2026年10月1日施行の施行規則の改正で、パートタイム・有期雇用労働法6条1項に基づいて明示する事項は、4つから5つに増えました。加わったのは、「正社員との待遇の違い(内容・理由)などについて、会社に説明を求めることができる」ことです。これらは、労働基準法に基づく労働条件の明示に加えて必要なものです。この旨と併せて、申出先の部署名や連絡先なども示すことが望ましいとされています。
採用や契約更新の書類を扱う際は、次の点を確認しておきましょう。
- 10月以降に採用したパートの通知書に、以前のひな形を使っていないか
- 契約を更新した有期社員の書面にも、同じ1行を加えているか
- 「なぜ正社員と手当が違うのか」と聞かれたとき、何を見せて、どう答えるか
私たちは社会保険労務士法人として、中小企業の給与計算や社会保険の手続きをお受けしています。この記事では、改正された省令・指針と厚生労働省の資料をもとに、通知書の直し方から、説明に使う資料の内容まで解説します。まずは以下の記載例と、採用・更新に使っている書類を見比べてください。
通知書の記載例と、明示する5項目
今回の変更の根拠は、パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条1項です。令和8年厚生労働省令第87号(2026年4月28日公布、2026年10月1日施行)により、次の4号が加わりました。
| 号 | 雇い入れ時に明示する事項 | 改正 |
|---|---|---|
| 1号 | 昇給の有無 | 従来から |
| 2号 | 退職手当の有無 | 従来から |
| 3号 | 賞与の有無 | 従来から |
| 4号 | 法第十四条第二項の規定による説明を求めることができる旨 | 2026年10月1日から追加 |
| 5号 | 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口 | 従来から(旧4号) |
厚生労働省のリーフレットでは、労働条件通知書への記載例として、次の文を紹介しています。
> 次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
この文の下に、部署名・担当者職氏名・連絡先を書きます。「通常の労働者」は、「正社員」など自社で使っている呼び方に置き換えてもよいとされています。
改正後のモデル労働条件通知書では、「その他」の欄にこの1行が入り、その下に従来の相談窓口の欄が続きます。説明の申出先と相談窓口が同じ場合は、相談窓口の欄を「同上」として構いません。モデル通知書の記載要領でも、この書き方を認めています。
施行通達(令和8年6月29日付け基発0629第2号ほかによる一部改正)によれば、今回追加された事項は、説明を求めることができる旨を表示すれば、明示の義務を果たせます。申出先の明示は、本人が申し出やすくするために望ましい対応です。昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口についても、引き続き明示しなければなりません。
明示しなかった場合は、10万円以下の過料の対象です(パートタイム・有期雇用労働法31条)。

対象になる人と、明示のタイミング
対象は、同じ会社の正社員より1週間の所定労働時間が短い「短時間労働者」と、期間の定めのある労働契約で働く「有期雇用労働者」です。無期契約のパートも、フルタイムの有期社員も含まれます。「パート」「アルバイト」「契約社員」といった呼び方だけで判断せず、契約期間と週の所定労働時間を確かめてください。
パートタイム・有期雇用労働法6条1項は、明示の時期と方法について、次のように定めています。
> 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、(中略)文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
文書を渡すほか、本人が希望すれば、ファクシミリや電子メールなどでも明示できます(施行規則2条3項)。ただし、メールなどを使う場合は、本人が記録を出力して書面にできるものに限られます。
この明示は、労働基準法15条で定められた事項(契約期間・賃金・労働時間など)の明示とは別の義務です。両方を1枚の労働条件通知書にまとめている場合は、その通知書に「説明を求めることができる」という内容を追記すれば、今回の追加事項に対応できます。
10月より前に雇った人はどうなるか
改正省令の附則にあるのは、「令和八年十月一日から施行する」という定めだけです。厚生労働省のQ&A(改正省令及び告示の周知に係るQ&A 問3)では、施行日以降に新たにパート・有期社員を雇い入れたときに、説明を求めることができる旨の明示が必要だと説明しています。
ただし、有期社員は、採用した日だけでは判断できません。契約更新の扱いについて、施行通達(平成31年1月30日付け基発0130第1号ほか)に次の定めがあります。
> 有期雇用労働者であって、その更新をするときについては、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度法第6条の明示が必要となるものであること。
そのため、10月より前に雇った有期社員でも、10月1日以降に契約を更新する際は、説明を求めることができる旨を明示しなければなりません。更新時の労働条件通知書に追記しておけば、明示漏れを防ぎやすくなります。別紙で伝えることもでき、本人が希望すれば、前述の要件を満たす電子メールなども使えます。更新の書類に、以前のひな形をそのまま使っていないか確認してください。
一方、期間の定めのないパートについて、雇い入れ後に改めて明示し直すよう求める定めは、改正省令の附則とQ&Aにはありません。
ただし、説明を求められたときに説明する義務(14条2項)は、雇い入れの時期にかかわらず、雇っているパート・有期社員全員に関係します。
改正後の雇用管理指針(令和8年厚生労働省告示第202号、2026年10月1日適用)では、本人から求めがない場合にも、契約更新などの機会に待遇差の資料を渡したり、説明を求められることを周知したりする対応を、望ましいものとして挙げています。10月より前から働いている人にも、次の更新や面談の機会に申出先を伝えておきましょう。
説明を求められたら、何をどう答えるか
説明義務には、雇い入れ時に行うものと、本人の求めに応じて行うものがあります。雇い入れ時は、本人から求めがなくても説明が必要です。賃金の決定・教育訓練・福利厚生施設の利用・正社員への転換など、法8条から13条までに基づいて講じる措置の内容を説明します(14条1項)。通知書に今回の1行を加えただけでは、この説明を済ませたことにはなりません。
本人から説明を求められた場合に伝える内容は、14条2項に定められています。
> 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
通常の労働者との待遇差について説明を求められた場合は、施行通達に沿って次の順番で整理できます。
【比べる相手を決める】職務の内容や、職務の内容と配置の変更の範囲などが最も近い正社員を比較対象にします。個人を選ぶほか、「同じ業務を担当する正社員の職群」といった区分を対象にすることもできます。誰を比較対象にしたのか、なぜその対象を選んだのかを説明し、個人が特定されないよう配慮してください。
【違いの中身を示す】待遇の基準が同じか違うかを伝え、金額などの具体的な内容か、賃金規程・等級表などの基準を示します。「賃金は、各人の能力、経験等を考慮して総合的に決定する」という説明だけでは不十分です。
【違いの理由を示す】職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切なものを取り上げ、違いの理由を説明します。理由が複数あれば、それぞれについて説明が必要です。
説明の対象は、待遇差だけではありません。法6条から13条までの措置について、決定に当たって考慮した事項の説明を求められた場合も、回答が必要です。例えば、教育訓練の対象者をどう決めたかという質問には、対象者を選ぶ基準と、本人への適用に当たって考慮した事情を説明します。
説明の方法については、改正後の雇用管理指針に次のように示されています。
- 資料を使って口頭で説明するか、説明すべき事項をすべて記載した、分かりやすい資料を渡す
- 口頭で説明した場合は、使った資料も渡すことが望ましい
- 個人情報の保護などのために資料を渡しにくい場合も、後から求められたら閲覧できるようにするなど、工夫に努める
令和8年6月の改正後の施行通達によれば、この説明義務は、相手が納得することまで求めるものではありません。ただし、待遇への納得性を高めるという趣旨から、誠実な対応が必要です。求められた範囲について、資料を示しながら筋道立てて伝えてください。
手当ごとの答え方:ガイドラインに加わった項目
同一労働同一賃金ガイドライン(平成30年厚生労働省告示第430号)も、令和8年厚生労働省告示第203号で改正されました。2026年10月1日から適用され、パート・有期社員の賞与や手当について、次の考え方が加わっています。
| 待遇 | ガイドラインの考え方 | 説明を求められたときに用意しておくもの |
|---|---|---|
| 賞与 | 労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働意欲の向上など、さまざまな目的が含まれうる。その目的がパート・有期社員にも当てはまるのに、職務の内容などの違いに応じた均衡のとれた賞与を払わず、その見合いとして労使交渉を経て基本給を高くしているなどの事情もなければ、不合理と認められるものに当たりうる | 自社の賞与の目的、支給基準、パート・有期社員への支給の有無とその理由 |
| 退職手当 | 労務の対価の後払い、功労報償などの目的が含まれうる。その目的がパート・有期社員にも当てはまるのに、職務の内容などの違いに応じた均衡のとれた退職手当を払わず、その見合いとして労使交渉を経て基本給を高くしているなどの事情もなければ、不合理と認められるものに当たりうる | 退職金規程の目的と支給対象、対象外とする理由 |
| 無事故手当 | 正社員と業務の内容が同一のパート・有期社員には、同一の無事故手当を支給しなければならない | 手当の支給要件と、比べる正社員との業務の内容の違い |
| 家族手当 | 労働契約の更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期社員には、同一の家族手当を支給しなければならない | 契約期間と更新の回数、手当の支給要件 |
| 住宅手当(転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給するもの) | 正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパート・有期社員には、同一の住宅手当を支給しなければならない | 転居を伴う異動の規程、過去の実績、今後の異動の可能性を裏付ける配置方針など |
住宅手当には、「問題となる例」も載っています。転居を伴う異動があることを理由に正社員だけに住宅手当を支給している場合は、規程の記載だけでなく、実際の運用を確認してください。過去に異動を命じた実績がないという一点だけで判断せず、今後命じる具体的な可能性も含めて、パート・有期社員との違いがあるかを確かめ、その違いを支給理由として説明できるようにしましょう。
家族手当の「相応に継続的な勤務」がどの程度の期間を指すかについては、厚生労働省のQ&A(同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針に関するQ&A 問1-10)に説明があります。具体的な勤続期間を示すことは困難であり、契約期間や更新回数などの事情を踏まえて判断するという内容です。
短時間労働者にも正社員と全く同じ額を払う必要があるかは、同じQ&Aの問1-8で取り上げられています。検討の観点は、その待遇の性質・目的が、所定労働時間の長短にかかわらず当てはまるかどうかです。Q&Aでは、この観点から検討し、労使で議論していくことが望まれるとしています。
このほか、病気休職・夏季冬季休暇・一定期間勤続した人への褒賞についても、記載が加わりました。
待遇差を解消するときの対応については、厚生労働省のリーフレットに記載があります。正社員の労働条件を引き下げて差をなくすのではなく、パート・有期社員の労働条件を改善することが求められる、という趣旨です。
待遇差全体の考え方や、均衡待遇・均等待遇の判断軸は、正社員とパートの待遇差、どこまで許される?同一労働同一賃金の実務で詳しく取り上げています。

説明を求めた人を不利益に扱ってはいけない
パートタイム・有期雇用労働法14条3項は、次のように定めています。
> 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
施行通達が「不利益な取扱い」の例として挙げているのは、解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、労働契約の更新拒否などです。
説明を求めた直後に契約更新を見送ると、別の理由があったとしても、本人には「説明を求めたからではないか」と受け止められやすいと考えます。有期労働契約では、更新の有無を明示し、更新する場合がある契約では、その判断基準も明示する必要があります。更新しないと判断するときは、明示した契約内容や更新基準に照らして、根拠となる事実と判断に至った経緯を記録しておきましょう。
通達には、求められた範囲の説明をした後も繰り返し説明を求め、職務に戻るよう命じても従わない場合についての記載もあります。その際、働かなかった部分の賃金を就業規則に従ってカットすることまで禁止する趣旨ではありません。
また、14条2項に基づく求めに当たらない場合でも、待遇の説明を求めたことを理由に不利益に扱ってはならないのは当然だと、通達は述べています。
書面を直す順番
まず通知書のひな形を直し、その後で10月以降の採用時・更新時に使った書面を確認します。この順番で進めると、確認漏れを防ぎやすくなります。
- パート・有期社員用の労働条件通知書のひな形に、説明を求めることができる旨を加える
- 説明の申出先を決め、部署名や連絡先など、申し出に必要な情報を書く。モデル通知書を使う場合、申出先と相談窓口が同じなら、相談窓口欄は「同上」とする
- 10月1日以降に採用した人と、同日以降に契約を更新した有期社員について、説明を求めることができる旨を明示したか確認する。通知書に記載がなくても、別紙などで明示していれば、その内容を確かめる
- 明示が漏れていた人には、速やかにこの旨を記載した書面を渡すなどして補い、渡した日と方法を記録する。ただし、後から補っても、当初の明示が遅れた事実は消えない
- 基本給・賞与・各種手当・休暇などについて、通常の労働者との違いとその理由を整理する。教育訓練や正社員転換措置などについても、対象者や実施方法を決める際に考慮した事項を整理し、求められた内容に応じて説明できる資料を用意する
労働条件通知書そのものの渡し方や、渡し忘れたときの対応は、入社時に渡し忘れがちな書類|労働条件通知書の落とし穴にまとめています。
出典:
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」6条・14条・31条(https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000076)
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」2条、附則(令和8年4月28日厚生労働省令第87号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/405M50002000034)
- 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html):リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」、モデル労働条件通知書、令和8年厚生労働省告示第202号・第203号、改正省令及び告示の周知に係るQ&A、同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針に関するQ&A(令和8年改正)、令和8年6月29日付け基発0629第2号ほか
- 厚生労働省 法令等データベース「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(平成31年1月30日付け基発0130第1号ほか)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4731&dataType=1&pageNo=1)
