正社員とパートの待遇差、どこまで許される?同一労働同一賃金の実務

仕事術

正社員とパートで、仕事の中身がほとんど同じ会社へ

現場では正社員もパートも同じ作業をしていて、任されている責任もそう変わらない。

それなのに、賞与や家族手当、退職金は正社員だけに出している。時給と月給という支給形態の違いはあっても、「何を根拠に差をつけていますか」と聞かれたら、正直あいまいなまま。

そんな会社に向けて、この記事を書いています。

正社員とパートの待遇差に悩む中小企業の管理者のイメージ

結論:差をつけてよいのは「違いに応じた分だけ」

先に結論を言います。正社員とパートの待遇差そのものが違法なのではありません。

パートタイム・有期雇用労働法は、待遇差を「一切禁止」しているわけではなく、職務内容や責任、配置転換の範囲といった違いに見合わない差、つまり不合理な差を禁止しています(均衡待遇)。

ただし、ここには大事な例外があります。職務内容も、配置転換など人材活用の範囲も正社員と同じで、「通常の労働者と同視すべき」といえるパート・有期雇用労働者については、待遇差が不合理かどうかを問うまでもなく、パートや有期であることを理由に差をつけること自体が禁止されています(均等待遇)。この場合は「違いに応じた分だけ」という発想が使えず、そもそも雇用形態を理由にした差別的な取扱いをしてはいけません。

なので最初にやるべきは、賞与を削ることでも、逆に手当を横並びにすることでもなく、「何が違うから、何の待遇に差があるのか」を一つずつ言葉にすることなんですよね。

説明できない差は、そのまま放置するほどリスクになります。

待遇差の説明で、実際によく起きる失敗

顧問先を見ていて、よく出会う失敗を挙げます。

  • 「昔からこうだから」で止まっている:賞与や家族手当を正社員だけに出す理由が、慣習以上のものになっていない
  • 職務内容の違いを言葉にしていない:正社員とパートで実際にどう仕事の範囲が違うのか、書類上どこにも書かれていない
  • 転勤・異動の有無を待遇差の根拠にしているのに、運用がそれを裏づけていない:制度上は転勤ありのはずの正社員に、実際の異動がほとんど伴っていない。配置転換の範囲は制度の中身と実際の運用を総合して判断されるため、「制度上はある」というだけでは説明材料として弱くなる
  • 手当だけ個別に見て、賞与や退職金を見落とす:通勤手当や皆勤手当は揃えたが、賞与・退職金・住宅手当までは手を付けていない
  • 説明を求められたときの準備がない:パートから待遇差の理由を聞かれても、その場でうまく答えられる担当者がいない

こうした失敗の多くは、正社員とパートの役割分担を「なんとなく」で運用してきたことから生まれています。

「有給とは?」パート・アルバイトももらえる?でも書きましたが、パートの労働条件は「正社員と同じ」でも「別枠」でもなく、実態に合わせて個別に整理する必要があります。

待遇差が「合理的」かどうかの判断軸

待遇差を整理するときは、次の3つの軸で見ていくと分かりやすいです。

判断軸見るポイント気づくこと
職務内容業務の内容と、それに伴う責任の重さ同じ作業でも、責任の範囲まで同じか
人材活用の仕組み転勤・配置転換・昇進の有無と範囲制度と実態が一致しているか
その他の事情労使交渉の経緯、成果や能力、勤続年数説明材料として使えるものは何か

賞与や退職金は、労働の対価の後払い・功労報酬・生活費の補助など、支給の目的自体が複数あるとされています。だからこそ、「賞与だから正社員だけ」ではなく、その賞与を何のために払っているかまで踏み込んで説明できるかが分かれ目になります。

雇用契約とは何なのかでも触れた通り、そもそも雇用契約書に職務内容や異動の範囲がきちんと書かれていないと、待遇差が合理的だと説明・立証することが難しくなります。実際の判断では就業規則や辞令の運用、日々の働き方の実態も材料になりますが、契約書に明記があるほど説明の土台は固くなります。

2026年10月、「説明を求められる旨」の明示が新たに義務化される

ここは法改正の話なので、少し丁寧に説明します。

パートタイム・有期雇用労働法は、不合理な待遇差の禁止(第8条・均衡待遇)と、通常の労働者と同視すべき場合の差別的取扱いの禁止(第9条・均等待遇)を定めています。あわせて、事業主には雇入れ時に「雇用管理の改善等に関する措置の内容」を説明する義務(第14条第1項)と、パート・有期雇用労働者から求めがあった場合の待遇差の説明義務(第14条第2項)が課されています。

2026年10月1日の改正で増えるのは、まず明示すべき労働条件の項目です。根拠になるのはパートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正で(あわせて厚生労働省の指針も改正されます)、「正社員との待遇差について説明を求めることができる旨」を、文書の交付等の方法で明示することが新たに義務づけられます。これは第6条に基づく労働条件の明示事項に、一項目が追加されるという整理です。明示を怠ると10万円以下の過料の対象になり得るとされています(労働条件の明示義務は同法第6条、明示すべき事項は同法施行規則、違反時の過料は第31条)。

ここで注意したいのは、この明示義務が雇入れ時だけの話ではない点です。第6条は短時間・有期雇用労働者を雇い入れるたびに明示を求めるもので、有期契約を更新するときも、新たに労働契約を結び直すことになります。つまり契約更新の場面でも、「説明を求めることができる旨」を含む明示事項を、文書の交付等で示す必要があります。更新時は指針上の望ましい対応にとどまる、という整理は誤りで、更新時も雇入れ時と同じ法定の明示対象だと理解しておいてください。

待遇差そのものの説明義務を定めた第14条は、条文自体が改正されるわけではありません。ただし2026年10月からは、待遇差を説明するときの方法について、雇用管理指針に新しい定めが加わります。資料を活用しながら口頭で説明する方法を基本としつつ、説明すべき事項をすべて盛り込んだ、労働者が容易に理解できる内容の資料を交付するといったやり方が示される見込みです。条文は変わらなくても、求められる説明の仕方はより具体的になります。「口頭でその場をしのぐ」では足りず、資料を用意して筋道立てて説明できる状態にしておく必要がある、と捉えてください。

賞与・退職手当・家族手当・住宅手当といった項目についても、支給目的に応じた均衡が取れているかを、より具体的に説明できる状態にしておくことが求められる見通しです。「そのうち対応すればいい」ではなく、10月までに一度、社内の待遇差を棚卸ししておくタイミングだと考えてください。

待遇差の説明資料を整理する人事担当者のイメージ

オマカセロウムくんなら、待遇差の棚卸しから一緒に整理できる

私たちの「オマカセロウムくん」では、正社員とパート・契約社員の待遇を項目ごとに洗い出し、どこに差があって、その差を何で説明できるかを一緒に整理しています。

賞与・手当・退職金といった項目を一つずつ表にして、職務内容や異動の範囲との対応関係を可視化するところから始めるケースが多いです。説明できない差が見つかったときに、それをどう埋めるか、あるいはどう説明を補強するかまで含めて相談に乗っています。

給与計算そのものにfreee人事労務のようなクラウドサービスを使っている会社であれば、雇用形態ごとの支給項目を整理しやすいぶん、この棚卸し作業もスムーズに進みます。

丸ごと制度を作り直すというより、まず「今どうなっているか」を一緒に確認するところから始める。そのくらいの温度で構いません。

まとめ:待遇差は「なくす」でなく「説明できる」状態に

  • 正社員とパートの待遇差そのものが即違法なのではなく、職務内容や人材活用の違いに見合わない不合理な差が問題になる(均衡待遇・第8条)。ただし職務内容も変更範囲も正社員と同じで「同視すべき」といえるパート・有期雇用労働者には、パートや有期であることを理由とする差別的取扱いそのものが禁止される(均等待遇・第9条)
  • よくある失敗は、慣習だけで差をつけている、職務内容の違いを言葉にしていない、転勤ありという制度が実際の異動運用で裏づけられていない、手当だけ見て賞与・退職金を見落とす、説明の準備がないこと
  • 判断軸は、職務内容・人材活用の仕組み・その他の事情の3つ
  • パートタイム・有期雇用労働法は不合理な待遇差を禁止(第8条)し、同視すべき場合の差別的取扱いを禁止(第9条)。雇入れ時の雇用管理の改善等に関する措置の内容の説明義務と、求めがあった場合の待遇差の説明義務(第14条第1項・第2項)がある。2026年10月1日の改正では、施行規則の改正により「説明を求めることができる旨」が第6条の明示事項に加わる(違反時の過料は第31条)。この明示は雇入れ時だけでなく、有期契約の更新時にも法定の義務としてかかる。第14条の条文自体は改正されないが、待遇差を説明する方法として、資料を用いた口頭説明や、必要事項を網羅した分かりやすい資料の交付等が雇用管理指針に新たに加わる
  • 10月の改正を待つのではなく、今のうちに待遇差の棚卸しをしておくのが安全

正社員とパートの待遇差、説明できる状態になっているか。一度、賞与や手当の一覧を並べて見直してみてもらえたらと思います。

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