従業員の妊娠・出産・育児に関する各種制度について、2025年4月の法令改正後の内容と、10月に予定されている改正予告を含めた最新情報をまとめました。
目次
- 1. 妊娠中の休業・欠勤について
- A. 妊娠中の休業・欠勤の基本
- B. 傷病手当金について
- 2. 産前産後休業
- A. 休業期間
- B. 出産一時金と出産手当金
- 3. 育児休業
- A. 基本概要
- B. 取得資格と条件
- C. 育児休業給付金(雇用保険)
- D. 復帰日の明確化
- E. 育児休業中の就労について
- 4. パパ育休(出生時育児休業)
- A. 制度概要
- B. 就労条件と給付
- 5. 時短勤務と育児時短就業給付金
- A. 時短勤務制度
- B. 育児時短就業給付金(2025年4月新設)
- 6. 2025年4月の法改正ポイント
- A. 子の看護休暇の拡充
- B. 残業免除の対象範囲拡大
- C. 育児休業取得状況の公表義務化
- D. 育児休業取得等に関する状況把握と数値目標設定
- E. テレワーク推進(努力義務)
- F. 育児休業延長条件の厳格化
- 7. 2025年10月の法改正予定
- A. 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
- B. 個別意向聴取・配慮の義務化
- C. その他の改正予定
1. 妊娠中の休業・欠勤について
A. 妊娠中の休業・欠勤の基本
妊娠中の休業・欠勤については、法令に基づいた適切な対応が求められます。妊娠という理由だけで無条件に欠勤を認めるものではなく、企業運営への影響も考慮しながら、合理的な範囲で配慮する必要があります。
認められる休業の範囲:
- ・医師の診断書に基づく休業(つわりや体調不良等)
- ・産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得可能
注意事項:
- ・診断書なしの自己申告のみによる頻繁な欠勤は、原則として認められません
- ・業務内容の調整や配置転換などの措置を講じることで継続勤務が可能な場合は、そうした対応を検討します
- ・妊婦が請求した場合、会社は業務負担軽減などの合理的な措置を講じる義務があります
B. 傷病手当金について
妊娠中の体調不良で働けない場合に活用できる制度です。
対象条件:
- ・医師の診断書により就業が困難と認められること
- ・給与が支給されないこと
- ・健康保険に加入していること
支給内容:
- ・待機期間(原則3日)経過後、給与の約2/3が支給
- ・支給開始日から最長1年6ヶ月まで受給可能
2. 産前産後休業
A. 休業期間
産前休業:
- ・出産予定日の6週間前(多胎出産の場合は14週間前)から取得可能
産後休業:
- ・出産後、原則として8週間の休業が必要
- ・6週間経過後、医師の許可がある場合は就業可能
B. 出産一時金と出産手当金
出産一時金:
- ・健康保険から支給
- ・支給額は原則50万円(産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合は48.8万円)
- ・多胎出産の場合は、子ども1人ごとに支給されます
出産手当金:
- ・産前産後休業期間中、給与の約2/3が健康保険から支給されます
- ・支給対象期間は産前42日(多胎の場合98日)、産後56日間です
- ・出産予定日より遅れた場合、その遅れた日数分も「産前」として加算されます
加入期間の要件:
- ・原則として、出産時点で健康保険に直近6か月以上継続加入していることが条件
例外条件:
- ・1年以上の被保険者期間があり、退職後6か月以内の出産の場合も支給対象
- ・被保険者期間が6か月未満でも、緊急入院や妊娠悪阻などの特別な事情がある場合は、健康保険組合の判断により支給される場合があります
3. 育児休業
A. 基本概要
定義:
- ・「1歳未満の子どもの養育を目的とする休業」と定義されています
取得期間:
- ・原則、子どもが1歳になるまで取得可能
- ・1歳以降の延長については、下記の厳格な条件を満たす場合のみ認められます
育児休業延長の条件:
①保育所等の利用申し込み
- ・認可保育所への利用申し込みが行われており、子が1歳になる日(または1歳6か月になる日)の翌日時点で利用ができない場合
- ・認可外保育所のみの申し込みでは延長不可
②速やかな職場復帰の意思
- ・保育所等の利用申し込みが「速やかな職場復帰」を目的として行われたものであること
- ・以下の場合は認められない
・入所保留を希望する意思表示をしている
・自宅から片道30分以上かかる施設のみを希望している(合理的理由がない場合)
必要書類の提出:
- ・市区町村が発行する「入所保留通知書」または「入所不承諾通知書」
- ・「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」(速やかな職場復帰意思などを記載)
- ・保育所等利用申し込み時の「申込書の写し」
注意点:
- ・入所希望施設については合理性が求められ、不合理な選択(例:遠方施設のみ希望)は認められません
- ・書類提出が増え、虚偽申告や不正延長が防止される仕組みとなっています
B. 取得資格と条件
対象者:
- ・正社員、契約社員、パートタイマーなど雇用形態を問わず取得可能
ただし、以下の条件があります(2025年4月時点)。労使協定で定めた場合、以下の労働者は対象外となる可能性があります。
・入社1年未満の労働者
・1年以内に雇用関係が終了する労働者
・週の所定労働日数が2日以下の労働者
取得回数:
- ・1人の子につき原則2回取得可能
- ・1歳までの休業と延長分は別枠として扱われます
C. 育児休業給付金(雇用保険)
支給内容:
- ・休業開始から180日間:賃金の67%
- ・その後は賃金の50%(上限額あり)
受給条件と回数制限:
- ・休業開始前2年間、雇用保険に12か月以上加入していることが必要
- ・同一の子について原則2回までの支給(特別な事情がある場合を除く)
- ・3回目以降の育児休業については、原則給付金を受けられません
例外事由(回数制限から除外される場合):
- ・別の子の産前産後休業、育児休業、別の家族の介護休業が始まったことで育児休業が終了した場合で、新たな休業が対象の子または家族の死亡等で終了した場合
- ・配偶者の死亡、負傷等により、子の養育ができなくなった場合
- ・子が負傷、疾病等により2週間以上の世話を必要とする状態になった場合
- ・保育所等での保育利用を申し込んでいるが、実施されない場合
D. 復帰日の明確化
育児休業に入る前に、復帰予定日を必ず明確に設定し、書面で確認しておくことが重要です。これにより「いつでも好きなときに復帰したい」といった曖昧な要望や、急な復帰希望への対応に伴う人員配置の混乱を防止できます。計画的な人員配置と業務運営のためにも、復帰日の明確化は会社・従業員双方にとって有益です。
E. 育児休業中の就労について
誤解の解消:
- ・「育児休業中は80時間未満なら就労しても問題ない」という情報は誤りです
正しい運用:
- ・育児休業は「子どもの養育」を目的としているため、原則として就労は認められません
- ・例外として、突発的なトラブル対応など、例外的かつ短時間の就労のみ認められる場合があります
4. パパ育休(出生時育児休業)
A. 制度概要
導入時期:
- ・令和4年10月から導入された比較的新しい制度です
取得期間:
- ・出産直後(出生後8週間以内)に、通算28日間まで取得可能
- ・通常の育児休業とは別枠で扱われます
B. 就労条件と給付
就労可能な範囲:
- ・労使協定により、原則として所定労働日数・時間の半分まで就労が認められます
- ・ただし、就労は本人の同意が前提となります
給付金:
- ・雇用保険から「出生時育児休業給付金」として賃金の67%(上限あり)が支給されます
- ・同一の子について2回まで分割して取得でき、給付金を受けられます
- ・通常の育児休業給付金とは別に計算され、支給回数制限にも影響しません
申請に関する注意点:
- ・出生時育児休業を2回に分割した場合でも、給付金の申請は1回にまとめて行う必要があります
- ・申請期限は、子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から2ヶ月経過日が属する月の末日までです
5. 時短勤務と育児時短就業給付金
A. 時短勤務制度
制度の趣旨:
- ・育児と仕事の両立支援を目的とした制度です
対象期間:
- ・3歳未満の子を養育する労働者は、1日6時間の短時間勤務制度を利用できます
・3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者については、事業主は育児に関する短時間勤務制度または所定外労働免除を含む措置を講ずる努力義務があります
B. 育児時短就業給付金(2025年4月新設)
目的:
- ・育児と仕事の両立を支援するため、時短勤務による収入減少を補填し、時短勤務制度を利用しやすくすることを目的とした給付制度
対象者:
- ・2歳未満の子どもを養育するために短時間勤務を選択した労働者
- ・性別に関係なく、男性・女性どちらも対象
- ・支給条件として、以下を満たす必要があります:
- 1.時短勤務開始前の2年間に「みなし被保険者期間」が12か月以上あること
- 2.育児休業給付金または出生時育児休業給付金の受給後、引き続き時短勤務を開始した場合
支給額:
- ・時短勤務中に支払われた賃金額の10%が支給
- ・ただし、時短勤務前の賃金水準を超えないよう調整
特徴:
- ・1日の所定労働時間を短縮する場合だけでなく、週単位で所定労働日数を減らす形態も含む
- ・他の休業給付(育児休業給付金など)との重複受給は不可
6. 2025年4月の法改正ポイント
A. 子の看護休暇の拡充
改正内容:
- ・子どもの学校行事や予防接種、健康診断への参加など、看護以外の目的でも「子の看護休暇」が取得可能になります
- ・時間単位での取得が可能です
対象者:
- ・小学校就学前の子どもを養育する労働者
B. 残業免除の対象範囲拡大
改正内容:
- ・これまで3歳未満の子どもを養育する労働者が対象だった「所定外労働(残業)の免除」が、小学校就学前(6歳未満)の子どもを養育する労働者まで拡大されます
C. 育児休業取得状況の公表義務化
対象企業:
- ・従業員数300人超の企業
改正内容:
- ・男性の育児休業取得状況を公表する義務が課されます
- ・公表内容には、具体的な取得率や人数などが含まれます
D. 育児休業取得等に関する状況把握と数値目標設定
対象企業:
- ・従業員数100人超の企業
改正内容:
- ・育児休業や介護休業に関する現状を把握し、数値目標を設定することが義務化されます
- ・これにより、企業は育児支援に関する具体的な取り組みを強化する必要があります
E. テレワーク推進(努力義務)
改正内容:
- ・3歳未満の子どもを育てる労働者に対して、テレワーク制度を導入・活用することが企業に求められます
- ・ただし、この措置は努力義務です
F. 育児休業延長条件の厳格化
改正背景と目的:
- ・育児休業延長を不正利用するケースを防止し、職場復帰を真に目的とした申請を促進するための措置です
- ・2025年4月から審査基準が厳格化され、必要書類も増加しています
審査基準の変更:
- ・職場復帰意思がないと判断される場合や、合理的な理由なく遠方の保育所のみを希望した場合は延長が認められません
- ・ハローワークによる審査が強化され、提出書類の真実性がより厳しく確認されるようになります
企業としての対応:
- ・従業員への周知や手続き支援を行い、不利益が生じないよう配慮する必要があります
- ・育児休業の期間設定や復帰計画について、より計画的な対応が重要になります
7. 2025年10月の法改正予定
A. 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
対象:
小学校就学前(3歳以上)の子どもを育てる労働者
内容:
- ・事業主は以下の5つの措置から2つ以上を選択し整備する必要があります:
・始業・終業時刻の変更(フレックスタイム制や時差出勤)
・テレワーク(月10日以上、時間単位で利用可能)
・保育施設の設置運営や費用補助
・養育両立支援休暇(年10日以上、時間単位で取得可能)
・短時間勤務制度(1日6時間勤務など)
B. 個別意向聴取・配慮の義務化
対象:
- ・育児や介護を行う労働者全般
内容:
- ・労働者が妊娠・出産・育児休業等を申し出た場合、事業主は個別に意向を聴取し、配慮する義務が発生
- ・特に3歳未満の子どもを育てる従業員に対しては、制度利用対象になる前に周知と意向確認を実施
- ・子が3歳になる前の適切な時期(1歳11か月から2歳11か月までの間)に意向聴取が必要
聴取内容:
- ・勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
- ・勤務地(就業の場所)
- ・両立支援制度等の利用期間
- ・その他、仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)
聴取方法::
以下のいずれかの方法で行う必要があります。
- ・面談(オンライン面談も可能)
- ・書面交付
- ・FAX(労働者が希望した場合のみ)
- ・電子メールやSNSメッセージ等(労働者が希望し、書面に出力可能な場合のみ)
配慮義務:
- ・聴取した意向について配慮しなければなりません
- ・労働者の意向を踏まえた検討を行うことが求められます
- ・意向に沿った対応が困難な場合は、その理由を労働者に説明するなど丁寧な対応が必要です
C. その他の改正予定
育児休業中の就労ルールの明確化:
- ・例外的就労の具体的な条件を明確にし、誤解を解消する方向で改正が進められています
- ・現行では、一定時間以上就労すると育児休業給付金が支給停止となります。この基準や例外条件について改正が検討されています
産後パパ育休(出生時育児休業)の見直し:
- ・分割取得や柔軟な運用がさらに可能となるよう見直しが検討されています
- ・就労可能時間や取得回数に関する改定が議論されていますが、具体的な内容はまだ確定していません
従業員の皆様がライフイベントに合わせて各種制度を適切に活用できるよう、ご案内いただければ幸いです。具体的なご相談や詳細については、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
※本資料は2025年4月時点の法令に基づいて作成しております。法改正等により内容が変更される場合がありますので、ご了承ください。
