大阪府内で従業員を雇っている、10〜50人規模の会社の社長・人事担当者へ
大阪府内に店舗や工場、事業所があって、従業員が10〜50人くらい。
パートさん・アルバイトさんも何人か雇っていて、人事担当は社長ひとり、または総務との兼任。
そんな会社に向けて、この記事を書いています。
2026年8月5日、大阪地方最低賃金審議会の専門部会が「1,231円」への引き上げを決議し、これを踏まえて8月7日に審議会から大阪労働局長へ答申文が手交されました。現行の1,177円から54円増、率にして4.59%の上昇です。6年連続の引き上げで、上げ幅としては過去2番目の大きさです。
「うちのパートさんの時給、いま何円だっけ」と一瞬考えた方は、最後まで読んでいただきたいです。

結論:9月中に賃金表を洗い直し、10月の給与に間に合わせる
先に結論を言います。
大阪府の最低賃金は、2026年10月に1,231円へ引き上げられる見通しです。
ただし、これはまだ「審議会の答申」の段階なんですよね。正式な決定と発効日は、大阪労働局長による決定・公示を待つ必要があります(最低賃金法10条・14条)。
それでも、対応を10月まで先送りするのは危ういと思っています。
1,231円という金額は、ここからほぼ動かないと考えて差し支えありません。9月中に賃金表の見直しを終わらせておくのが、安全な進め方です。
実際、2025年度の大阪府最低賃金(1,177円)も、答申から発効まで時間がかかり、公示との関係で発効日は10月16日にずれ込みました。今年も「10月1日ぴったり」になるとは限らない、というのが実務上の注意点です。
大阪府の最低賃金、何が決まっていて何がまだなのか
ここで手続きの流れを整理しておきます。
最低賃金は、①中央最低賃金審議会が全国の目安額を示す、②各都道府県の地方最低賃金審議会が地域の実情に応じて答申する、③労働局長がその答申(意見)の要旨を公示する、④公示の日から15日以内に労使が異議を申し出る機会を経る、⑤労働局長が最低賃金を決定し、その決定した事項を公示する、という流れで決まります(最低賃金法10条・11条・14条)。
大阪府は今回、中央の目安「54円」どおりの額を答申しました。異議申出の手続きを経て、正式に決定・公示される運びです。
決定した事項が公示され(最低賃金法14条1項)、その公示の日から起算して30日を経過した日から効力が生じます(最低賃金法14条2項)。発効日を別に定めることもできますが、それは「30日を経過した日より後の日」に限られます。決定でその日を定めた場合は、その日から効力が生じます。30日より前に前倒しすることはできません。
「もう決まった」と思い込んで放置するのも、「まだ決まっていないから」と何もしないのも、どちらも危ういというのがこの記事の立場です。
この場面でよくある失敗
大阪府内の顧問先とやり取りしていて、最低賃金の引き上げ時期によく見かける失敗を挙げます。
- パート・アルバイトの時給だけ直して終わりにする:正社員の月給を時間換算したときに1,231円を下回っていないか、確認が抜けやすいです
- 試用期間中の時給を対象外だと勘違いしている:試用期間中も最低賃金の適用対象です。減額特例を受けるには労働局長の許可が必要で、勝手に低くはできません
- 発効日を「10月1日」と決め打ちして給与システムを先に固定してしまう:公示前に確定操作をすると、実際の発効日とずれたときに再修正が必要になります
- 通勤手当や家族手当を合算して、最低賃金と比較してしまう:最低賃金の比較に使う賃金には、通勤手当・家族手当・臨時に支払われる賃金などを含めません。合算すると実質下回っていても気づきにくくなります
- 自社の業種は特定最低賃金の対象だから大丈夫、と思い込んでいる:これは大阪府の会社で特に注意が要ります。理由は次の章で説明します
どれも「知らなかった」では済まされない部分ですが、忙しい時期ほど後回しにされがちなんですよね。

見落としやすい「特定最低賃金」――10月からは実質、地域別の1,231円が基準になる
大阪府には、地域別最低賃金とは別に、特定の産業だけに設定される「特定最低賃金」があります。
大阪府の特定最低賃金は全部で7業種あります。2025年度(令和7年度)の金額と発効日は次のとおりです。
| 業種 | 時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| はん用機械器具製造業ほか(生産用・業務用機械器具、暖房・調理等装置、配管工事用附属品、金属線製品、船舶製造・修理業、舶用機関製造業) | 1,197円 | 2025年12月1日 |
| 電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業 | 1,197円 | 2025年12月4日 |
| 自動車・同附属品製造業 | 1,194円 | 2025年12月1日 |
| 塗料製造業 | 1,191円 | 2025年12月4日 |
| 鉄鋼業 | 1,185円 | 2025年12月1日 |
| 非鉄金属・同合金圧延業、電線・ケーブル製造業 | 1,180円 | 2025年12月1日 |
| 自動車小売業 | 改定なし(地域別の1,177円を適用) | ― |
製造業を中心とする6業種は2025年12月に1,180円〜1,197円へ改定されますが、自動車小売業だけは2025年度の改定がなく、地域別最低賃金の1,177円がそのまま適用されます。地域別と特定の両方が当てはまる従業員には、高い方の額以上を支払う必要があります。
ここが大阪府特有の落とし穴です。2026年10月に地域別最低賃金が1,231円になると、いちばん高い特定最低賃金(1,197円)すら上回ります。つまり10月以降、特定最低賃金の次の改定(例年12月発効)が追いつくまでの間は、対象業種の会社であっても、実際に守るべき基準は地域別の1,231円になるということです。もともと改定がなく1,177円が適用されている自動車小売業は、なおさら地域別で見ておけば足ります。
「うちは製造業で特定最低賃金があるから1,197円で足りる」と思い込んでいると、10月からその考え方自体が古くなります。自社の業種に特定最低賃金があるかどうかは大阪労働局のホームページで確認できますが、あるかないかにかかわらず、当面は地域別の1,231円を基準に見直すのが安全です。
判断軸:何から手をつけるか
「うちも当てはまるかも」と感じたら、次の軸で今の体制を点検してみてください。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 対象者の洗い出し | 時給・日給・月給の全従業員 | 現時点で1,231円を下回る設定がないか |
| 特定最低賃金の状況 | 自社の業種が特定最低賃金の対象か | 対象業種でも、10月以降しばらくは地域別1,231円が実質の基準になる |
| 除外賃金の確認 | 最低賃金の比較に使う賃金の範囲 | 通勤手当・家族手当・臨時の賃金を誤って含めていないか |
| 発効日の確認先 | 大阪労働局の公示情報 | 「10月1日見込み」を鵜呑みにせず、公示後に確定日を見に行く |
| 勤務地の確認 | 従業員の実際の勤務地(大阪府内かどうか) | 他府県の事業所勤務者に大阪府の額を誤適用していないか |
| 給与ソフトの設定タイミング | システムの反映日設定 | 公示後まで確定操作を待てる仕組みになっているか |
この6点を9月中に一度洗い出しておけば、10月の給与計算で慌てずに済みます。
全国の答申状況や東京・千葉との比較を見ておきたい方は2026年の最低賃金はいくら?東京・大阪・千葉の見通しと中小企業の対策、対応の具体的な準備項目は2026年最低賃金 答申前にやるべき実務6つでも整理しています。
オマカセロウムくんとfreee人事労務でできること
最低賃金の対応は、金額を1つ変えるだけに見えて、実はチェックすべき項目が多い作業です。
オマカセロウムくんでは、毎年の最低賃金改定のタイミングで、顧問先の賃金表と実際の支給額を突き合わせて確認しています。
大阪労働局の正式決定が出た時点で、対象になりそうな従業員を洗い出し、必要な賃金改定の案内までまとめて対応する流れです。人件費の見直しを売上や利益の構造から考え直したい会社には、最低賃金の引き上げに負けない、人件費を売上から逆算する方法も参考にしてください。

給与計算をfreee人事労務で回している会社には、最低賃金額の設定変更もあわせて案内しています。手入力で1人ずつ直すより、マスタの設定を直すほうが抜け漏れが少なくて済むんですよね。
大事なのは、ツールを入れることそのものより、公示後にすぐ動ける準備を今のうちに整えておくことです。
まとめ:発効を待たず、9月中に賃金表を洗い直す
- 大阪府の最低賃金は2026年8月5日の専門部会決議を踏まえ、8月7日に答申文が手交されて1,231円(54円増)へ。10月1日発効見込みだが、正式な決定・公示(最低賃金法10条・14条)はこれから。手続きは、答申の要旨の公示→公示日から15日間の異議申出→決定→決定事項の公示、の順で進む(最低賃金法11条)
- 効力発生は、決定事項の公示(最低賃金法14条1項)の日から起算して30日を経過した日から(最低賃金法14条2項)。決定で発効日を別に定める場合も、30日を経過した日より後の日に限られる(前倒しはできない)。2025年度は10月16日に発効しており、今年も1日ぴったりとは限らない
- 大阪府の特定最低賃金は7業種。製造業6業種は2025年12月に1,180円〜1,197円へ改定、自動車小売業は改定なしで地域別1,177円を適用。いずれも新しい地域別1,231円を下回るため、10月以降しばらくは対象業種でも地域別が実質の基準になる
- よくある失敗は、正社員の時間換算漏れ、試用期間中の勘違い、発効日の決め打ち、除外賃金の合算、特定最低賃金への思い込みの5つ
- 判断軸は、対象者の洗い出し・特定最低賃金の状況・除外賃金の確認・発効日の確認先・勤務地の確認・給与ソフトの設定タイミングの6点
- 違反時は最低賃金法4条1項・40条により50万円以下の罰金の対象になり得る
業種・従業員数・今の人事労務の回し方、困りごとを教えてもらえれば、合いそうな進め方を簡単に案内します。無理な営業はしませんので、気軽にどうぞ。LINEで相談するなら手軽にその場でやり取りできますし、LINEを使わない方はお問い合わせフォームからでも構いません。
