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社会保険の全体像を理解する。ー企業・個人事業主が知るべき加入基準と収入の壁ー

仕事術

目次

  1. 1. 社会保険とは? ー基本の仕組みと費用負担ー
  2. 2. 法人と個人事業主の違い ー加入基準と業種の分岐点ー
  3.  法人の場合
  4.  個人事業主の場合
  5. 3. 短時間労働者への適用基準と企業規模の影響
  6.  正社員の場合
  7.  短時間労働者(パート・アルバイト)の場合
  8. 4. 社会保険 vs 国民健康保険(国保組合) ー適用ケースと除外要件ー
  9.  社会保険加入が義務となる場合
  10.  国民健康保険・扶養で対応する場合
  11. 5. 収入の壁と扶養者への税負担 ー106万円、123万円、130万円の実態ー
  12.  106万円の壁について(実は存在しない誤解)
  13.  123万円の壁(2025年の非課税ライン)
  14.  130万円の壁
  15. 6. 具体的な事例で整理する適用条件と除外例
  16. 7. 最後に ー変化する制度。柔軟に対応しようー

1. 社会保険とは? ー基本の仕組みと費用負担ー

社会保険のおもな柱は、健康保険厚生年金保険です。

  • 健康保険:病気やケガの際に医療費をカバーし、従業員に安心を提供します。
  • 厚生年金保険:老後の生活資金を支える年金制度として機能します。

保険料は、標準報酬月額の約28~30%が徴収され、その半分を企業、もう半分を従業員が負担する仕組みです。いわば「名前を変えた税金」として毎月の出費に直結するため、企業も個人もしっかりと把握しておく必要があります。

また、国民健康保険との比較も重要です。国民健康保険は自治体ごとに計算方法や負担額が異なり、特に所得が高い場合は、年間の保険料が大幅に上昇する傾向にあります。

2. 法人と個人事業主の違い ー加入基準と業種の分岐点ー

法人の場合

法人では従業員数に関係なく、役員、正社員、契約社員など、給与を受け取るすべての従業員が原則として社会保険の加入対象となります。社内全体で同じルールが適用されるため、制度運用の統一性が求められます。

個人事業主の場合

個人事業主は、加入基準が業種従業員数によって大きく分かれます。

  • 強制適用業種
    製造業、商業、金融業、不動産業、サービス業など、一定の業種では、従業員が常時5人以上いる場合に強制適用となります。
  • 非適用業種
    農林水産業、旅館業、接客業、一部の飲食業やサービス業などは、たとえ従業員が5人以上いても強制加入にはならず、任意加入が可能です。

また、従業員が4人以下の場合は原則として強制適用外となる点も、個人事業主ならではの特徴です。

3. 短時間労働者への適用基準と企業規模の影響

勤務形態によって、社会保険の加入基準は変動します。

正社員の場合

基本的に「週の所定労働時間・日数が正社員の4分の3以上」(=「正社員の4/3基準」)であれば加入義務が発生します。実際の勤務状況に即した基準です。

短時間労働者(パート・アルバイト)の場合

加入条件は企業規模によって異なります。

  • 大企業(従業員51名以上)
    大企業では、以下の条件をすべて満たす場合、短時間労働者も社会保険の加入対象となります。
    1. 1.週20時間以上の労働
    2. 2.月収8.8万円以上
    3. 3.2ヶ月以上の雇用見込み
    4. 4.学生でないこと(ただし、休学中や夜間学生等、一定の条件下では加入対象となる場合もあります)
  • 小規模企業(50名以下)
    小規模企業では、大企業ほど短時間労働者への加入義務は厳しくありません。ただし「正社員の4/3基準」を満たす場合は、企業規模にかかわらず加入が求められるため、個別のケースごとに判断する必要があります。

4. 社会保険 vs 国民健康保険(国保組合) ー適用ケースと除外要件ー

社会保険の加入と国民健康保険や扶養制度の対応は、状況に応じた判断が必要です。

社会保険加入が義務となる場合
  1. 1.法人の場合:給与を受け取る全従業員が対象です。
  2. 2.個人事業主(強制適用業種)の場合:従業員が常時5人以上いれば、基本的に加入が必要です。
  3. 3.大企業の短時間労働者:週20時間以上、月収8.8万円以上、かつ2ヶ月以上の雇用見込みがある場合。
  4. 4.「正社員の4/3基準」を満たす場合:勤務条件が整っていれば、企業規模や業種を問わず、加入が求められます。
国民健康保険・扶養で対応する場合
  • ・個人事業主が非適用業種の場合、たとえ従業員が5人以上いても強制加入を回避でき、国民健康保険や扶養制度で対応します。
  • ・扶養認定基準に該当しない場合も、国民健康保険・国民年金への切り替えが必要となります。

国保組合(国民健康保険組合)について
個人事業主の場合は、国民健康保険の代わりに国保組合に加入できるケースがあります。
国保組合(国民健康保険組合)は、同業者や同じ職域に属する人々が共同で運営する医療保険制度です。一般的な市区町村国保と比べて、以下のような特徴があります。

加入条件の基本
・個人事業主であること
・各組合で定められた同一職業または同種の事業に従事していること
・組合の地域内に居住または就業していること
・他の医療保険制度に加入していないこと

おもな対象となる個人事業主
・医師、弁護士、税理士などの専門職
・建設業の一人親方
・理容師、美容師(個人営業)
・個人タクシー事業者
など

加入メリット
・保険料が比較的低く設定されている場合が多い
・付加給付や独自の福利厚生サービスが充実している
・同じ職域の特性に応じた健康管理サービスを受けられる

法人化後の取り扱い
個人事業主から法人化した場合、原則として国保組合から脱退し、健康保険(協会けんぽ、または健康保険組合)に加入する必要があります。これは国保組合が個人事業主のための制度として設計されているためです。

なお、国保組合に加入していても、雇用条件によっては厚生年金保険への加入が必要となるケースがあります。この場合、健康保険は国保組合、年金は厚生年金という「分離適用」となります。

5. 収入の壁と扶養者への税負担 ー106万円、123万円、130万円の実態ー

106万円の壁について(実は存在しない誤解)

「106万円の壁」という言葉をよく耳にしますが、実は明確な法的根拠のある基準ではありません。これは、以下の複数の基準が混ざり合って生まれた誤解です。

  • 誤解の由来:大企業の短時間労働者の社会保険加入基準である「月収8.8万円以上(年収約106万円相当)」と、かつての103万円の所得税非課税ラインが混同されて広まったものです。
  • 実態:実際の制度上、106万円という金額で区切られる制度的な「壁」は存在しません。重要なのは、各制度における具体的な基準(123万円の所得税基準や130万円の健康保険扶養基準など)です。

この誤解を理解することで、より正確な収入計画を立てることができます。実際の判断は、下記で説明している123万円や130万円の基準に基づいて行うべきでしょう。

123万円の壁(2025年の非課税ライン)
  • 基本ルール:2025年の基礎控除拡大により、年収123万円以下なら所得税が発生せず、扶養控除の適用が受けられるようになりました。これは以前の103万円から引き上げられた新基準です。
  • 影響:123万円を超えると、扶養者の所得税負担が段階的に増加します。扶養者の課税所得や税率によって増税幅が変動するため、家庭全体の収入バランスをしっかりと見極める必要があります。

この制度改正により、特にパートタイム従業員の就労機会が広がり、より柔軟な働き方が可能になりました。以前の103万円の壁と比べ、収入を増やしやすい環境となっています。

130万円の壁
  • ポイント:年収が130万円を超えると、健康保険上の扶養認定から外れます。
  • 影響:扶養から外れると、企業の社会保険に加入するか、もしくは国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になります。収入増に伴って自己負担の保険料が発生し、手取りに影響が出るため、事前にシミュレーションを行うことが重要です。

6. 具体的な事例で整理する適用条件と除外例

ここまでのポイントを実際の事例で整理すると、以下のようになります。

  1. 1.株式会社(法人)の正社員
    給与を受け取る全従業員が、従業員数に関係なく社会保険加入の対象となります。
  2. 2.個人事業主(強制適用業種)で従業員5名以上
    業種の特性により、従業員が5人以上いる場合は、原則として社会保険への加入が必要です。
  3. 3.個人事業主(非適用業種)で従業員5名以上
    業種が非適用の場合、強制加入は発生せず、国民健康保険や扶養制度で対応する場合がほとんどです。
  4. 4.大企業(51名以上)の短時間労働者
    週20時間以上、月収8.8万円以上、2ヶ月以上の雇用見込みがある場合、加入義務が発生します。なお、学生でないことが条件となり、休学中や夜間学生は除外の対象外となる場合があります。
  5. 5.小規模企業(50名以下)の短時間労働者
    勤務条件が「正社員の4/3基準」を満たさなければ、社会保険加入の義務は発生しませんが、ケースごとに判断が求められます。
  6. 6.国保組合を利用する場合
    健康保険は国保組合で対応される一方、厚生年金保険は別途法定加入となるため、その点を十分に確認する必要があります。

7. 最後に ー変化する制度。柔軟に対応しようー

社会保険の加入基準や収入の壁は、業種、従業員数、勤務条件、税制面など、多くの要素が絡み合っています。法人と個人事業主では、それぞれの状況に応じた対応が求められるため、制度改正や段階的な適用拡大の動向を常にチェックし、最新情報と自社や家庭状況に合わせた対策を講じることが不可欠です。

この記事が制度の複雑さを整理し、より良い判断を下すための一助となれば幸いです。安心して経営や働き方を見直すためにも、変わりゆく制度に今後も柔軟に対応していきましょう。