算規定
メンタル不調は再発しやすい。復帰して1か月でまた休職、というケースは珍しくありません。ここで問題になるのが「休職期間のリセット」です。復帰するたびに休職期間がゼロからカウントされると、永遠に休職と復帰を繰り返すことになりかねません。
この通算規定の有効性は、野村総合研究所事件(東京地裁 平成20年12月19日)で認められています。裁判所は「メンタル不調で休職・復職を繰り返す社員への対応として、通算規定を設ける必要性は否定できない」と判示しました。
【規定例:再休職の通算】
- ・復職後6か月以内に、同一又は類似の事由により欠勤し、その欠勤が連続5日に達したときは、復職を取り消し、直ちに休職を命じる
- ・前項の場合、前後の休職期間は通算する
- ・「類似の事由」とは、精神疾患にあっては病名の異同を問わず、精神の不調に起因する欠勤をいう
「○か月」は6か月に設定している会社が多いですが、自社の実情に合わせて3か月や1年に調整しても問題ありません。大事なのは「類似の事由」の範囲を明確にしておくこと。精神疾患は診断名が変わることもあるので、「病名の異同を問わず」と書いておくのが実務上のポイントです。
適用除外と期間満了時の退職
休職制度の対象者を限定するかどうかも大事なポイントです。試用期間中の社員や、入社1年未満の社員を除外するケースがあります。パートタイマーについては、有期雇用契約であれば契約期間満了で対応可能なため、除外に一定の合理性があります。
ただ、私の経験上、正社員は全員を対象にして、期間を短め(3か月程度)に設定する方がうまくいきます。
理由はシンプルです。休職規定がない(または対象外)だと、本人が自発的に辞めてくれない場合は「解雇」するしかなくなる。解雇は労働契約法第16条の解雇権濫用法理により無効とされるリスクが高い。休職期間満了による自然退職のほうが、会社にとっても本人にとっても穏やかな着地になります。
【規定例:適用除外と期間満了退職】
- ・休職制度は、試用期間中の者及びパートタイマーには適用しない
- ・休職期間が満了してもなお復職できない場合は、休職期間の満了をもって退職とする
- ・前項の場合、会社は休職期間満了日の30日前までに、本人に対し書面により通知する

まとめ:自社の休職規定、いつ作ったか覚えてますか?
休職規定は「あればいい」ではなく「どう設計するか」が大事です。もう一度、今日のポイントを整理しておきます。
- 休職期間:中小企業なら3か月~6か月が相場。自社の体力に合わせる
- 復帰判断:主治医の診断書+会社指定医の受診。ただし「元の仕事100%」を求めすぎない
- 診断書の提出:休職中は毎月の経過報告(電話・メール可)で十分。診断書は必要なときだけ
- リハビリ出勤:仕事はさせない・賃金は出さない・交通費は出す。厚労省の手引きに沿う
- 再休職の通算:復帰後6か月以内の再休職は前後通算。「類似の事由」の範囲を明確に
- 適用除外:正社員は全員対象+期間短めがおすすめ。期間満了退職の規定を忘れずに
もし1年以上の休職期間が設定されていたり、復帰条件や再休職の扱いが書かれていなかったりしたら、それは見直しのタイミングです。
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