退職の申し出、最後にもめて後味が悪くなっていませんか
従業員10〜30人くらいで、人事担当を社長が兼ねているか、実質ひとりで回している会社。そんな会社で「来月いっぱいで辞めます」と言われたとき、頭の中で真っ先に心配になるのが、引き継ぎと、残っている有給休暇と、最後の給与の3つではないでしょうか。
「有給、全部使い切りたいんですけど」と言われて、じゃあ最終出社日はいつになるのか。買い取ってほしいと言われたら応じるべきなのか。最後の給与はいつまでに払えばいいのか。こうした疑問に自信を持って答えられないまま、なんとなくその場の空気で対応してしまい、あとから「あの時の対応、おかしくないですか」と揉めるケースを何度も見てきました。
退職はただでさえ感情が動く場面です。だからこそ、有給消化と最終給与の扱いだけは、感情ではなくルールで先に決めておく必要があります。
結論:退職日が決まったら「有給消化」と「最終給与」を同時に設計する
先に結論を言うと、退職の申し出を受けたら、本人と一緒に「最終出社日」「退職日までの有給消化の予定」「最終給与の支払予定日」の3つを早めに固めてしまうのが一番もめません。退職日そのものは、期間の定めのない雇用であれば本人の申し出で決まるのが基本です(民法627条により、申し入れから2週間で退職できます)。会社が一方的に決められるものではありません。なお、契約期間の定めがある有期雇用は、途中退職に原則としてやむを得ない事由が必要になるなど扱いが異なります。引き継ぎの都合で退職日をずらしてほしいときは、会社から本人に相談し、合意が得られたときにずらします。
有給消化の予定を先に決めれば、引き継ぎに使える実働日数が自動的に決まります。賃金の締め日や通常の支払日は就業規則で決まっているので動きませんが、どの給与が最後の支払いになるか、いつ・いくら振り込まれるかを、退職者に最初から伝えられます。この3点を後回しにして、辞める本人と都度やり取りしながら決めていくと、言った言わないのトラブルになりやすいんですよね。
よくある失敗5つ
実際の相談で目にする失敗を挙げます。
- ① 有給消化の日数を確認せず退職日を決めてしまう
本人の残日数を数えないまま「じゃあ来月末で」と決めて、あとから消化しきれないことが判明する - ② 時季変更権が使えると思い込む
退職日以降は有給を使わせられない以上、退職直前にまとめて申請されると、他の日に振り替える余地がなく事実上行使できない - ③ 有給の買取を安請け合いする、または頑なに拒否する
法定日数分の買取に応じる義務はないが、消化しきれず消滅する分の扱いを事前に説明しないまま感情的にこじれる - ④ 最終給与の支払期日を曖昧にする
「次の給料日に」と言ったつもりが、退職者から請求されると法律上はもっと早い対応が必要な場合がある - ⑤ 貸与物・私物の精算を後回しにする
制服や社員証、経費精算などを最終出社日までに整理せず、退職後にやり取りが長引く
共通するのは、「退職の申し出を受けた瞬間に、全体のスケジュールを決めきれていない」ことです。
選び方・判断軸:有給消化と最終給与、どう整理すればいいか
もめないための整理軸は、次の3つです。
| 論点 | 押さえるルール | 実務での動き方 |
|---|---|---|
| 有給消化 | 退職日までしか有給は使えない。残日数から逆算して最終出社日を決める | 申し出を受けたその場で残日数を確認し、引き継ぎに使える実働日数を本人と共有する |
| 有給の買取 | 買取は原則不可。ただし退職により消化できず消滅する分は例外的に会社の裁量で買い取れる | 法定日数分の買取に応じる義務はないと伝えたうえで、会社としてどこまで柔軟に対応するか方針を決めておく |
| 最終給与の支払 | 労働基準法第23条(金品の返還)により、退職者から請求があれば7日以内に賃金その他の金品を支払う義務がある | 通常の給料日まで待てるケースと、請求があれば早める必要があるケースを区別して案内する |
有給休暇そのものの基本(付与日数や比例付与の考え方)を整理しておきたい方は、有給とは?パート・アルバイトももらえる?も参考にしてみてください。
労働基準法23条を知らないと、対応が後手に回る
労働基準法第23条は、労働者が退職または死亡した場合、権利者から請求があったときは7日以内に賃金を支払い、積立金や保証金などの金品を返還しなければならないと定めています。違反した場合は30万円以下の罰金です。
ポイントは「請求があれば」7日以内という点です。退職者から特に請求がなければ、就業規則で決めた通常の支払日に支払えば問題ありません(会社の都合で自由に遅らせてよいという意味ではありません)。一方で「早く振り込んでほしい」と請求された場合は、次の給料日まで待てるとは限りません。この条文を知らないまま「うちは25日払いなので」と一律に押し通してしまうと、それ自体がトラブルの火種になります。
なお、退職後に未払い残業代などをまとめて請求されるケースもありますが、賃金請求権の消滅時効は労働基準法115条・附則143条により当分の間3年とされています。日頃の給与計算や残業代の記録を曖昧にしていると、退職後に何年分もさかのぼって指摘されるリスクがある、という前提も併せて押さえておいてください。
退職証明書と引き継ぎ期間、あわせて確認しておきたいこと
もう一つ、意外と見落とされがちなのが退職証明書です。労働基準法第22条は、退職する(または退職した)労働者から使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明書を請求された場合、遅滞なく交付しなければならないと定めています。このとき、本人が請求していない事項を会社の判断で書き加えてはいけない点も押さえておいてください。転職先への提出などで求められることがあります。なお、雇用保険の失業給付の手続きで使うのは離職票で、退職証明書とは別物です。混同しないよう気をつけてください。
引き継ぎ期間については、法律上「何日必要」という定めはありません。ただ、有給消化の日数を先に確定させれば、実働できる引き継ぎ期間は自動的に決まります。業務量にもよりますが、実働5〜10営業日程度を目安に、マニュアル化されていない業務から優先して引き継いでもらうと現実的です。退職の申し出があった時点で「引き継ぎ書を作ってもらう業務」をリスト化しておくと、実働日数が短くても抜け漏れを防げます。
オマカセロウムくんなら、退職時の型をあらかじめ用意します
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まとめ:退職の申し出を受けたその場でスケジュールを決めきる
退職者ともめないためには、有給消化と最終給与の扱いを、感情ではなくルールで先に決めておくことが大切です。
- 有給消化は退職日までしか使えないため、残日数から最終出社日を逆算する
- 有給の買取は原則不可。ただし消化しきれず消滅する分は会社の裁量で対応方針を決めておく
- 最終給与は労働基準法第23条により、請求があれば7日以内の支払いが必要
- 賃金請求権の消滅時効は当分の間3年。日頃の記録が退職後のトラブル予防につながる
退職の申し出はいつ来るか分かりません。今のうちに型を整えておけば、次に誰かが辞めるときに慌てずに済みます。
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