「うちの相談窓口、ちゃんと機能してますか」と聞かれて詰まったら
従業員10〜50人くらいで、人事担当は総務や経理と兼任のひとり。もしくは社長自身が、採用から労務相談まで何でも引き受けている。
そんな会社で「ハラスメントの相談窓口はどこですか」と社員に聞かれたら、どう答えますか。
就業規則の片隅に一文だけ載せていて、実際には誰も使ったことがない。担当者が社長本人で、正直、部下が相談しに来るとは思えない。心当たりがある方、結構多いんじゃないでしょうか。
私も顧問先から「窓口は作ったつもりだけど、これで大丈夫か自信がない」という相談を、これまで何度も受けてきました。作った時点で安心してしまい、実際に機能しているかまでは確認できていない、というケースがほとんどです。

結論:窓口の設置はもう義務。今やるべきは2026年10月に向けた「対象の広げ直し」
先に結論を言うと、ハラスメント相談窓口の設置は、すでにすべての中小企業の義務です。職場のパワーハラスメントについては、労働施策総合推進法に基づき、大企業は2020年6月1日から、中小企業も2022年4月1日から、相談体制の整備などの措置が義務づけられています。
「今さら作る」段階の会社は、正直かなり出遅れています。ただ、今のタイミングで本当に見るべきなのはそこじゃないんですよね。
2026年10月1日、労働施策総合推進法と男女雇用機会均等法の改正が施行され、事業主が防止のための措置を講じるべきハラスメントの範囲が広がります。これまで労働施策総合推進法30条の2に置かれてきたパワーハラスメントの措置義務は同法31条へ移り、あらたに顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)が同法33条に加わります。さらに、求職者や就活生に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)については、改正男女雇用機会均等法13条に新たに規定され、こちらも事業主の措置義務になります。改正法自体は2025年6月11日に公布済みで、施行まで準備期間が置かれている形です。
つまり今ある窓口が、社内のパワハラだけを想定した作りのままなら、10月には対象漏れになる可能性があるということです。今やるべきは、窓口の新設ではなく「対象の広げ直し」だと私は考えています。
相談窓口づくりでよくある5つの失敗
顧問先を見ていて、実際によく出会う失敗を挙げます。
- 就業規則に一文載せただけで終わっている:窓口の存在自体が社員に周知されておらず、誰も使い方を知らない
- 担当者が社長本人、または直属の上司:相談したい相手が加害者側の場合、事実上使えない窓口になっている
- 相談を受けたあとの対応フローが決まっていない:誰が事実確認し、誰が是正措置を判断するのか、担当者任せになっている
- パワハラしか想定していない:取引先や顧客からの迷惑行為、採用面接での不適切な発言を窓口の対象外だと思い込んでいる
- 相談内容や対応経過を記録に残していない:あとから「言った言わない」の水掛け論になりやすい
こうした失敗の多くは、悪意があるわけではありません。「作った時点で満足してしまい、実際に使われる状態まで整えていない」ことが原因なんですよね。
2026年10月1日から何が変わるのか
ここで改正の中身を整理しておきます。根拠となる法律は労働施策総合推進法と男女雇用機会均等法で、令和7年(2025年)6月11日に公布された改正法が、令和8年(2026年)10月1日に施行されます。
これまで30条の2に置かれてきたのは、職場のパワーハラスメントに関する事業主の措置義務です。パワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素をすべて満たすものを指します。この規定は改正で31条へ移りますが、相談体制の整備など雇用管理上の措置を事業主に義務づける中身そのものは変わりません。
改正で新たに事業主の措置義務の対象になるのは、2つのハラスメントです。ひとつは顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)で、改正労働施策総合推進法33条に置かれます。もうひとつは求職者や就活生に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)で、こちらは改正男女雇用機会均等法13条が根拠になります。
ここで押さえておきたいのは、この2つは「今ある義務に足し算される」ものだという点です。職場のパワハラだけでなく、職場のセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ・パタハラ・ケアハラ)は、以前から事業主の措置義務です。窓口が対象とすべき範囲を整理すると、次のようになります。
| ハラスメントの種類 | 事業主の措置義務 |
|---|---|
| 職場のパワーハラスメント | すでに義務(中小企業も2022年4月1日から) |
| 職場のセクシュアルハラスメント | すでに義務 |
| 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント | すでに義務 |
| カスタマーハラスメント | 2026年10月1日から義務 |
| 求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ) | 2026年10月1日から義務 |
「パワハラと、今回増える2つだけ見ておけばいい」と考えると、もともと義務だったセクハラやマタハラの対応が抜け落ちます。窓口は、これら全体を受けられる形にしておくのが前提です。
事業主に義務づけられる措置の柱は、方針の明確化と周知・啓発(そのハラスメントを行ってはならない旨や、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて社員に知らせる)、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備(相談窓口の設置・周知など)、そして相談を受けたあとの迅速かつ適切な対応です。相談窓口の担当者が適切に対応できるよう対応マニュアルを整えることは、この体制の一例として示されているものです。カスハラへの理解を促す研修も、望ましい取組と位置づけられており、いずれもそれ単体が独立した法定義務というわけではありません。
措置義務に違反したこと自体に、直接の罰則(罰金など)はありません。ただし「罰則がまったくない」わけではない点には注意が必要です。厚生労働大臣は必要に応じて事業主に助言・指導・勧告を行うことができ、勧告を受けても従わない場合には、その旨を公表できます。さらに、厚生労働大臣から報告を求められたのに報告しなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料が科されます。「うちは中小だから見られない」と思っていると、思わぬ形で表に出るリスクがあるということです。
何年も更新していない就業規則が、いざという時に効かない理由でも触れていますが、法改正のたびに就業規則を更新できていない会社は本当に多いです。ハラスメント関連の規定も、今回を機に見直しておく方がいいと思います。
相談窓口を整える判断軸
限られた時間で何から手をつけるか、判断の軸を表にまとめました。
| 確認ポイント | 見るもの | 気づくこと |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 就業規則・規程の記載 | パワハラ・セクハラ・マタハラに加え、カスハラ・就活セクハラまで入っているか |
| 相談先 | 窓口担当者の役職・関係性 | 社員が「相談しても不利益がない」と思える人選か |
| 社内か社外か | 相談窓口の設置場所 | 少人数の会社ほど、外部委託の検討価値が高い |
| 対応フロー | 相談後の流れ | 受付→事実確認→是正措置→再発防止まで型があるか |
| 記録 | 相談内容の保存方法 | 書面やデータで経過を残せているか |
特に従業員数が少ない会社ほど、社内の誰が担当しても「距離が近すぎる」問題は避けられません。外部の窓口を組み合わせる、あるいは顧問の社労士に窓口機能ごと任せるという選択肢は、規模が小さい会社ほど検討する価値があると思っています。
問題行動をとる社員への指導・対応についてでも書きましたが、相談を受けたあとの対応を誤ると、かえってトラブルが大きくなります。窓口は「作る」ことより「受けたあとどう動くか」の設計の方が、実は重要なんですよね。
オマカセロウムくんなら、窓口づくりごと引き受けられます
私たちの「オマカセロウムくん」では、就業規則へのハラスメント規定の反映から、社員が実際に相談しやすい外部窓口の運用まで、まとめて引き継ぐことができます。
社長や人事担当者が窓口を兼任する必要がなくなるので、社員側も相談のハードルがぐっと下がります。相談を受けたあとの事実確認や是正措置の進め方も、私たちが伴走します。
就業規則そのものを見直すタイミングであれば、自社に合った就業規則を作るには? 中小企業が知るべき注意点とは?も合わせて読んでいただくと、規定の整え方がイメージしやすいと思います。
まとめ:窓口は「作った」で終わらせず、10月までに対象を広げ直す
- 職場のパワハラについては、労働施策総合推進法に基づき2022年4月1日から中小企業も相談体制の整備が義務化済み(規定は現行の30条の2で、改正後は31条へ移る)
- 2026年10月1日の改正施行で、カスタマーハラスメント(改正労働施策総合推進法33条)と、求職者等へのセクシュアルハラスメント=就活セクハラ(改正男女雇用機会均等法13条)も、あらたに事業主の措置義務の対象に加わる
- パワハラ・カスハラ・就活セクハラだけでなく、職場のセクハラ、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントも以前から措置義務。窓口はこれら全体を受けられる形にしておく
- よくある失敗は「周知されていない」「担当者が相談しにくい」「対応フローがない」「対象が狭い」「記録がない」の5つ
- 対象範囲・相談先・社内外の別・対応フロー・記録の5点を軸に、今の窓口を点検するのが第一歩
- 措置義務違反そのものに直罰はないが、勧告に従わなければ公表の対象になり得るうえ、報告をしない・虚偽報告には20万円以下の過料もあるので、「見られていない」という油断は禁物
窓口が今の実態に合っているか、一度点検してみませんか。
業種・従業員数・今の人事労務の回し方や困りごとを教えてもらえれば、合いそうな進め方を一緒に考えます。無理な営業はしませんので、気軽にどうぞ。LINEで相談するなら手軽にその場でやり取りできますし、LINEを使わない方はお問い合わせフォームからでも構いません。
