紙のタイムカードで勤怠を管理している会社へ
従業員10〜50人くらいで、人事担当が専任ではなく、総務や社長が他の仕事の合間に勤怠をまとめている会社。
毎月、紙のタイムカードやハンコの出勤簿を見ながら、Excelに手で転記して集計している。
正直、今のところ大きな問題は起きていない。でも、この先もこのままで大丈夫か、少し気になっている。
そんな方に向けて、この記事を書いています。

結論:紙のタイムカード自体は違法ではない。危ういのは「運用が追いつかなくなったとき」
先に結論を言います。紙のタイムカードで打刻して勤怠を管理すること自体は、違法ではありません。
打刻という客観的な記録に基づいて労働時間を把握していれば、法律が求める記録方法の要件は満たせます。
問題になるのは、紙のままだと運用でカバーしきれなくなるタイミングが来ることなんですよね。
従業員が増える、テレワークや直行直帰が混ざる、残業が慢性化する。このどれかに当てはまったら、紙の運用は崩れやすくなります。
紙のタイムカードで実際によく起きる失敗
顧問先を見ていて、実際によく出会う失敗を挙げます。
- 打刻と実際の退社時刻がズレる:先に打刻してから作業を続ける、いわゆる「先押し」の慣行が現場で定着してしまう
- 管理職には打刻させていない:労働時間の把握義務は、高度プロフェッショナル制度の対象者を除くすべての労働者が対象。管理監督者も本来は対象なのに、紙のカードは非管理職だけに配って運用しているケースがある
- テレワーク・直行直帰の社員が自己申告に流れる:タイムカードを打てないためExcelに自分で書く運用になり、客観的な記録から外れてしまう
- Excelへの転記でミスが起きる:紙から手入力する工程そのものが、入力ミスや改ざんの疑いを生む
- 保管がバラついていて、必要な期間分が揃わない:労基署の調査や退職者からの請求が来たときに、決められた期間の記録をすぐに出せない
こうした失敗は、担当者の不注意というより、紙で回す仕組みそのものの限界なんですよね。
クラウド化を検討すべきタイミング、判断軸はここ
「うちも当てはまるかも」と感じたら、次の軸で今の運用を点検してみてください。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 従業員数と働き方 | テレワーク・直行直帰・複数拠点の有無 | 全員が同じ場所で打刻できる前提が崩れていないか |
| 残業の状態 | 月の残業時間、36協定の上限との距離 | 月末の集計まで超過に気づけていないか |
| 転記の工程 | 紙からExcel・給与ソフトへの入力回数 | 手入力の回数が多いほどミスの入り口が増える |
| 管理職の扱い | 管理監督者・裁量労働制適用者の打刻状況 | 対象者全員の記録が取れているか |
| 記録の保管 | 出勤簿・タイムカードの保存状態 | 必要な期間分をすぐに出せる状態か |
5つのうち2つ以上に心当たりがあれば、紙のままで乗り切るより、クラウド化を検討したほうが安全です。
固定残業代を払っているのに「未払い」と言われる理由でも書きましたが、残業代のトラブルは、正確な時刻の記録があるかどうかで会社側の説明力が大きく変わります。
労働時間の記録、法律ではどう決まっているか
紙かクラウドかを判断する前に、押さえておきたい法律上のルールが3つあります。
まず、労働安全衛生法66条の8の3です。2019年4月1日の施行により、事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定められました。対象は高度プロフェッショナル制度の対象者を除くすべての労働者で、管理監督者や裁量労働制の適用者も対象に入ります。
記録の方法は、使用者が自ら現認して確認・記録する方法か、タイムカードやICカードなど客観的な記録を基礎に確認・記録する方法が原則です。自己申告制は、やむを得ない場合の例外的な扱いとされています。
次に、労働基準法108条・109条です。108条は賃金台帳の作成を義務づけ、出勤日数や労働時間数などを記載事項としています(労基則54条)。109条は出勤簿などの記録の保存期間を原則5年と定めています(2020年4月1日施行)。ただし附則143条1項の経過措置により、当分の間は3年の保存で構いません。
このうち賃金台帳の作成義務(108条)と記録の保存義務(109条)に違反すると、労働基準法120条により30万円以下の罰金の対象になります。一方、労働時間の状況把握義務(労働安全衛生法66条の8の3)には、この義務そのものに対する直接の罰則は設けられていません。ただし罰則の有無にかかわらず、労基署の調査で「記録が出せない」状態は、それだけで会社の管理体制への信頼を落としてしまうんですよね。休憩を取らせず書類送検|事例から学ぶ違反リスクと対策でも書きましたが、労働時間の記録が甘いと、他の労務トラブルの発覚にもつながります。
なお、2026年の通常国会には、労働基準法の労働時間法制を見直す抜本改正の法案提出は見送られましたが、議論自体は続いています。今のうちに記録の精度を上げておくと、今後の制度変更にも対応しやすくなります。
オマカセロウムくんとfreee人事労務、切り替えをどう支えるか
紙のタイムカードからの切り替えは、システムを入れ替えるだけでは終わりません。運用に落とし込むところまでがセットです。
私たちの「オマカセロウムくん」では、勤怠データを受け取って、集計・給与計算・36協定の上限管理までまとめて引き受けています。紙のままでも構いませんが、クラウド化していただけると、こちらでの確認もより速く正確になります。
ツール選びの相談を受けたときは、freee人事労務をよく勧めています。勤怠と給与計算が同じサービスの中でつながっていて、残業時間の集計から給与への反映まで手入力を減らせるからです。freee人事労務 vs SmartHR・マネーフォワード|中小企業が選ぶべき1本にも書きましたが、どのサービスが合うかは会社の規模や働き方によって変わります。
大事なのは、ツールを入れることそのものではなく、記録から給与・法令チェックまでが一続きになる状態を作ることです。
まとめ:紙のタイムカードは「違法」ではなく「限界のタイミングがある」
- 紙のタイムカードで打刻管理すること自体は違法ではない。危ういのは、人数増加・テレワーク・残業の慢性化などで運用が追いつかなくなったとき
- よくある失敗は、打刻と実退社時刻のズレ、管理職の打刻漏れ、テレワーク組の自己申告化、Excel転記のミス、保管のばらつき
- 判断軸は、働き方の多様さ・残業の状態・転記工程の多さ・管理職の扱い・記録の保管状態の5点
- 労働時間の把握は労働安全衛生法66条の8の3(2019年4月1日施行)で義務化。ただしこの把握義務そのものには直接の罰則はない。記録の保存は労働基準法109条により原則5年、経過措置(附則143条1項)で当分の間3年。賃金台帳の作成(108条)・記録の保存(109条)の義務違反は、労働基準法120条により30万円以下の罰金
- 切り替えは、システム導入だけでなく、記録から給与・法令チェックまでを一続きにする運用づくりが本体
紙のままでいくか、クラウド化するか。一度、今の運用を5つの軸で点検してみてもらえたらと思います。
業種・従業員数・今の勤怠管理の回し方、困りごとを教えてもらえれば、合いそうな進め方を一緒に考えます。無理な営業はしませんので、気軽にどうぞ。LINEで相談するなら手軽にその場でやり取りできますし、LINEを使わない方はお問い合わせフォームからでも構いません。
