この記事でわかること
- ・休憩を取らせなかっただけで書類送検された最新事例の詳細
- ・労基法が定める休憩時間のルールと「3原則」
- ・36協定の上限を超えたときに何が起きるか
- ・罰金だけでは済まない「送検の本当の怖さ」
- ・自社の労務リスクを確認できるチェックリスト
休憩を取らせなかっただけで「書類送検」される時代
「休憩を取らせなかっただけで送検? そんな大げさな……」
そう思った方、ちょっと待ってください。これ、実際に起きた話です。
2026年2月、大阪・西野田労働基準監督署が、運送会社の荒木運輸株式会社と同社の運行管理者を労働基準法第34条(休憩)違反の疑いで大阪地検へ書類送検しました。
事件の概要はこうです。
- 期間:令和7年9月25日~10月15日
- 違反内容:ドライバー2名に対し、8時間を超える労働をさせたにもかかわらず、少なくとも1時間の休憩を与えなかった
- さらに:同じ2名に対する違法な時間外労働でも送検。月103時間を上限とする36協定を締結していたが、令和7年3月16日~4月15日の時間外労働は最長114時間36分に達していた
つまり、「休憩を取らせなかった」と「残業の上限を超えた」のダブル違反です。
「うちは運送業じゃないから関係ない」と思うかもしれません。でも、労基法34条は全業種に適用される法律です。飲食業でも、製造業でも、IT企業でも、ルールは同じ。他人事じゃないんですよね。

そもそも休憩時間のルールとは?(労基法34条)
「休憩って、お昼に1時間取ってるからOKでしょ?」
……まあ、多くの場合はそうなんですが、法律上のルールはもう少し細かいです。ここを正確に押さえておかないと、知らないうちに違反していた、なんてことになりかねません。
労働時間に応じた休憩の最低ライン
労働基準法第34条第1項は、こう定めています。
| 労働時間 | 必要な休憩時間 |
|---|---|
| 6時間以下 | 付与義務なし |
| 6時間を超え8時間以下 | 少なくとも45分 |
| 8時間を超える | 少なくとも1時間 |
ポイントは「超える」という表現です。ぴったり6時間なら休憩なしでもOK。でも6時間1分になった瞬間に45分の休憩が必要になります。
今回の荒木運輸の事例では、8時間を超える労働に対して1時間の休憩を取らせていなかった。これだけでアウトです。
休憩の3原則(途中付与・一斉付与・自由利用)
休憩には「いつ・誰に・どう取らせるか」の3原則があります。
① 途中付与の原則
休憩は労働時間の途中に与えなければなりません。「始業前に1時間早く来て休憩を取った扱い」や「終業後に休憩1時間を足す」はNG。これ、意外とやっちゃってる会社があるんですよね。
② 一斉付与の原則
原則として、事業場の労働者全員に一斉に休憩を与えます。ただし、労使協定を結べばシフト制などで交代で取ることも可能です。運送業やサービス業では、この労使協定を結んでいるケースが多いです。
③ 自由利用の原則
休憩時間は労働者が自由に使えなければなりません。「休憩中だけど電話番しておいて」は、法的には休憩を与えたことになりません。電話番をさせている時間は労働時間です。
この3つ、どれか1つでも守れていなければ労基法34条違反になります。
36協定を結んでいても超えたらアウト
荒木運輸のもう1つの違反が、36協定の上限超過です。「ちゃんと36協定を結んでいたのに送検されたの?」と驚く方もいるかもしれません。
そうなんです。36協定は「結んだら終わり」じゃない。決めた上限を守らなければ意味がないんです。
36協定の上限(一般業種)
2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働には法律上の上限が設けられています。
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項付き(年間上限) | 年720時間以内 |
| 時間外+休日労働の合計 | 月100時間未満 |
| 2~6か月の平均 | 80時間以内 |
| 月45時間超の回数 | 年6回まで |
これを超えたら、たとえ36協定を締結していても違法です。
運送業ドライバーの上限規制(2024年4月~)
運送業のドライバーには、2024年3月まで上限規制の適用が猶予されていました。いわゆる「2024年問題」ですね。
2024年4月以降、ドライバーにも上限規制が適用されましたが、一般業種とは異なる特例があります。
| 項目 | 運送業ドライバー |
|---|---|
| 特別条項の年間上限 | 年960時間(一般は720時間) |
| 月100時間未満 | 適用除外 |
| 2~6か月平均80時間以内 | 適用除外 |
荒木運輸の場合、月103時間の上限で36協定を結んでいましたが、実際の時間外労働は114時間36分。自社で決めた上限すら守れていなかったわけです。

「休憩カット」と「残業超過」はセットで起きる
今回の事例で注目してほしいのは、「休憩未付与」と「36協定超過」が同時に起きているという点です。
これ、偶然じゃありません。構造的にセットで起きやすいんです。
考えてみてください。
- 人手が足りない → 「休憩を短くしてでも回してくれ」
- 休憩が取れない → その分、実労働時間が伸びる
- 実労働時間が伸びる → 36協定の上限を突破する
- ダブル違反で送検
つまり、休憩を取らせないことは、それ自体が違法であるだけでなく、残業超過という別の違反を引き起こすトリガーにもなる。1つの判断ミスが、2つの法律違反を生むわけです。
「忙しいから仕方ない」は、労基署には通用しません。忙しいなら人を増やすか、仕事量を減らすか。そのどちらかしかないというのが法律のスタンスです。
罰則だけじゃない|送検の”本当の怖さ”
刑事罰:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
労基法34条(休憩)違反も、32条(労働時間)違反も、罰則は同じです。
> 労働基準法第119条第1号
> 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
「30万円なら大したことないじゃん」と思いましたか?
金額の問題じゃないんです。
企業名公表・採用への影響・助成金不支給
書類送検されると、こんなことが起きます。
① 企業名が公表される
厚生労働省は、労基法違反で送検された企業の名前を公開リストで公表しています。ネットで検索すれば誰でも見られる。一度載ったら、なかなか消えません。
② 採用ができなくなる
求職者はGoogle検索します。会社名で検索して「書類送検」が出てきたら……応募しますか? 私だったらしません。人手不足の時代に、採用がさらに困難になるのは致命的です。
③ 助成金が受けられなくなる
労基法違反で送検された企業は、各種助成金の不支給要件に該当します。人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金など、数十万~数百万円単位の助成金が受けられなくなる可能性があります。
④ 取引先からの信用低下
最近は取引先のコンプライアンスをチェックする企業が増えています。「送検された企業との取引は見直す」と言われたら、売上にも直結します。
⑤ 民事の損害賠償リスク
違法な労働をさせられた従業員が、未払い残業代や慰謝料を請求してくる可能性もあります。
つまり、罰金30万円で済む話ではなく、会社の存続に関わるダメージになりかねない。これが送検の本当の怖さです。
あなたの会社は大丈夫?チェックリスト
「うちは大丈夫だと思う」
その「思う」が一番危ないんです。以下の10項目、1つでも「いいえ」があったら要注意です。
【休憩時間チェック】
- [ ] 6時間超の労働に45分以上の休憩を与えている
- [ ] 8時間超の労働に1時間以上の休憩を与えている
- [ ] 休憩は労働時間の途中に取らせている(始業前・終業後ではない)
- [ ] 休憩中に電話番や来客対応をさせていない
- [ ] 休憩時間を勤怠記録で正確に管理している
【36協定チェック】
- [ ] 36協定を締結・届出している(期限切れになっていない)
- [ ] 協定で定めた上限時間を実際に守っている
- [ ] 月45時間を超える月が年6回以内に収まっている
- [ ] 時間外+休日労働の合計が月100時間未満である
- [ ] 2~6か月の平均が80時間以内である
全部「はい」なら、ひとまず安心です。 でも、1つでも「いいえ」や「よくわからない」があったら、今すぐ確認してください。
「よくわからない」が一番まずいんですよね。わからないということは、管理できていないということですから。

まとめ|「うちは大丈夫」が一番危ない
今回の荒木運輸の事例をまとめると、こうなります。
- ・休憩を1時間取らせなかっただけで書類送検された
- ・36協定の上限超過も同時に発覚し、ダブルで送検
- ・休憩カットと残業超過は構造的にセットで起きやすい
- ・送検されると、罰金だけでなく企業名公表・採用難・助成金不支給など経営全体にダメージ
「忙しいから休憩は後で」「今日だけ特別に」——こうした小さな判断の積み重ねが、ある日突然、書類送検という形で返ってきます。
大事なのは、今の自社の状態を正確に把握すること。そして、リスクがあるなら早めに手を打つこと。問題が起きてからでは遅いんです。
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