こんな通知、来たらドキッとしませんか
従業員10〜30人くらいで、人事担当は総務と兼任のひとり。給与計算も勤怠管理も、その人が何とか回している。
そんな会社に労働基準監督署から「調査に伺います」という連絡が来たら、どうでしょうか。
正直、ドキッとしますよね。私も顧問先から「労基署から連絡が来た、何を準備すればいいですか」という相談を、これまで何度も受けてきました。
多くの場合、日頃から書類がきちんと整っていれば、それほど恐れる必要はありません。問題は「調査が来ると分かった後」ではなく、「日頃の整備」の方なんですよね。

結論:名簿・台帳・36協定・就業規則の4点が揃っていれば、まず慌てなくていい
先に結論を言うと、労働者名簿、賃金台帳、時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)、就業規則の4点が最新の状態で揃っていれば、調査本番でそこまで慌てることはありません。
逆にこの4点のどれかが古い、あるいは存在しないという状態だと、調査そのものより「整備不足」を突かれて是正勧告に発展しやすくなります。
普段の運用として、この4点を「調査が来たら出す資料」ではなく「常に最新の状態で置いておく資料」と捉え直すのが、一番の近道だと思っています。
労基署の調査(臨検監督)で、実際に何を見られるのか
労働基準監督署の調査は、法律上「臨検」と呼ばれます。労働基準法第101条は、労働基準監督官が事業場に臨検し、帳簿・書類の提出を求め、使用者や労働者に尋問できる権限を定めています。
調査には大きく4種類あります。計画的に回ってくる「定期監督」、労働者からの申告を受けて行われる「申告監督」、労災など事故が起きた際の「災害時監督」、そして一度指摘を受けた事項の改善を確認する「再監督」です。
いずれの場合も、確認されるのは主にこの3点です。①労働者名簿(労基法第107条)②賃金台帳(同第108条)③時間外労働・休日労働の実績と36協定届(同第36条)。
加えて、就業規則(同第89条、常時10人以上を使用する事業場が対象)や、出勤簿・タイムカードなど勤怠の記録も必ず確認されます。
何年も更新していない就業規則が、いざという時に効かない理由でも触れていますが、就業規則は「作った当時のまま」で放置されているケースが本当に多いです。調査ではまさに、この「実態と規則のズレ」を見られます。
書類が整っていない会社によくある5つの失敗
顧問先を見ていて、よく出会う失敗を挙げます。
- 36協定を締結していない、または労働者代表の選出手続きが正しくない:協定書自体はあっても、選出方法が不適切で無効になっているケースがあります。詳しくは36協定が「無効」に?労働者代表の選出を正しくやる方法で解説しています
- 賃金台帳に記載すべき項目が抜けている:基本給や手当の内訳、労働時間数の記載が不十分で、108条の要件を満たしていない
- 出勤簿とタイムカードの記録が食い違う:現場の実態と会社が保管している記録が一致せず、指摘されても説明できない
- 就業規則が実態と合っていない:始業・終業時刻や休憩時間が変わったのに、規則の記載を更新していない
- 休憩を取らせていないのに、記録上は取ったことになっている:休憩を取らせず書類送検|事例から学ぶ違反リスクと対策のように、実態との不一致は重大な違反につながります
こうした失敗の多くは、悪意があるわけではありません。「日々の運用が書類に反映されていない」ことが原因なんですよね。
何を優先して整えるか、判断軸
限られた時間で何から手をつけるか、判断の軸を表にまとめました。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 名簿・台帳の有無 | 労働者名簿・賃金台帳が全員分あるか | 107条・108条の記載事項を満たしているか |
| 36協定の有効性 | 協定書の締結日・労働者代表の選出方法 | 過半数代表として正しく選ばれているか |
| 就業規則の鮮度 | 始業終業時刻・休憩・賃金規定の記載 | 実態と規則が一致しているか |
| 記録の保存期間 | 出勤簿・賃金台帳の保管年数 | 109条は原則5年だが、143条1項の経過措置で当分の間は3年 |
| 記録と実態の一致 | タイムカードと本人の実感 | 「記録上は休憩を取った」だけになっていないか |
記録の保存期間は少し複雑です。労働基準法第109条は2020年4月1日の改正で原則5年に延長されましたが、同法第143条第1項の経過措置により、当分の間は3年間の保存で足りることになっています。
5年に統一される見込みではあるものの、現時点では3年基準で運用している会社が多いのが実情です。自社がどちらの基準で動いているか、一度確認しておくと安心です。
オマカセロウムくんなら、日頃の整備をまるごと引き継げます
私たちが提供している「オマカセロウムくん」では、労働者名簿・賃金台帳・36協定・就業規則の整備と更新を、日常業務としてまるごと引き継ぎます。
調査の連絡が来てから慌てて揃えるのではなく、普段から「いつでも出せる状態」を保っておく発想です。
勤怠と賃金台帳を一元管理したい場合は、freee人事労務のようなクラウドシステムで出勤簿と賃金台帳を自動的に連動させる方法も有効です。手入力のズレが減り、調査で聞かれたときにもすぐ数字を出せます。
まとめ:調査は「来てから慌てる」ものではなく「来る前に整える」もの
労基署の調査は拒否できませんが、日頃の整備さえできていれば、過度に恐れる必要はありません。
- 調査(臨検)では労働者名簿(107条)・賃金台帳(108条)・36協定届(36条)・就業規則(89条)が主に確認される
- 法的根拠は労基法101条。調査には定期・申告・災害時・再監督の4種類がある
- 記録の保存期間は原則5年(109条)だが、143条1項の経過措置により当分の間は3年
- 違反時は120条1号により30万円以下の罰金、36協定なしの残業など重大な違反は119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になり得る
- 「調査が来たら出す」ではなく「常に出せる状態にしておく」発想に切り替えるのが、一番の対策になる
今の書類が調査に耐えられる状態か、一度確認してみませんか。
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