業務改善助成金とは?令和8年度の金額と条件を解説

仕事術

業務改善助成金とは?賃上げと設備投資をセットで支援する制度

最低賃金の引き上げが話題になると、「うちも人件費が増える」という不安と同時に、「使える助成金はないのか」というご相談を必ずいただきます。その代表格が業務改善助成金です。

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、かつ生産性向上につながる設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。厚生労働省の管轄で、賃上げの原資を直接補うわけではなく、「賃上げ+設備投資(や研修・コンサル費用)」をセットで行うことが条件になります。

「最低賃金が上がって人件費が増えるなら、その負担を軽くする投資に助成金を使う」という発想の制度だと理解しておくとわかりやすいです。


2026年度の最低賃金と、業務改善助成金の受付はいまどうなっているか

2026年度の地域別最低賃金はすでに決まっており、全国加重平均は1,177円(改定前1,121円、引上げ額56円)です。発効日は都道府県ごとに異なり、10月1日から12月2日までに分かれます(出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)。

業務改善助成金の令和8年度の受付は、9月1日に始まっています。締切は、事業場のある都道府県の発効日の前日、または11月30日のいずれか早い日です。10月1日が発効日の都道府県は9月30日で締め切られており、受付が終わった都道府県もあります(出典:厚生労働省「業務改善助成金」)。


令和8年度のコース区分と助成率

令和8年度(2026年度)の業務改善助成金は、50円コース・70円コース・90円コースの3コースに分かれています。「事業場内で最も低い賃金を、いくら引き上げるか」でコースが決まる仕組みです。

以前は30円・45円・60円・90円という区分でしたが、令和8年度からこの3コースに再編されています。古い情報のまま「30円コース」で調べてしまうと制度が変わっている点にご注意ください。

助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金によって変わります。

引き上げ前の事業場内最低賃金助成率
1,050円未満4/5
1,050円以上3/4

もともとの賃金水準が低い事業場ほど、助成率が高くなる設計です。


助成上限額はいくら?引き上げ人数別の一覧表

助成金額は、「設備投資費用 × 助成率」と「引き上げ人数・コースごとの上限額」を比べて、低い方が実際の支給額になります。上限額は次のとおりです(事業場規模30人以上の場合)。事業場規模30人未満の事業者は、1人・2〜3人の区分の上限額が高くなります(50円コースは40万円・70万円、70円コースは50万円・100万円、90円コースは100万円・240万円。4人以上は下の表と同額です)。

引き上げ人数50円コース70円コース90円コース
1人30万円40万円90万円
2〜3人40万円50万円150万円
4〜5人70万円130万円270万円
6〜7人90万円180万円360万円
8人以上110万円230万円450万円

助成対象経費の下限は10万円です。これは助成金の交付額ではなく、助成対象となる経費の下限です。交付額は、助成対象経費に助成率を掛けた額と上限額のうち、低い方の額から1,000円未満の端数を切り捨てて算定します(出典:厚生労働省「業務改善助成金 交付要綱」第4条第2項)。

申請書では、助成対象経費に助成率を掛けた額は1円未満を切り捨て、国庫補助所要額は1,000円未満を切り捨てます。例えば、助成対象経費が123,456円、助成率が4/5で、上限額に達しない場合、123,456円×4/5=98,764.8円です。まず1円未満を切り捨てて98,764円とし、さらに1,000円未満を切り捨てた98,000円が交付額です(出典:同「交付要綱」第4条第2項、様式第1号の別紙1「国庫補助金所要額調書」)。

さらに、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場、または原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、最近6か月間平均の売上高総利益率または売上高営業利益率が前年同期比で3%ポイント以上低下している事業者は、「特例事業者」に該当し、10人以上を引き上げる区分(上限額は最大600万円)まで申請できます。後者には、事業場内最低賃金が1,050円以上の事業場も含まれます(出典:厚生労働省「業務改善助成金 交付要領」別紙2の1)。

つまり「うちは何人まで対象になるのか」「特例に当たるのか」は、事業場ごとに条件が変わる部分です。この記事の数字を目安にしつつ、正式な判定は労働局または社労士にご確認いただくのが安全です。


「最大600万円」の内訳を正しく理解する

業務改善助成金を調べると「最大600万円」という数字によく出会いますが、これには2つの異なる意味があるので、混同しないようにしてください。

  1. 単一の事業場での上限額:特例事業者が90円コースで10人以上を引き上げた場合の上限額(上の表の延長)
  2. 事業主単位の年間上限額:同一の事業主が複数の事業場で申請する場合、事業主単位で申請額の年間上限が600万円

複数店舗・複数事業場を持つ企業では、この②の年間上限に注意が必要です。1事業場ごとに600万円ずつ取れるわけではありません。


対象になる経費・ならない経費

対象経費は、機械設備の導入だけではありません。公式に定められている経費区分は次のとおりです。

  • 機械装置等購入費(POSレジシステム、特種用途自動車等)
  • 経営コンサルティング経費(業務フロー見直し等の専門家費用)
  • 委託費(システム化・外部委託にかかる費用)
  • 謝金(外部講師による従業員研修、導入機器の操作研修等。助成対象経費は1回10万円まで、5回まで)
  • 旅費(専門家の旅費など。外国旅費・日当・宿泊費は対象外)
  • 印刷製本費(機械装置等にかかる研修資料・マニュアル等の作成費用)
  • 借損料 など

「人材育成費用なら何でも対象」ではありません。 対象になるのは、機器の操作研修や業務フロー改善に直結する研修・資料作成費用などです。申請する費用が対象になるかは、公式の経費区分に当てはめて確認する必要があります。

また、機械装置等購入費では、特種用途自動車以外の自動車は対象外です。「特種用途自動車」とは、ナンバープレートの「車種を表す数字」が8で始まるものと、これに準ずると考えられるもの(福祉車両等)を指します(出典:厚生労働省「業務改善助成金 交付要領」別紙3(注3))。広告宣伝費・販売促進費は令和8年度は対象外です。パンフレットや動画の作成、媒体への掲載、展示会の出展、ランディングページの作成は、この区分に含まれます(出典:厚生労働省「業務改善助成金 交付要領(令和8年度申請分)」)。


申請の注意点:令和8年度は「事前申請のみ」

もっとも重要な注意点がここです。令和8年度は、賃金の引き上げを実施した後の事後申請ができません。設備投資等も、交付決定を受ける前に実施してしまうと対象外になります。

つまり流れは、

  1. 事業計画を立てる(引き上げ額・対象人数・設備投資の内容を決める)
  2. 申請する
  3. 交付決定を受ける
  4. 決定後に設備投資等を実施する(賃金の引き上げは、申請後であれば交付決定前でも実施できる)
  5. 実績報告をする

という順番です。賃上げは交付決定を待たずに実施できますが、申請より前に引き上げてしまうと対象外です。引き上げる時期は、申請後から事業場のある都道府県の発効日の前日までです(出典:厚生労働省「業務改善助成金 交付要領」第2の3・第2の7)。設備投資等の契約・納品のほうは、交付決定を受けてからになります。

申請受付期間は、令和8年9月1日から、事業場のある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日までです。受付はすでに始まっており、10月1日が発効日の都道府県は9月30日で締め切られています。自社の事業場の締切は、厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で発効日を確認し、その前日と11月30日の早いほうが締切です。

申請から交付決定までは約3か月かかるとされています。交付決定後の事業完了期限(納品・支払い・賃金引上げのいずれか遅い日)は、原則として交付決定の属する年度の1月31日です。やむを得ない理由があれば、事前に理由書を添えて申請することで、3月31日までの延長が認められる場合があります(出典:厚生労働省「業務改善助成金」)。これから申請する場合は、自社の締切日から逆算して、早めに事業計画を固めましょう。


まとめ|制度は複雑でも、使える企業は多い

業務改善助成金は、コース区分・助成率・上限額・特例事業者の条件など、制度としてはやや複雑です。しかし、最低賃金の引き上げに合わせて設備投資やシステム化を予定している中小企業であれば、活用できる可能性は十分にあります。

  • コースは50円・70円・90円の3区分
  • 助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5、1,050円以上で3/4
  • 上限額は引き上げ人数・コースで決まり、特例事業者は最大600万円まで
  • 令和8年度は事前申請のみ。賃上げ後の申請は不可
  • 申請受付は令和8年9月1日〜、締切は事業場のある都道府県の発効日の前日(遅くとも11月30日)

「自社がどのコース・上限額に当たるのか」「特例事業者の要件を満たすか」は、賃金台帳や損益の状況を見ながら個別に判断する必要があります。オマカセロウムくんでは、賃金引き上げの試算から助成金の要件確認、申請書類の作成まで一体でサポートしています。まずは無料相談で、自社が対象になるかどうかから確認してみてください。

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