こども性暴力防止法 就業規則の改定はどこから始めるか

仕事術

2026年10月16日更新:施行日が2026年12月25日であることを、こども家庭庁の資料で改めて確認しました。2026年9月2日付けの施行ガイドライン改訂(研修を受けさせる時期の明確化など)を追記し、施行までのスケジュールも、残り2か月少々となった今に合わせて組み直しています。

校舎の窓辺に並ぶこどもたち。こどもの安全を守る法律の解説イメージ

この記事でわかること

  • ・こども性暴力防止法(日本版DBS)の対象事業者と施行スケジュール
  • ・就業規則で点検したい4つの項目と、参考になる条文例
  • ・採用フロー(募集要項・誓約書・内定通知書)の見直しポイント
  • ・施行日(2026年12月25日)に間に合わせるための逆算スケジュール

こども性暴力防止法とは|2026年12月25日施行

2024年6月19日に成立し、同月26日に公布された「こども性暴力防止法」は、ニュースなどで「日本版DBS」と呼ばれることもあります。

正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」と長いのですが、要点はこどもに接する仕事の現場で性暴力を防ぐ仕組みを作ることにあります。

施行日は2026年12月25日です。法律の附則第1条では施行日を政令で定めることとされ、こども家庭庁は12月25日に施行すると公表しています。2026年10月半ばの今、施行まで残り2か月少々です。

学校・認可保育所などの義務対象の事業者と、認定を受けた学習塾などの事業者に求められる対応は、大きく4つに整理できます。学習塾などの認定対象の事業者は、認定を受けなければこれらの措置義務を負わず、犯罪事実確認制度も使えません。

  • ・対象の従事者について、特定性犯罪の前科の有無を確認する(犯罪事実確認制度)。新たに従事させる人は業務に就く前に、施行時にすでに従事している人は法律で定める期間内に確認する。その後も、法律で定める時期に改めて確認する(法第4条)
  • ・日頃から服務規律・面談・相談体制・研修を整える
  • ・性暴力のおそれが認められたら業務から外す(防止措置)
  • ・犯歴情報を厳格に管理する

そして、この4つを支える土台が「就業規則の改定」と「採用フローの見直し」です。

ここを準備しておかないと、犯罪事実確認で性犯罪歴がある内定者が判明したときに、内定取消が法的に認められないケースが生じ得ます。事前準備の有無が、対応のしやすさを大きく左右する部分かと考えます。


対象になる事業者を確認しましょう

まず自社が対象かどうかを確認しましょう。対象は2層構造になっています。

義務対象(法律で必ず実施)

  • ・学校(幼稚園・小中高・特別支援学校)
  • ・認可保育所・認定こども園
  • ・児童福祉施設(児童養護施設・障害児入所施設等)
  • ・指定障害児通所支援事業
  • ・児童相談所 など

認定対象(任意で取得)

  • ・学習塾・スポーツクラブ・スイミングスクール
  • ・放課後児童クラブ(学童保育)
  • ・認可外保育・一時預かり・病児保育
  • ・芸能事務所・タレント養成所
  • ・こども食堂 など

このうち学習塾・スポーツクラブ・芸能事務所・こども食堂は、業種名だけで認定対象になるわけではありません。児童等に技芸や知識を教える事業であることに加えて、標準的な修業期間が6か月以上、対面で指導する、事業者が用意した場所で指導する、教える人が3人以上、といった要件を満たす必要があります(こども性暴力防止法2条5項3号)。講師が1人の個人教室や、食事の提供だけをしているこども食堂は、この要件から外れることがあります。

学習塾やスポーツクラブの場合、「認定を取らない」という選択肢もあります。

ただし認定を取らないと、犯罪事実確認制度を使うことができません。

保護者目線では、認定マークの有無が信頼感の判断材料になりやすいため、経営判断として認定取得を検討する価値はあると考えます。

対象になる従業員は「教員・保育士」だけではない

ここが見落とされやすいポイントですが、犯罪事実確認の対象となる「対象業務従事者」は教員や保育士に限られません。

職種全体が対象になるか、業務の実態で判断するかは、施設の種類ごとに分かれています。たとえば保育所なら、園長・保育士・保育補助者は職種全体が対象。看護師・保健師・准看護師・調理員・嘱託医・送迎バスの運転手は「職種の一部が対象になり得る」区分で、3要件に照らして事業者が判断します。乳児院や児童養護施設では看護師も職種全体が対象になるので、職名だけでは決まらないんですよね。

業務の実態で判断する職種の例(施設の種類によって区分が変わります):事務職員、送迎バス運転手、受付、清掃員、警備員、調理員、SSW、嘱託医、ボランティア、外部講師 など

判断基準は3つあります。

①支配性(優越的立場で接する)/②継続性(反復・継続的に接する)/③閉鎖性(第三者の目がない状況で接する)。

業務の実態で判断する職種では、この3要件をすべて満たす業務に従事する人が対象になります。職種全体が対象となる職種(保育所の保育士など)は、この判断によって対象から外れることはありません。

たとえば送迎バスの運転手。添乗員なしで運行している場合は、最後に降ろす児童と1対1になるため対象になり得ます。

雇用形態も問いません。

パート・アルバイト・ボランティアでも対象になり得ます。実態判断による対象者をどう線引きするかは、事業者にとって悩ましい論点と考えます。

保育園の先生がこどもに寄り添う様子。こども性暴力防止法の対象職種の解説

就業規則で点検する4つの記載項目

ここからが本題です。こども家庭庁が示す就業規則参考例は、「あらかじめ就業規則に定めておくことが適当な事項」と位置づけられています。すべての事業者に、同じ4項目を新設する義務があるわけではありません。ただし、防止措置として懲戒処分を行うには、懲戒の種別と事由をあらかじめ就業規則に定め、周知しておく必要があります。配置転換にも、就業規則などの雇用契約上の根拠が必要です。勤務地や職種を限定する合意が明示または黙示にある場合、その合意に反する配置転換には、本人の個別の同意が必要です。自社の規則を点検するときは、次の4点を軸に確認していきます。

① 対象業務従事者の範囲

「誰がこの法律の対象なのか」を就業規則上で明確に定めます。一律対象の職種(教諭・保育士等)と、自社で判断した実態判断職種(事務職員・運転手等)を列挙する形が一般的です。

② 児童対象性暴力等および不適切な行為の禁止

「性暴力」だけでなく「不適切な行為」も禁止対象として定めます。

「不適切な行為」とは、性暴力には至らないものの、継続・発展すると性暴力につながり得る行為のことを指します。たとえば、こどもとSNSで私的なやり取りをする、私物スマホでこどもの写真を業務外目的で撮影する、こどもと二人きりで私的に会う、といった行為が例示されています。

ここの範囲決めは難しいところです。

業務上必要な身体接触(おむつ交換や水泳指導の補助等)まで「不適切」としてしまうと、現場が過度に萎縮する可能性があります。現場の従事者と話し合いながら、自社の事業実態に合わせて範囲を決めることが望ましいと考えます。

③ 犯罪事実確認手続への協力義務

法律に基づく犯罪事実確認(戸籍情報の提出など)に従事者が協力する義務を、就業規則に明記します。施行ガイドラインでは、指導(業務命令)を受けても手続に対応しない場合、まず配置転換で対象業務から外すことを検討し、対応拒否を抑えるために懲戒処分を検討することも考えられるとしています。

④ 試用期間解約事由・懲戒事由への「重要な経歴の詐称」追加

ここが見落とされやすく、影響の大きい改定ポイントになります。

採用選考で前科の有無を確認していたのに本人が事実と違う申告をしていて、採用後の犯罪事実確認で特定性犯罪事実該当者だと分かった場合、こども家庭庁は「重要な経歴の詐称」に該当するものと考えられると説明しています。ただし、就業規則にあらかじめ「重要な経歴の詐称は試用期間解約事由/懲戒事由とする」と定めていないと、解約や懲戒の正当性が認められにくくなるケースがあります。規定があっても、処分が有効かどうかは個々の事情を踏まえて判断されます。

事前に就業規則に書き込んでおくこと、これがポイントです。


就業規則の記載例

こども家庭庁が公式に「就業規則参考例」(別紙5)を公開しています。以下は、それをベースにした条文例です。

対象業務従事者の範囲(例:保育所の場合)

第○条 次の各号に掲げる職員は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(以下「こども性暴力防止法」という。)第2条第4項に規定する教員等に該当するものとする。

  1. ・園長
  2. ・副園長
  3. ・主任保育士
  4. ・保育士
  5. ・保育補助者
  6. ・看護師、保健師、准看護師、栄養士、調理員、送迎バスの運転手のうち、児童の保育に関する業務に従事する者(支配性・継続性・閉鎖性の3要件に照らして判断する)

児童対象性暴力等および不適切な行為の禁止

第○条 職員は、こども性暴力防止法第2条第2項に規定する児童対象性暴力等として次に掲げる行為をしてはならない。

  • 一 児童等(こども性暴力防止法第2条第1項に規定するものをいう。以下同じ。)に性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条(不同意性交等)に規定する性交等をいう。以下この号において同じ。)をすること又は児童等をして性交等をさせること(同法第177条(不同意性交等)の罪に当たる行為、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第34条第1項第6号の淫行罪に当たる行為及び条例により禁止される性交等に当たる行為を含み、児童等から暴行又は脅迫を受けて当該児童等に性交等をした場合及び児童等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除く。)
  • 二 児童等にわいせつな行為をすること又はわいせつな行為をさせること(刑法第176条(不同意わいせつ)の罪に当たる行為、児童福祉法第34条第1項第6号の淫行罪に当たる行為及び条例により禁止されるわいせつな行為に当たる行為を含み、前号に掲げるものを除く。)
  • 三 刑法第182条(16歳未満の者に対する面会要求等)の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児童ポルノ法」という。)第5条(児童買春周旋)、第6条(児童買春勧誘)、第7条(児童ポルノ所持、提供等)若しくは第8条(児童買春等目的人身売買等)の罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和5年法律第67号)第2条(性的姿態等撮影)、第3条(性的影像記録提供等)、第4条(性的影像記録保管)、第5条(性的姿態等影像送信)若しくは第6条(性的姿態等影像記録)の罪(児童等に係るものに限る。)に当たる行為をすること(前二号に掲げるものを除く。)
  • 四 児童等に次に掲げる行為(児童等の心身に有害な影響を与えるものに限る。)であって児童等を著しく羞恥させ、若しくは児童等に不安を覚えさせるようなものをすること又は児童等をしてそのような行為をさせること(前三号に掲げるものを除く。)
    イ 衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の性的な部位(児童ポルノ法第2条第3項第3号に規定する性的な部位をいう。)その他の身体の一部に触れること(条例により禁止される痴漢行為を含む。)
    ロ 通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること(条例により禁止される盗撮行為を含む。)
  • 五 児童等に対し、性的羞恥心を害する言動(口頭の発言に限らず、ソーシャルネットワーキングサービスや電子メール等を用いることを含む。)であって、児童等の心身に有害な影響を与えるものをすること(児童等に対する悪質なセクシュアル・ハラスメント(児童等を不快にさせる性的な言動)を含み、前各号に掲げるものを除く。)

この第1項は、こども家庭庁「就業規則参考例」の文言をそのまま載せています。第2項の「不適切な行為」は施設・事業の実態で変わるので、自社に合わせて決めてください。

2 職員は、前項に規定する児童対象性暴力等になり得る不適切な行為として次に掲げる行為をしてはならない。

  1. ・児童等と私的な連絡(SNS、メッセージアプリを含む。)を交換し、私的なやり取りを行うこと
  2. ・業務的に必要のない場面で、児童等と二人きりで密室にいること
  3. ・業務的に必要のない身体接触をすること
  4. ・業務上必要のない個別撮影を行うこと
  5. ・その他前各号に準ずる児童対象性暴力等になり得る不適切な行為

犯罪事実確認手続への協力義務

第○条 職員は、法人の指示に従い、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続に対応しなければならない。

試用期間解約事由・懲戒事由

第○条 試用期間中に次の各号のいずれかに該当する者は、本採用としないことがある。

  1. ・学歴、職歴、資格、犯罪歴その他の重要な経歴の詐称があるとき
  2. ・法人から指示されたこども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続に、正当な理由なく対応しないとき
  3. (以下、自社の試用期間解約事由を列挙)

第○条 職員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、第○条に定める懲戒処分とする。

  1. ・こども性暴力防止法に規定する児童対象性暴力等に該当する行為をしたとき
  2. ・児童対象性暴力等になり得る不適切な行為をしたとき
  3. ・重要な経歴の詐称をして雇用されたとき
  4. (以下、自社の懲戒事由を列挙)

附則

第○条 この就業規則は、令和○年○月○日に施行する。
2 この就業規則は、こども性暴力防止法の施行前であっても適用されるものとする。

附則の2項は、法の施行前から規定を適用することを明確にするための一文です。こども家庭庁の就業規則参考例の解説では、2項を置かなくても、一般的には就業規則の施行日(1項)から規定が適用されると説明されています。施行前から採用選考で特定性犯罪の前科の有無を申告・誓約してもらうなら、規定がいつから効くかをはっきりさせる意味で、この一文を入れておくと安心です。ただし、2項が決めるのは就業規則の適用時期だけです。申告を求める範囲や方法が適切かどうかは別に考える必要があり、法律にもとづく犯罪事実確認の手続を前倒しで使えるようになるわけでもありません。

採用フローの見直しもセットで必要

就業規則を直しただけでは対応として不十分です。採用フローの3点セットも同時に見直すことが望ましいと考えます。

① 募集要項・求人票

対象業務に従事させる職種の募集について、施行ガイドラインは、採用条件に特定性犯罪の前科がないことを明示しておくのが適当としています。法律で一律に義務づけられたものではありませんが、内定取消しなどの措置をめぐるトラブルを防ぐための準備です。条件を書くときは、犯罪事実確認で確認される範囲(法律で定める犯罪と期間)を踏まえて内容を決め、Indeed・ハロワ・自社HPのすべてで表現をそろえましょう。前科を尋ねると、個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたる「犯罪の経歴」を取得することになり得るため、原則として本人の同意を得てから確かめます(同法第2条第3項・第20条第2項)。本人に申告を求める内容も、対象業務の採用に必要な範囲に絞ってください。

記載例:

本業務へ従事するに当たっては、こども性暴力防止法に基づき、特定性犯罪の前科の有無を確認するための犯罪事実確認が必要となります。特定性犯罪の前科がある場合は、本業務に従事させないこと等の措置を講ずるため、当法人の採用条件の一つとして、特定性犯罪の前科がないことを定めています。このため、採用選考過程において、誓約書や履歴書等により、特定性犯罪の前科の有無を確認いたします。

② 誓約書

応募者に前科の有無を申告・誓約してもらう場合は、何について答えてもらうのか、その範囲を書面に明記します。誓約書も、法律で一律に求められているものではありません。後で犯罪事実確認の結果と申告が食い違ったときは、その事実が質問の範囲に入っていたか、申告が事実と違っていたかを確かめたうえで、「重要な経歴の詐称」にあたるかを判断します。

③ 内定通知書

内定通知書に「内定取消事由」として以下を明記します。

  • ・学歴・経歴・資格・犯罪歴等の重要な経歴の詐称があった場合
  • ・犯罪事実確認手続への対応を拒否した場合
  • (以下、自社の内定取消事由を具体的に列挙)

こうした事前準備がないと、犯罪事実確認で特定性犯罪の前科が判明しても、内定取消が法的に認められないケースが想定されます。最高裁は、内定の取消事由について「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています(大日本印刷事件・最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決)。取消事由を書面に記載しただけで、取消しが有効になるわけではありません。ただ、募集要項で採用条件を示し、誓約書や履歴書では範囲をはっきりさせて本人に特定性犯罪の前科の有無を確かめ、内定通知書には取消事由を具体的に書いておく。こうした準備は、取消しの有効性を判断するときの事情になります。採用条件や取消事由を示すだけでは、本人に確かめたことにはならない点にも注意してください。

オフィスで打ち合わせをする人事担当者。採用フロー見直しのイメージ

施行までのスケジュール|今からやること

施行日は2026年12月25日です。2026年10月半ばの時点で、残りは2か月少々。学校・保育所などの義務対象の事業者向けに、ここからの段取りを表にしました。10月末・11月末は目安で、法律上の期限ではありません。認定を受けるつもりの学習塾などは、申請の時期に合わせて組み直してください。

時期やること
〜2026年10月末対象従事者の範囲の確定・就業規則の改定案づくり(GビズIDの取得がまだなら、あわせて)
〜2026年11月末就業規則の改定・周知・届出/募集要項・誓約書・内定通知書の改定/面談・相談体制の構築/研修の段取り
〜2026年12月24日施行時に従事している人の研修受講(義務対象は原則として施行前)・情報管理体制の構築とシステム権限設定の準備・保護者への周知
2026年12月25日法施行

まだ「対象従事者の範囲」が決まっていない場合は、まず範囲を決めるところから始めてください。誰が対象かが決まると、その後の規程整備や採用フローの改定を進めやすくなります。

中小企業の場合、就業規則の改定には1ヶ月ほどかかります。常時10人以上の労働者を使用する事業場では労基署への変更届出も必要です。10月中に改定案を固めておくと、施行日まで余裕を持って進められます。

2026年9月2日のガイドライン改訂で研修の時期を明確化

2026年9月2日、こども家庭庁が施行ガイドラインの改訂を通知しました(こども家庭庁支援局長通知 こ支性第112号)。4点ある改訂のうち、就業規則や採用の段取りに関わるのが、研修を受けさせる時期の明確化です。改訂後のガイドラインでは、次のように定められています。

  • 研修は、原則として、児童等に接する業務に従事する前に受講させる
  • 学校・保育所などの義務対象:施行の際に現に児童等に接する業務に従事させている人は、原則として施行前に受講させる。施行日の前日までに従事させることを決めていて、施行日の後に従事させる人は、従事させるまでの間に受講させればよい
  • 学習塾などの認定対象:法第20条第1項第5号で、教育保育等従事者として従事する人に研修を受講させていることが認定の要件とされているため、申請時に受講を証する書類(研修実施計画書など)を提出する。申請以前に従事させることを決めていた人を含め、申請後に従事させる人は、従事させるまでの間に受講させればよい

ほかの3点は、認定事業者として公表する所在地の扱いの整理(一部の事業は都道府県までの表示にする等)、監督の観点と定期報告事項の具体化、引用している指針のページずれの修正です。義務対象の事業者は、施行時に従事している人に原則として施行前に受講させる必要があります。12月に入ってから全員分を回すのは大変なので、11月中に対象者と日程を決めておくと進めやすくなります。

出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法」ページ(https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou)、こども性暴力防止法施行ガイドライン(2026年9月改訂)124ページ


よくあるご質問(FAQ)

Q1. 学習塾を運営しています。認定を取らないとどうなりますか?

A. 認定を受けないと、犯罪事実確認制度は使えません。この制度で性犯罪歴を確認できないことが、保護者からの信頼確保に影響する可能性があります。認定申請の手数料は1事業あたり3万円(電子申請の場合。書面で申請するときは3万1,500円)で、認定の更新はありません。認定後は認定マークも使えるので、取得を検討する価値はあると考えます。

Q2. パートやアルバイトも対象になりますか?

A. 対象になり得ます。対象になるかどうかは、施設・事業の種類と職種、実際の業務によって決まり、雇用形態は問いません。職種全体が対象になる区分(保育所の保育士など)と、支配性・継続性・閉鎖性の3要件に照らして業務の実態で判断する区分があります。正社員・パート・アルバイト・ボランティアのいずれも、犯罪事実確認の対象になり得ます。

Q3. 既存従業員に性犯罪歴がある可能性があります。どう対応すれば?

A. まず、情報の出所と確かさを確認し、こどもの安全を優先してください。児童や保護者から被害の申出があった場合は、事実を確認できるまでの暫定的な対応として、一時的に対象業務から外すなど、接触を避ける措置をとります。犯罪事実確認で特定性犯罪の前科が判明した場合は、原則として対象業務に従事させず、対象業務以外への配置転換などを講じます(施行ガイドライン)。こうした防止措置と、懲戒・解雇は別々に判断します。前科があるというだけで懲戒解雇が当然に認められるわけではないため、社労士・弁護士に相談しながら慎重に進めてください。

Q4. 委託先や派遣の従業員はどちらが確認しますか?

A. 派遣労働者や請負事業主に雇われている人が対象業務に従事する場合、犯罪事実確認を含む安全確保措置の義務は、受け入れる側の学校・保育所などが負います。派遣元や請負事業主が負うものではありません。施行ガイドラインでは、労働者派遣契約や請負契約に、犯罪事実確認と研修受講を済ませた人を業務に就かせる旨を定めておくことなどを挙げています。個人に業務を委託するときも、確認するのは委託する側の事業者です。学校・保育所の事業として行うものなら、指導者が外部の委託先でも、確認は学校・保育所側の役目です。一方、場所を貸しているだけで、まったく別の事業としてサービスが提供される場合は、その事業が認定を受けていれば、サービスを実施する事業者が確認します。

Q5. いつから動き出せばよいでしょうか?

A. 早めの着手をおすすめします。GビズID取得や就業規則改定は時間がかかる作業です。まずは自社の対象判定と対象従事者の範囲整理から始めていただくとよいかと考えます。


まとめ|ルール作りと事前準備が肝になる

  • ・2026年12月25日施行。2026年10月半ばの時点で、施行まで残り2か月少々
  • ・義務対象(学校・保育所等)と認定対象(学習塾・スポーツクラブ等)の2層構造
  • ・対象従事者は教員・保育士だけではなく、事務職・運転手・ボランティアも該当し得る
  • ・就業規則で点検したい4項目:①対象従事者の範囲/②性暴力・不適切な行為の禁止/③確認への協力義務/④経歴詐称を試用解約・懲戒事由とする規定
  • ・採用フローの3点セット(募集要項・誓約書・内定通知書)の見直しも必要
  • ・これらの事前準備がないと内定取消が認められにくくなる可能性がある
  • ・研修は原則として業務に従事する前に受講させる。義務対象では、施行時に従事している人は原則として施行前に受講させる。認定対象は、申請時の要件と従事を始める時期に合わせる(2026年9月のガイドライン改訂で明確化)

「就業規則を直すだけ」で済む話ではなく、採用フロー全体の設計を見直すことが求められる対応になります。


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