クライアントからの相談や、ネットの情報を見ている限り、退職の一番の理由は人間関係のようです。
そもそも人間関係といっても定義が難しいのですが、シンプルに言い換えると「会いたくない人がいるから会社に行きたくない」という話なのだと思います。
このような事象は、
- ・何となく言い方が嫌な感じ、高圧的
- ・指示や指導が鬱陶しいと感じる
- ・教えているのに反論される
- ・そもそも指示の趣旨がわからない
というような、おおよそコミュニケーションの問題から発生する場合が多いようです。
これは会社としては非常に重大な、配慮すべき問題です。
会社組織の中では、通常の私生活で起こり得ないような、
- ・指示
- ・指導
- ・教育
といったことが日常的に発生します。
このような事象は、人間にとって大いに非日常的なものであり、多くの人にとっては不快極まる事象であるといえるでしょう。
私も誰かに指示されると「鬱陶しいな」と感じてしまうこともありますし、妻に教育などされようものなら。。。。。
つまり、会社としてはこういった問題を引き起こさないように、上司と部下、社員間でのコミュニケーションをある程度ルール化し、デザインしていく必要があります。
そこで、コミュニケーションで避けるべき10か条を作ってみました。
これだけでも従業員の居心地はだいぶ変わるのではないかと思います。
目次
- 1.業務に関係ないことで贔屓する・好き嫌いで判断する・人によって態度を変える
- 2.高圧的な態度をとる・感情的になる・怒鳴る
- 3.嫌味を言う・けなす
- 4.他人の悪口や陰口を言う
- 5.意見を聞かない・合理的な理由がないのに聞き入れない
- 6.厳しく叱責する
- 7.人に仕事を押し付ける
- 8.挨拶やお礼、謝罪など基本的なコミュニケーションを疎かにする
- 9.自分の考えが無いまま話す、矛盾したことを言う
- 10.思い込みで判断する、根拠を提示しない
1.業務に関係ないことで贔屓する・好き嫌いで判断する・人によって態度を変える
業務に関係のないことや、ちょっとした態度や見た目、性格などで贔屓したり、好き嫌いを判断したりするのは絶対に良くありません。会社は仕事をする場所ですから、業務以外のことは判断基準にはなり得ないのです。
また、上司や先輩にはペコペコして部下や後輩には横柄な態度をとるなど、人によって態度を変えるのは考えものです。見ていて気持ちの良いものではありません。
入社年次や役職に関係なく、それぞれの人間を尊重し、一人の人間として誠実な対応をとる必要があります。
ただし、仕事ができるので好き、業務上の功績が高いので贔屓する、はまったく問題ありません。人事評価自体、仕事ができる貢献度の高い人へのえこひいきなのです。
2.高圧的な態度をとる・感情的になる・怒鳴る
大きな声で怒鳴ったり感情的に話したりする人とは、コミュニケーションも難しくなります。感情的になることで相手を不快にさせてしまい、問題解決がさらに困難になることを自覚しましょう。
人を説得する、納得させるときには、論理性を高める、プレゼンテーションスキルを高めるなど、伝える側が工夫する必要があります。
また、高圧的な態度から前向きに進むことは一つもありません。組織として上司・部下・先輩・後輩が役割として存在しますが、原則は同じ人間同士。我々は対等な存在です。
誰かに「意見を取り入れて欲しい」「従わせたい」。そういった際に人はつい高圧的な態度になりがちです。
しかし、相手を怖がらせる、反論しにくい空気を作る・話のしにくい空気を生み出すなど、高圧的な態度が生む問題は数え切れません。それぞれ対等な人間であるという原則をもって、相手に敬意を払って接しましょう。
3.嫌味を言う・けなす
問題がある際は、根拠を明確にしてはっきりと指摘すべきです。嫌味を言っても本人が前向きに捉えることは絶対にないので、問題の解決に近づくことはありません。
また、根拠が無いのであれば、気に入らないからといって否定すべきではありません。問題が発生している人に対して直接言うのが難しい場合は、上位の職務をもつ人に伝え、問題点を指摘してもらえるように相談してください。
4.他人の悪口や陰口を言う
前項とも重複しますが、問題がある際は根拠を明確にして、必ず本人に指摘するべきです。悪口や陰口を言っても解決しません。
また、他人の悪口を頻繁に聞くと「私もどこかで悪く言われているかも」といった不安につながりやすく、知らず知らずのうちに組織を萎縮させます。社員それぞれの心理的安全性を保つためにも、悪口や陰口は避けましょう。
単純に悪口を言うのは良くありませんが、業務上の問題点などを本人のいない場で話し合うことは問題ありません。
もちろん当該行為は、問題解決に向けた前向きな行為として実施する場合に限ります。
5.意見を聞かない・合理的な理由がないのに聞き入れない
仕事は一人でするわけではありません。上司や部下といった立場に関わらず、意見を聞くことは重要です。意見を聞かない、途中で遮る、否定するなどの行為は、その人間性を否定する行為に近く、信頼関係を大きく損ないます。
ただし、意見を聞いたからといってすべての意見を聞き入れる、採用する、というわけではないので誤解しないでください。組織として全体のメリットの無い意見を採用することはありません。
反対に、組織としてプラスが大きいような素晴らしい意見は、立場に関わらず聞き入れ、取り入れるべきです。
同時に、組織の一員として上長からの指示は業務命令として対応する義務も発生します。意見を主張しすぎて、最終的に上長が決定するという組織のルールに反してしまうと、組織の正常な運営が難しくなります。当該ルールについての誤認とならないように注意してください。
6.厳しく叱責する
クレームやミスの発生は組織として許されることではありません。しかし、そこで厳しい叱責をしてもプラスの要素は少ないと思います。
大事なのは、発生原因を探る、再発防止につながる仕組みを作る、などの対応です。激しい言葉で𠮟責する、怒鳴る、長時間にわたって詰める、などは解決策にならないので避けるべきです。
もちろんクレームやミスの原因を作った場合は、反省し再発防止のために努力する必要があります。
再発防止策を練るための前向きな議論や、本人に再発防止策を考えてもらうための議論が長時間化する場合もあるかもしれません。
当該項目は上記のような前向きに解決へと進めるための対応を否定するものではありません。
7.人に仕事を押し付ける
組織としてそれぞれ担当業務があります。または上長から業務を割り振られます。
当該業務は、本人の職責で全うすべきであり、他の人員に押し付けるようなことがあってはなりません。
また、人の業務の代替を上長以外の人間が押し付けることや、義務にすることも良くありません。
ただし、優先すべきは通常通りの業務運営と、提供すべきサービスのクオリティの確保です。急な休みなどの際にはどうしても仕事のカバーなどが発生してしまうと思いますが、そのときは皆で協力し通常業務を維持しましょう。
時期的な要因もあって一人だけ忙しくなってしまった、などということも想定されるでしょう。このような場合、急場をしのぐために協力関係を持つことは重要です。
ただし、それでは根本的な解決になりません。上長、管理者という立場の人は、このような問題を社員の善意に頼って放置するのではなく、仕組みを変更して対応できるように努力すべきです。
8.挨拶やお礼、謝罪など基本的なコミュニケーションを疎かにする
出退勤時に気持ちよく挨拶する。手伝ってもらったり、教えてもらったりしたときはお礼を言う。迷惑をかけたり、間違ったりしたときは謝罪する。
社会人として歴が長くなればなるほど、そういった基本的なコミュニケーションを疎かにしがちです。
このような最低限のコミュニケーションルールさえ守れないと、人間関係を築くことは難しくなります。
人は忙しくなると、こういった基本的なことを忘れがちです。定期的に意識するとともに、上司部下関係なく当該項目に問題があった際は指摘できるようにしましょう。
9.自分の考えが無いまま話す、矛盾したことを言う
自分自身の考えに基づかないで行動すると、その場の意見に流されたり、場当たり的な対処になったりしてしまいます。結果、矛盾したことを指示し他利して信頼性を失います。
なぜ・どうして、何の理由で、何を優先すべきか、など自分の頭で考えて答えを出すことは重要です。
ただし、人の意見は変わります。立場が変わったり、見識が増えたり、そうやって考え方が変わることに何ら不思議なことはありません。
なかには新しく気が付いたことが今までの考えと矛盾する場合もあるかもしれません。
そういった際には、考え方が変わったことや、その根拠をしっかりと提示して説明しましょう。
より良い結果を出すために、前向きな理由で考えが変わることは何も問題はありません。
10.思い込みで判断する、根拠を提示しない
社内のコミュニケーションには、説明・説得などをする局面がたくさんあります。
その際に、根拠無く思い込みの判断で主張する、根拠を提示せずに主張する、などの行動は、納得感や共感を得ることが難しくなります。
たくさんの人間が集まって働いているので、お互いの考えを話し合って、納得した上で業務を進めることがとても大切なのだと思います。
そのためにはしっかりと考えの根拠を集めて、提示して、最大限の納得を引き出すように努力するべきです。
ただし、議論の参加者が増えれば、最終的に全員が納得できない場合もあると思います。
そのような場合は、上長、リーダーなどの決定に委ねる必要があるというのも組織の一つの側面です。
このように議長が決定する際にも、やはり根拠の提示はしっかりとして、合意の最大値を取得するように努めましょう。
