皆さんご承知のとおりですが、健康診断は必須です。細かい内容を整理しておきましょう。
① なぜ受けさせなきゃいけないの?
健康診断は、労働者の健康を確保するために実施します。つまり、「働かせて問題ないか」をちゃんと確認しましょうということです。
健康診断を受けさせずに過労で社員が倒れると会社の責任となり、最悪の場合、倒れた社員の家族から損害賠償を請求される可能性があります。マジで気を付けましょう。
②いつ受けるの?
・雇い入れ時の健康診断
労働安全衛生規則第43条に「常時使用する労働者を雇い入れるときは、健康診断を行わなければならない」と定められています。ただし「雇い入れるとき」の時期的範囲は示されていません。
※雇い入れ日前の健診実施について「雇い入れられる者が3か月以内の健診結果を提出した場合は、相当する健診項目の検査は不要」とされていますので、雇い入れ日前の3か月以内に実施するのが良いかと思います。
※雇い入れ日以降の健診実施について、安衛則第43条の解釈例規に「雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理の基礎資料に資するため」とされていることを考慮した場合、雇い入れた者の配属先を決める前に実施することが望ましいでしょう。入社即配属の場合は入社日前に実施する必要があります。
・定期健康診断
事業者は常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的な医師による健康診断を行わなければなりません。
なお、ここでの「定期的」とは、毎年一定の時期にという意味であり、その時期については事業所毎に決めるものです。
また、定期健康診断の結果については記録を作成し、5年間保存する必要があります。
・特定業務従事者の健康診断
特定業務に関わる人は、6か月毎に1回、健康診断を受けなければなりません。
下記「深夜業を含む業務」は、該当する人も多いので要注意です!
※「深夜業を含む業務」とは、常態として深夜業(22時から翌朝5時)を1週1回以上又は1か月に4回以上行う業務を指します。
※「24時終業」のような、ちょっと深夜に差し掛かるだけの人も該当します!
労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあいまたは粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
へ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
出典:厚生労働省ホームページ
・給食従業員の検便
安衛則第47条によると「給食業務に従事する労働者に対しては、雇い入れ時または配置換え時に、検便による健康診断を実施しなければならない」となっています。
一応、雇い入れ時および配置換え時のみとなっていますが、食品衛生法でもっと厳しい規定が別途定められているようです。
・歯科医師による健康診断
ほとんどいないはずですが、一応!
対象となる労働者
塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務(対象業務※)に常時従事する労働者(安衛法施行令第22条第3項、安衛則第48条)
※例)メッキ工場、バッテリー製造工場等における上記の業務
実施時期
対象業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、対象業務への配置替えの際、対象業務に就いた後6ヶ月以内ごとに1回(安衛則第48条)
出典:厚生労働省ホームページ
③受けなきゃいけないのは誰?
原則、無期契約でフルタイムの3分の4以上働く人が対象になります。健康保険の加入者とイコールです。
※健康保険の適用拡大が実施されていますが、健康診断の対象者は拡大されていません
有期契約でも
- ・1年以上の予定なら対象
- ・1年以上在籍しているなら対象
になります。
※特定業務従事者健診は上記を6か月以上と読み替える
となっています。
なお、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても、一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。
また、派遣労働者についての一般健康診断は、労働者の派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。
④受けなきゃいけない内容は?
通常の健康診断については、下記のとおりです。
雇入れ時の健康診断(安衛則第43条)
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。)の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTPの検査)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの検査)
9 血糖検査(HbA1cでも可)
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査
出典:厚生労働省ホームページ
定期健康診断(安衛則第44条)
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査及び喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GPTの検査)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査
11 心電図検査
出典:厚生労働省ホームページ
⑤受けた後にしなきゃいけないことは?
1.健康診断の結果の記録
健康診断の結果は「健康診断個人票」を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間内は保存しておかなくてはなりません。
→会社が管理しましょう!
→原則5年保管してください!
2.健康診断の結果について医師等からの意見聴取
健康診断の結果に基づき、
- ・健康診断の項目に異常所見のある労働者
- ・労働者の健康を保持するために必要な措置
上記について医師の意見を聞かなければなりません。
→意見は大体、診断書に書いてあります。
→「働かせちゃダメ」と書いてあったら働かせちゃダメだよって意味です。
→「再検査」のようなケースは再検査を勧めてください。再検査結果は提出してもらいましょう。※費用は自己負担で大丈夫です
3. 適切な措置を講じる
健康診断実施後の医師または歯科医師の意見を勘案し、労働時間の短縮、作業の転換等の適切な措置を講じなければなりません。
→医者がダメって言ったら、何かやらないとダメです!
4. 健康診断の結果を労働者へ通知する
健康診断の結果は労働者に通知しなければなりません。
5.健康診断の結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を受けるよう勧めなければなりません。
→努力義務なので今回は割愛します。
6. 健康診断の結果を所轄労働基準監督署長へ報告
健康診断(定期のものに限る)の結果は、所轄労働基準監督署長に遅滞なく提出しなければなりません。
→常時50人以上の労働者を使用する事業者が対象になります。
→50人以上の事業所は同時に産業医の選定も必要になります。
産業医は、健康診断の結果、異常な所見があると診断された社員について就業判定を行います。
その上で、休職等が必要と判断した従業員に対して「意見書」を作成します。
特殊健診の結果報告書については、健診を行ったすべての事業者が対象です!
⑥ 受けるときは誰の負担?
健康診断の実施は法で事業者に義務付けられていることから、その費用はもちろん、受診に要した時間の賃金についても事業者が支払うことが望ましいものであります。という解釈があります。
ただし、実態として、雇い入れ時の健康診断は社員側が負担しているケースが多い気がします。
入社前の3ヶ月以内に必要な健康診断を受けており、その結果を提出することができれば、雇い入れ時の健康診断に代えることも可能と定義されています。
そのため、健康診断を受けるのを強制するのではなく、入社時の健康診断書の提出を義務とするケースが多いようです。
ですが、費用はやっぱり会社負担すべきです。
しかしながら、多くの大手企業がこの方式を採用しています。
→面接中、入社直後などのタイミングで文句を言いづらいのもあり、問題になることが少ないのが現状です。
