「あの人がいないと回らない」、心当たりありませんか
従業員10〜50人くらいの会社で、採用も入退社の手続きも、給与計算も就業規則の管理も、全部ひとりの担当者が抱えている。
もしくは社長自身が、経理や現場の合間に人事労務を片手間でこなしている。
そんな会社、実はかなり多いんですよね。
私も顧問先を見ていて「この人がいなくなったら、うちの人事は止まる」という状態に、何度も出会ってきました。
普段は特に困りません。むしろ一人で回っている分、意思決定は早いし、無駄もない。
問題が表面化するのは、その担当者が急に休んだり、辞めたりした瞬間です。

結論:属人化そのものより「引き継げない状態」が本当のリスク
先に結論を言うと、人事労務がひとりに集中していること自体は、悪いことではありません。
会社の規模を考えれば、むしろ自然な形です。
本当のリスクは、その人が持っている知識ややり方が、その人の頭の中にしか無い状態のことです。
これを属人化と呼びますが、属人化そのものより「引き継げないまま担当者がいなくなること」の方が危ないんですよね。
給与計算のやり方、社会保険の手続きの期限、就業規則のどこを直したか。全部がその人の記憶とExcelファイルの中にしまわれていて、他の誰も再現できない。
この状態に気づかないまま何年も過ぎている会社を、私はいくつも見てきました。
人事労務をひとりに任せている会社でよくある5つの失敗
顧問先を見ていて、実際によく出会う失敗を挙げます。
- 手順が担当者の頭の中にしかない:給与計算の計算根拠、控除項目の意味、社会保険の届出タイミングを、マニュアル化していない
- 法定三帳簿の管理が形だけ:労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を作ってはいるが、更新が止まっていたり、保存期間の意識がなかったりする
- 退職・休職時の引き継ぎ計画がない:担当者本人が急にいなくなった場合を、誰も想定していない
- チェックする人がいない:計算ミスや手続き漏れがあっても、担当者本人しか気づける人がいない
- 法改正のたびに対応が後手に回る:情報収集も制度理解も一人に依存しているため、改正のキャッチアップが追いつかない
こうした失敗は、担当者の能力不足が原因ではありません。仕組みとして「一人に依存する形」を放置してきたことが原因なんですよね。
気づかないうちに止まっている法定の手続きもある
一人担当のリスクは、日々の業務だけでなく、法律で決まった手続きにも及びます。
労働基準法109条は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿などの記録を保存するよう使用者に義務づけています。本則の保存期間は5年ですが、同法附則143条による経過措置で、当分の間は3年とされています。
担当者が変わるたびにこの管理がリセットされていたら、保存義務そのものを満たせなくなるリスクがあります。
社会保険の資格取得・喪失の届出も同じです。健康保険法施行規則・厚生年金保険法施行規則により、届出は原則5日以内とされています。算定基礎届は毎年7月1日から7月10日までの提出期間です。
これらの期限は、担当者の頭の中で管理されているケースが本当に多い。担当者が休んだ瞬間に、期限管理ごと止まってしまいます。
何年も更新していない就業規則が、いざという時に効かない理由でも書きましたが、担当がひとりだと法改正への対応も後回しになりがちです。就業規則の更新漏れも、属人化が引き起こす典型的な症状のひとつだと思っています。
内製を続けるか、外部の力を借りるか。判断軸はここ
「うちも属人化しているかもしれない」と感じたら、次の軸で今の体制を点検してみてください。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 手順の見える化 | 業務マニュアル・チェックリストの有無 | 担当者が休んでも他の人が代わりにできるか |
| 記録の管理 | 法定三帳簿・雇用契約書の保存状態 | 保存期間・更新状況が把握できているか |
| ダブルチェック | 計算・手続きの確認体制 | 担当者ひとりの判断で処理が完結していないか |
| 情報収集 | 法改正情報のキャッチアップ方法 | 一人の目だけに頼っていないか |
| もしもの備え | 担当者不在時の代替手段 | 外部委託や顧問社労士との連携があるか |
すべてを内製で仕組み化しようとすると、結局その仕組みを作る時間も一人の担当者に乗ってしまいます。
給与計算アウトソーシングとは?費用相場と選び方を解説でも触れているように、一部の業務だけでも外部に切り出すことで、担当者の負荷と会社のリスクを同時に減らせる場合があります。

オマカセロウムくんなら、ひとり担当のリスクをまるごと引き受けられます
私たちの「オマカセロウムくん」は、入退社手続き・給与計算・就業規則・労務相談までを、外付けの人事部としてまとめて引き受けるサービスです。
担当者が一人で抱えている業務を丸ごと外に出せます。ただし、外に出しさえすれば自動的に安心というわけではありません。入退社の情報、勤怠、賃金のデータ、それに社内での判断や承認を、私たちへ速やかに共有できる体制を整えておくこと。これが揃えば、担当者が休んでも辞めても、手続きは止まりにくくなります。逆に、会社側からの情報共有が滞れば、外部委託であっても手続きは止まり得ます。「外に出す」と「情報を渡す仕組みを作る」はセットだと考えてください。
ツールの話をすると、給与計算や勤怠管理を内製で続ける場合は、freee人事労務のようなクラウドサービスに載せておくことを個人的にはおすすめしています。担当者の頭の中だけに情報がある状態から抜け出せますし、freee人事労務があれば社労士いらない?社労士事務所が考えてみたでも書いた通り、クラウド化と外部委託は両立できます。
内製を続けるにしても、外に出すにしても、大事なのは「一人が抜けても業務が止まらない状態」を今のうちに作っておくことだと思っています。
まとめ:属人化に気づいた今が、仕組み化のタイミング
- 人事労務がひとりに集中していること自体は自然。問題は「引き継げない状態」で放置すること
- よくある失敗は、手順の非公開・法定三帳簿の管理不足・引き継ぎ計画の不在・チェック体制の不在・法改正対応の遅れ
- 労働基準法109条(法定三帳簿の保存、附則143条の経過措置で当分の間3年)、健康保険法施行規則・厚生年金保険法施行規則(資格取得・喪失の届出は原則5日以内)など、法定の手続きも担当者不在で止まりやすい
- 手順の見える化・記録管理・ダブルチェック・情報収集・もしもの備えの5点で今の体制を点検する
- 内製を続けるならクラウド化、負荷を減らすなら一部業務の外部委託と、両方の選択肢がある。ただし外部委託でも、会社側からの入退社・勤怠・賃金・承認の共有が滞れば手続きは止まる。情報を速やかに渡せる体制づくりをセットで進める
「この人がいなくなったら」を、一度真剣に想像してみてもらえたらと思います。
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