有給5日取得義務を守れていない会社への処方箋

仕事術

有給を「年5日」取らせていない会社、実は少なくないんですよね

従業員10〜50人、人事担当がひとり、もしくは社長が最終チェックをしている。そんな会社と話していると、「有給の消化率、正直把握できていません」という声をよく聞きます。

給与計算や社会保険の手続きは何とか回っているけれど、有給休暇の「年5日取得」までは手が回っていない。これ、よくあるパターンです。

問題は、これが単なる「望ましい取り組み」ではなく、労働基準法上の義務だという点です。しかも、期限内に対応しなければ、後から取り返しがつきません。今回は、この「有給5日取得義務」を守れていない会社が、今すぐ何をすべきかを整理します。

結論:本人の取得と会社の時季指定を合わせて、基準日から1年で5日を確保する

先に結論を言います。

法定の年次有給休暇が10日以上付与される社員について、付与した日(基準日)から1年以内に5日を確実に取得させる。 ポイントは、この5日を「本人が自分で請求して取った日数」「計画年休で取った日数」「会社が時季を指定した日数」の合計で満たす、という点です。ただし、時間単位で取得した有給はこの5日には算入できません(1日または半日単位で取った分だけが対象です)。本人がすでに5日取得していれば、会社が追加で指定する必要はありません(正確には、5日に達したら会社側からの時季指定はできません)。

逆に、基準日が近づいても取得が5日に届かない社員がいたら、その不足分を会社側から日を指定して休ませます。「そのうち本人が取るだろう」で様子見をしている間に期限が来ると、原則としてその時点で義務違反になります(育児休業から復帰した直後などで、残りの労働日が不足分より少なく取得させられない場合のような例外はあります)。義務は基準日ごとに区切られていて、後からまとめて帳尻を合わせる仕組みにはなっていません。

有給5日取得義務とは?条文・対象・罰則を押さえておく

制度の中身をざっくり確認しておきましょう。

根拠は労働基準法第39条第7項(2019年4月1日施行)です。対象は、法定の年次有給休暇が10日以上付与されるすべての労働者。正社員だけでなく、所定労働日数が多いパート・有期雇用の社員も、法定の付与日数が10日以上であれば対象に含まれます。管理監督者も例外ではありません。

会社は、対象者ごとに基準日から1年以内に5日、時季を指定して有給を取得させる義務があります。本人がすでに5日以上取得している場合は、追加で指定する必要はありません。時季を指定する際は、労働者の意見を聴き、尊重するよう努めることも求められています。なお、常時10人以上の労働者を使う事業場では就業規則の作成・届出が義務で、会社が時季指定を行うなら、その対象者の範囲や方法は就業規則の記載事項にあたります(労働基準法89条)。ここが未整備のまま運用すると、それ自体が別の指摘対象になり得ます。

もう一つ見落とされがちなのが、年次有給休暇管理簿の作成・保存義務(労働基準法施行規則24条の7)です。基準日・取得日数・取得時季を記録し、年休を与えた期間中および与えた期間の満了後5年間(当分の間は3年間)保存する必要があります。

違反した場合は、労働基準法120条に基づき、対象労働者1人あたり30万円以下の罰金の対象になり得ます。労基署の調査で有給管理簿の提出を求められ、そこで未達成が発覚するケースも珍しくありません。実際、休憩を取らせず書類送検された事例のように、労働時間管理の不備が是正勧告や書類送検にまで発展した例もあります。有給管理も同じ土俵の話だと考えておくべきです。

そもそも有給休暇の仕組み自体を整理したい方は、パート・アルバイトの有給の基礎知識も参考にしてみてください。

現場でよくある失敗5つ

有給5日取得義務の運用で、実際によく見る失敗を挙げます。

  • 基準日をバラバラのまま管理している:入社日ごとに基準日が違う会社で、個人ごとの期限を一覧化していない
  • 「本人の希望待ち」で止まっている:時季指定の権限が会社側にあることを使わず、期限直前まで様子見してしまう
  • 管理簿を作っていない、または更新が止まっている:Excelで作ったものの、退職・異動のたびに更新漏れが発生する
  • パート・有期雇用者を対象外だと誤解している:正社員だけの制度だと思い込む。判定は勤務日数ではなく「法定の付与日数が10日以上か」で決まり、週3日勤務でも勤続5年6か月なら10日付与されて対象になる
  • 退職時の有給消化と義務の話を混同している:退職前にまとめて消化させればいいと考え、在職中の基準日超過を放置する

こうした失敗の多くは、悪意ではなく「気づいていなかった」「後回しにしていた」ことが原因です。だからこそ、仕組みで防ぐ発想が必要になります。

特に厄介なのが、基準日が全社一律ではなく、入社日を起点にしている会社です。社員が10人いれば基準日が10通りあり、誰の期限がいつなのか、頭の中だけで管理するのはまず無理があります。担当者が異動・退職すると、その時点で管理が丸ごと止まってしまうリスクも見ておく必要があります。

選び方・判断軸:自社で回すか、外に任せるか

自社で有給管理を続けるべきか、外部に任せるべきか。判断の軸は次の3つです。

判断軸自社管理が向くケース外部・システム活用が向くケース
従業員規模10人未満で基準日が把握しやすい20人を超え、基準日が個人ごとにバラつく
管理担当者の余力専任担当がいて更新を継続できる社長・総務が兼務で他業務に追われている
記録の状態管理簿が最新で運用が定着している管理簿の更新が止まりがち、または未作成

目安として、従業員が20人を超えたあたりから、基準日ごとの個別管理を人力だけで続けるのは負荷が大きくなってきます。そのタイミングで、クラウド勤怠システムの導入や、労務管理そのものの外部委託を検討するのが現実的です。

オマカセロウムくんなら、「気づいたら期限切れ」を防げます

私たちが提供している「オマカセロウムくん」は、給与計算・社会保険手続きに加えて、勤怠・有給管理まで含めて外部の人事部として引き受けるサービスです。

有給5日取得義務でいちばん怖いのは、担当者の善意や記憶力に頼った運用が、忙しさの中でふっと途切れることです。オマカセロウムくんでは、基準日ごとの取得状況を継続的に確認し、期限が近づいている社員がいれば早めに知らせる体制を組みます。社長や総務担当がいちいち一覧表を見返さなくても、抜け漏れに気づける状態を作るイメージです。

実務で使うツールとしては、freee人事労務のように従業員マスタと勤怠・有給を一元管理できるクラウドシステムも選択肢になります。基準日や取得日数が自動で可視化されるので、Excel管理からの移行先として悪くありません。もちろん、システムを入れるだけで安心せず、運用が回っているかを定期的に見る体制とセットで考えることが大事です。

まとめ:放置すればするほど、気づいたときには手遅れになりやすい

有給5日取得義務は、基準日ごとに区切られた期限つきの義務です。

  • 根拠は労働基準法第39条第7項(2019年4月1日施行)。年10日以上付与される労働者が対象で、パート・有期雇用者も含む
  • 5日は本人の請求・計画年休・会社の時季指定の合計で確保する(時間単位取得は算入不可/本人が5日取得済みなら会社の指定は不要)。時季指定を行うなら就業規則への規定が必要
  • 管理簿の作成・保存(5年、当分の間は3年)も義務。労基署調査で未達成が発覚するケースがある
  • 20人を超えたあたりから、システム導入や外部委託の検討タイミング

まずは自社の有給消化状況を、基準日ごとに一覧で見えるようにするところから始めてみてください。

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