労働のエビデンスとは何でしょうか。
私たちの仕事はよく税理士さんと比較されますが、一番の違いはエビデンスの有無だと思います。
税務業務なら領収書や請求書などの明確なエビデンスがあるので、それをもとに仕事を進めることができます。
「この領収書は何ですか?」と聞くような塩梅です。
では、労働者にとってのエビデンスは何でしょうか。
一般的には雇用契約書や勤務簿がエビデンスになりますが、「明確なエビデンスは存在しない」という認識が最も正確だと思います。
一番大事なのは、会社と労働者の認識に差があるかどうかです。
認識や管理帳簿に誤りがあれば、やはり修正する必要があります。
往々にして下記のようなケースが見受けられます。
- ・会社は「固定残業あり」と伝えていて社員も納得しているけど、雇用契約書に記載がない
- ・仕事は18時に終わったが、タイムカードを押し忘れて19時に打刻し、経営者もそれに気付いていない
- ・変形労働制なのに、就業規則は固定労働時間制になっている
このようなケースは
- 1.認識を確認する
- 2.帳簿を修正する
が出発点です。 ただし、これで片づくのは打刻の押し忘れのような「記録の誤り」だけです。固定残業代と変形労働時間制は、会社と社員の認識が一致していても、それだけでは成り立ちません。 固定残業代なら、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分が区別できるか、労働基準法37条で計算した割増賃金の額に足りているかを確かめます。足りない分があれば、さかのぼって払います。契約書に書いていないという一点だけで、直ちに無効と決まるわけでもありません。 変形労働時間制なら、制度に応じた就業規則や労使協定があるか、労働日と労働日ごとの労働時間を事前に特定していたか、届出をしたかを確かめます。書類を後から直しても、当時、要件を満たしていなかった事実までは消せません。
修正しないまま放置すると、誤ったエビデンスが正しいものと判断されてしまうわけです。
なお、この4つは確かめたいことで役割が変わります。上から順にいつでも強い、というものではありません。労働条件そのものは雇用契約書と就業規則、実際に働いた時間と払った額は勤務簿と給与明細で見ます。
- 1.雇用契約書
- 2.就業規則
- 3.勤務簿
- 4.給与明細
つまり、
- ・雇用契約書で、提供する時間と提供する賃金を決定する
- ・契約書にないその他のルールは就業規則で決める=お互いに守る→お互いに守れない場合は契約違反(例:欠勤=出勤ルールを満たさなかったので賃金を払わない) ・契約書の労働条件が就業規則の基準を下回っている部分は無効になり、就業規則の基準が当てはまる(労働契約法12条)。契約書に書いてあるから強い、とは限らない ・契約書の労働条件が就業規則の基準を下回っている部分は無効になり、就業規則の基準が当てはまる(労働契約法12条)。契約書に書いてあるから強い、とは限らない
- ・労働を提供した時間を計測する
- ・計測した時間をもとに給与を払う
上記の原則をしっかりと抑えましょう。
なお「提供する時間を増やす・減らす」「勝手にシフトを変更する」などはできないという契約を結ぶ必要があります。
ただし、会社は労働者に、提供する時間を増やす指示を出すことができます。
ただし、指示を出せば何でも従わせられる、という話ではありません。
具体的には、雇用契約書で
- ・残業有
- ・休日出勤有
となっていて、就業規則にも残業や休日労働を命じられる定めがあること。ここが土台です。そのうえで、法定労働時間を超える残業と法定休日の労働には、36協定を結んで労働基準監督署に届け出ておく必要があります(労働基準法36条)。命じられるのは、その協定と法律の上限の範囲内までです。本人の健康状態や、育児・介護を理由とする法律上の制限もあります。
ここまで揃って、はじめて「今日は残業をお願いします」が通ります。
しかし、現代社会で実際にこのようなことをしてしまうと、どんどん社員が辞めちゃうのでやらないわけです。
おかしな話ではありますが、労働基準法自体が時代遅れなのかもしれませんね。。。
