2026年度の最低賃金、全国の答申が出そろいました
2026年9月3日、厚生労働省が全都道府県の答申状況を公表しました。
全国の加重平均は1,177円。東京都は1,280円、大阪府は1,231円、千葉県は1,195円です。
答申額で見ると、去年の1,121円から56円上がりました。引上げ率にすると約5.0%です。
7月に示された目安は全国平均で55円。答申額はそれを1円上回りました。
47都道府県の引上げ額は54円から65円まで幅があります。目安どおりだったのは一部で、多くの県が目安を上回りました。
東京・大阪・千葉はいくらになるのか
主要3都府県と全国平均を並べると、こうなります。
| 都道府県 | 現行(2025年度) | 答申額 | 引上げ額 | 引上げ率 | 発効予定日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,226円 | 1,280円 | +54円 | 4.4% | 10月1日 |
| 大阪府 | 1,177円 | 1,231円 | +54円 | 4.6% | 10月1日 |
| 千葉県 | 1,140円 | 1,195円 | +55円 | 4.8% | 10月1日 |
| 全国加重平均 | 1,121円 | 1,177円 | +56円 | 5.0% | - |
引上げ率は小数第2位を四捨五入しています。出典は厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」(2026年9月3日公表)です。
千葉県と埼玉県、愛知県は、目安のAランク54円に1円上乗せして55円で答申されました。
一方、東京都・神奈川県・大阪府は目安どおりの54円です。上げ幅がいちばん小さいのが、実は賃金の高い3都府県でした。
47都道府県の答申額と発効予定日
全国の一覧です。いずれも答申された額で、発効日は予定です。自社の事業所がある県を確認してください。
| 都道府県 | 答申額 | 引上げ額 | 発効予定日 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,131円 | +56円 | 10月1日 |
| 青森 | 1,090円 | +61円 | 10月29日 |
| 岩手 | 1,090円 | +59円 | 12月1日 |
| 宮城 | 1,098円 | +60円 | 10月1日 |
| 秋田 | 1,090円 | +59円 | 10月14日 |
| 山形 | 1,092円 | +60円 | 10月30日 |
| 福島 | 1,094円 | +61円 | 10月16日 |
| 茨城 | 1,136円 | +62円 | 10月18日 |
| 栃木 | 1,125円 | +57円 | 10月1日 |
| 群馬 | 1,120円 | +57円 | 10月3日 |
| 埼玉 | 1,196円 | +55円 | 10月1日 |
| 千葉 | 1,195円 | +55円 | 10月1日 |
| 東京 | 1,280円 | +54円 | 10月1日 |
| 神奈川 | 1,279円 | +54円 | 10月1日 |
| 新潟 | 1,108円 | +58円 | 10月1日 |
| 富山 | 1,119円 | +57円 | 10月1日 |
| 石川 | 1,113円 | +59円 | 10月3日 |
| 福井 | 1,112円 | +59円 | 10月4日 |
| 山梨 | 1,113円 | +61円 | 11月1日 |
| 長野 | 1,117円 | +56円 | 10月2日 |
| 岐阜 | 1,121円 | +56円 | 10月1日 |
| 静岡 | 1,154円 | +57円 | 10月15日 |
| 愛知 | 1,195円 | +55円 | 10月1日 |
| 三重 | 1,143円 | +56円 | 10月1日 |
| 滋賀 | 1,136円 | +56円 | 10月3日 |
| 京都 | 1,180円 | +58円 | 11月16日 |
| 大阪 | 1,231円 | +54円 | 10月1日 |
| 兵庫 | 1,172円 | +56円 | 10月1日 |
| 奈良 | 1,107円 | +56円 | 10月4日 |
| 和歌山 | 1,101円 | +56円 | 10月3日 |
| 鳥取 | 1,090円 | +60円 | 10月3日 |
| 島根 | 1,092円 | +59円 | 10月10日 |
| 岡山 | 1,104円 | +57円 | 10月2日 |
| 広島 | 1,141円 | +56円 | 10月11日 |
| 山口 | 1,101円 | +58円 | 10月8日 |
| 徳島 | 1,103円 | +57円 | 11月1日 |
| 香川 | 1,092円 | +56円 | 10月1日 |
| 愛媛 | 1,093円 | +60円 | 11月1日 |
| 高知 | 1,086円 | +63円 | 10月29日 |
| 福岡 | 1,114円 | +57円 | 10月4日 |
| 佐賀 | 1,095円 | +65円 | 11月15日 |
| 長崎 | 1,087円 | +56円 | 11月2日 |
| 熊本 | 1,092円 | +58円 | 12月1日 |
| 大分 | 1,096円 | +61円 | 11月1日 |
| 宮崎 | 1,085円 | +62円 | 10月24日 |
| 鹿児島 | 1,090円 | +64円 | 10月25日 |
| 沖縄 | 1,086円 | +63円 | 12月2日 |
目立つのは九州勢です。佐賀県は目安の56円を9円上回る65円、鹿児島県も64円で着地しました。
最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円。その差は195円です。
最低額を最高額で割った比率は84.8%。厚生労働省は、12年連続の改善だとしています。地方の上げ幅を大きくして、都市部との差を詰めにいく流れがはっきり出ています。
ランク制度そのものの見直しも、議論が続いています。仕組みの背景は目安制度の見直しにまとめました。
発効日は10月1日とは限りません
ここが実務でいちばん事故りやすいところです。
一覧を見てもらうと分かるとおり、発効予定日は10月1日から12月2日までバラバラです。
10月1日発効の予定なのは、東京・大阪・千葉を含む一部の県だけ。岩手県と熊本県は12月1日、沖縄県は12月2日と、2か月も後です。
「10月1日から新しい最低賃金」と思い込んで賃金台帳を直すと、県によってはズレます。
しかも月の途中で発効する県だと、同じ月の給与の中に旧額と新額が混在します。予定どおり10月15日に発効する静岡県なら、時給者は14日までが旧額、15日からが新額での計算です。
月給者はもう少し厄介です。日付で機械的に割るのではなく、改定の前後で期間を分け、それぞれの所定労働時間で時間額を出して比べます。時給者と同じ感覚で処理すると間違えます。
複数の県に事業所がある会社は、県ごとに発効日を確認してください。
この発効日は、まだ予定の段階。答申の公示後に異議の申出があれば、変わることもあります。
答申から発効までは、法律で決まった順序を踏みます。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 答申 | 地方最低賃金審議会が労働局長に意見を提出 | 最低賃金法第10条第1項 |
| 意見要旨の公示 | 提出された意見の要旨が公示される | 同法第11条第1項 |
| 異議申出 | 対象地域の労働者と、その使用者は、公示日から15日以内に異議を申し出できる | 同法第11条第2項 |
| 再審議 | 異議の申出があれば、労働局長は審議会に改めて意見を求める | 同法第11条第3項 |
| 決定 | 都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定 | 同法第10条第1項 |
| 決定の公示・発効 | 公示から30日経過後、または決定で別に定めた日から効力発生 | 同法第14条 |
答申が出ても、そこから決定と公示という段取りが残っています。自社の確定した発効日は、各都道府県労働局のサイトで公示後に確認できます。
人件費はどれくらい増えるのか
千葉県で、時給1,140円のパートを10人雇っている会社を例に計算してみます。
1人あたり週20時間、年52週で働くとすると、年間の労働時間は1,040時間。
引上げ額の55円をかけると、1人あたり年間57,200円。10人なら572,000円の増加です。
さらに、賃金が上がって標準報酬月額の等級が変われば、社会保険料の事業主負担も増えます。賃金の増加額だけを見ていると、実際の負担を小さく見積もることになります。
試算は週20時間×52週の前提です。自社の実際の労働時間に置き換えて計算してみてください。
もう一つ、見落とされがちな影響があります。
扶養の範囲内で働きたい人は、年収の上限を決めて働いています。時給が上がると、同じ年収に収めるために働ける時間が短くなります。
千葉県の例でいえば、時給1,140円が1,195円になると、同じ年収枠で働ける時間はおよそ4.6%減ります。1人では小さく見えますが、パートが20人いれば、おおよそ1人分の労働力が消える計算です。
10月以降のシフトが回らなくなってから気づくと、対応が後手になります。扶養内で働いている人が何人いるか、いま確認しておきたいところです。
この負担をどう吸収するか。値上げか、生産性か、その両方かという話です。考え方は人件費を売上から逆算する方法に書きました。
自社が下回っていないか、どう確かめるか
時給で働いている人は、時給と最低賃金を見比べるだけなので簡単です。
厄介なのは月給者です。月給を時間額に換算して比べる必要があります。
計算式はこうです。
月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 = 時間額
このとき、月給の全額を使ってはいけません。最低賃金の計算から除く賃金が決まっています(最低賃金法第4条第3項、同法施行規則第1条)。
除くのは次の賃金です。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働(時間外)に対して支払われる賃金
- 所定労働日以外の日の労働(休日)に対して支払われる賃金
- 深夜(22時〜翌5時)の労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
時間外と休日の分は賃金の全額を除きます。深夜の分だけは、通常の賃金を超える割増部分に限って除きます。ここは扱いが分かれるので、間違えやすいところです。
通勤手当や家族手当を含めたまま計算すると、時間額が実際より高く出ます。「うちは足りている」と思っていたのに、除外して計算し直したら下回っていた、というのはよくある話です。
時間額に1円未満の端数が出ても、丸めずにそのまま最低賃金額と比べます。切り上げてしまうと、本当は下回っているのに足りていると誤判定します。
なお地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合、50万円以下の罰金が定められています(最低賃金法第40条)。
発効までにやっておきたい3つのこと
影響を受ける人を洗い出す
答申額を下回る人が何人いるか、名前ベースでリストにします。時給者だけでなく、月給者も時間額に換算して確認します。
賃金テーブルの逆転を直す
最低賃金が上がると、いちばん下の層が押し上げられます。すると新人と2年目の時給が並ぶ、あるいは逆転する事態が起きます。
下だけ上げて放っておくと、先に入った人の納得感が確実に削れます。上の層もあわせて手を入れるかどうか、ここで決めておきたいところです。
助成金を確認する
事業場内の最低賃金を引き上げて設備投資などを行った中小企業には、業務改善助成金があります。要件や上限額は年度ごとに変わるので、厚生労働省の最新の公募要領で確認してください。
実務の手順は答申前にやるべき実務6つで細かく分けています。
まとめ
2026年度の最低賃金について、押さえておきたいのは次の点です。
- 全国加重平均は1,177円。去年から56円(約5.0%)の引上げ
- 東京1,280円、大阪1,231円、千葉1,195円。いずれも10月1日発効の予定
- 引上げ額は54円から65円まで幅がある。佐賀の65円が最大
- 発効予定日は10月1日から12月2日までバラバラ。岩手・熊本は12月1日、沖縄は12月2日
- 月給者は通勤手当・家族手当・割増賃金を除いて時間額に換算して比べる
発効日は都道府県ごとに違います。自社の事業所がある県を一覧で確かめ、公示で確定した日を見たうえで準備を進めてください。
最低賃金の対応は、賃金台帳を直して終わりではありません。賃金テーブルの見直し、就業規則の確認、社会保険料への波及と、地味に手間のかかる作業が続きます。
人事労務をひとりで回している会社だと、通常業務と並行してここまで手が回らないことも多いはずです。判断に迷うところがあれば、LINEかフォームから聞いてください。
