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法人設立後の必要手続きガイド

仕事術

法人を立ち上げると、経営者はさまざまな行政手続きが必要となります。
本ガイドではそれらをタイムライン形式で整理し、必要な手続きと専門家へ依頼するタイミングをまとめています。

法人設立直後から必要な手続きを適切に行うことで、将来の追加コストやトラブルを防げます。

法人設立直後(5営業日以内)に必要な手続き

社会保険関連

・健康保険・厚生年金保険の新規適用届の提出

 〇対象:すべての法人(従業員の有無に関わらず)
 〇提出先:管轄の年金事務所
 〇必要書類:
  ■健康保険・厚生年金保険新規適用届
  ■被保険者資格取得届
  ■法人登記簿謄本
  ■代表者個人の住民票など計8種類
 〇注意点:未加入状態が続くと、最大2年分の保険料遡及徴収と年14.6%の加算金リスクあり
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:法人は、従業員がいなくても社会保険加入が義務付けられています。代表者一人でも加入が必要です。

労働保険関連

・労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続き

 
〇労災保険:労働者を1人でも雇用する場合は必須
 〇雇用保険:週20時間以上かつ31日以上雇用見込みの従業員がいる場合
 〇提出先:管轄の労働基準監督署・ハローワーク
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:労働保険は「労災保険」と「雇用保険」の総称。労災保険は従業員を1人でも雇用したら加入義務があります。

法人設立後2ヶ月以内に必要な手続き

税務関連

・法人設立届出書の提出

 〇提出先:所轄税務署
 〇必要書類:法人設立届出書
 〇依頼先:税理士

解説:税務署に法人の存在を知らせる基本的な届出です。事業年度や事業内容などの情報を登録します。

青色申告承認申請書の提出

 〇メリット:欠損金の繰越控除(最大10年)、特別償却制度の適用可能
 〇提出期限:設立第1期の事業年度終了後2ヶ月以内
 〇依頼先:税理士

解説:青色申告は税制上の優遇措置を受けられる制度です。特に法人の立ち上げ期で赤字の場合、将来に繰り越せるメリットがあります。

・給与支払事務所等の開設届出書の提出

 〇提出先:所轄税務署
 〇提出期限:給与支払開始日から1ヶ月以内
 〇依頼先:税理士

解説:従業員や役員に給与を支払う場合に必要な届出です。この届出により源泉徴収義務が発生します。

従業員を雇用する際に必要な手続き

社会保険関連

・被保険者資格取得届の提出

 〇対象:すべての常用従業員(パート・アルバイトでも週20時間以上等の条件を満たせば加入)
 〇提出期限:雇用日から5日以内
 〇提出先:管轄の年金事務所
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:従業員を雇用した場合の社会保険加入手続きです。条件を満たすパート・アルバイトも加入対象になります。

労働保険関連

・雇用保険被保険者資格取得届の提出

 〇対象:週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある従業員
 〇提出期限:雇用日から10日以内
 〇提出先:管轄のハローワーク
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:雇用保険は失業給付だけでなく、育児休業給付など在職中も活用できる制度です。

労務関連

・就業規則の作成と届出

 〇対象:常時10人以上の労働者を使用する事業所
 〇提出先:労働基準監督署
 〇おもな記載事項:始業・終業時刻、賃金決定方法、服務規律等
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:就業規則は「会社のルールブック」であり、労使間のトラブル防止に重要です。10人未満でも作成をおすすめします。

36協定(時間外労働協定)の締結と届出

 〇対象:法定労働時間を超える勤務が発生する可能性がある場合
 〇注意点:月45時間・年360時間の法定上限順守が必要
 〇提出先:労働基準監督署
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:残業や休日労働をさせるために必要な協定です。この協定がなければ残業させることはできません。

法人事業開始後の定期的な手続き

月次の手続き

・源泉所得税の納付

 〇期限:給与支払月の翌月10日まで
 〇提出先:所轄税務署または金融機関
 〇依頼先:税理士または自社経理担当者

解説:給与から差し引いた所得税の納付です。納期限を過ぎると延滞税が発生します。従業員数が少ない場合は「納期の特例」で半年に一度の納付も可能です。

・社会保険料の納付

 〇期限:毎月末日(銀行休業日の場合は前営業日)
 〇方法:口座振替または納付書での支払い
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)または自社経理担当者

解説:従業員と会社の負担分を合わせて納付します。滞納すると年14.6%の延滞金が発生します。

・労働保険料の納付

 〇期限:年1回(6月~7月の年度更新時)または分割納付(3回)
 〇方法:口座振替または納付書での支払い
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)または自社経理担当者

解説:労災保険料と雇用保険料の納付です。年1回または分割納付が可能です。

年次の手続き

・法人税の確定申告

 〇期限:事業年度終了後2ヶ月以内
 〇提出先:所轄税務署
 〇依頼先:税理士

解説:法人の所得に対する税金申告です。決算書作成と税務調整が必要です。

・消費税の確定申告

 〇対象:課税事業者(資本金1,000万円以上、または課税売上高1,000万円超)
 〇期限:事業年度終了後2ヶ月以内
 〇提出先:所轄税務署
 〇依頼先:税理士

解説:消費税の申告です。設立1・2期目は資本金1,000万円未満なら免税事業者になれる特例があります。

・社会保険の算定基礎届の提出

 〇期間:毎年6月1日~7月10日
 〇内容:被保険者の4~6月の報酬平均額による標準報酬月額の見直し
 〇提出先:管轄の年金事務所
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:従業員の標準報酬月額(保険料計算の基礎)を年1回見直す手続きです。

・労働保険の年度更新

 〇期間:毎年6月1日~7月10日
 〇内容:前年度賃金総額の確定と概算・確定保険料の調整
 〇提出先:労働基準監督署またはハローワーク
 〇依頼先:社会保険労務士(社労士)

解説:労働保険料の確定申告のような手続きです。前年度の清算と新年度の概算納付を行います。

・年末調整

 〇時期:毎年11月~12月
 〇内容:従業員の1年間の所得税額を確定させる手続き
 〇提出先:所轄税務署(翌年1月提出の法定調書合計表等)
 〇依頼先:税理士または自社経理担当者

解説:給与から天引きした所得税の1年間の過不足を調整する手続きです。多くの給与所得者は、この年末調整によって所得税の精算が完了し、確定申告が不要になります。

各種控除(扶養控除、生命保険料控除、住宅ローン控除など)を適用するため、従業員から必要書類を集め、最終的な税額を計算します。翌年1月には法定調書合計表などを税務署へ提出しなければなりません。
近年は電子化が進み、マイナポータル連携などの簡素化措置も導入されています。

専門家への依頼ポイント

税理士への依頼

・おもな業務範囲

 〇法人税務・消費税申告
 〇経理システム構築
 〇源泉所得税管理
 〇代表者報酬の設計(定期同額給与ルール対応)
 〇インボイス制度対応
 〇給与計算体制の構築

解説:税理士は税務に関するプロフェッショナルとして、法人税・消費税などの申告業務だけでなく、節税対策や経営アドバイスも行います。特に法人設立初期は、会計システムの構築や経理処理のルール作りが大切です。

代表者報酬は「定期同額給与」のルールがあり、原則として年度中の変更が制限されるため、事前の設計が重要になります。税制改正も頻繁に行われるので、最新情報に基づいた対応をしましょう。

・依頼するタイミング

 〇法人設立前~設立直後:税務体制の初期設計
 〇毎月:経理処理の確認
 〇決算期:確定申告書類の作成

解説:税理士への依頼は、法人設立前から相談することで、最適な会計期間の設定や資本金額の決定など、税務面での初期設計が可能です。月次に経理処理の確認や試算表の作成を依頼することで、早期の経営課題発見につながります。決算期には確定申告書類の作成だけでなく、次年度の経営計画策定のアドバイスも受けられます。

社会保険労務士(社労士)への依頼

・おもな業務範囲

 〇労働・社会保険の手続き
 〇就業規則・諸規程の作成
 〇勤怠管理体制の構築
 〇給与計算体制の構築
 〇労務管理の助言・指導
 〇助成金申請支援

解説:社労士は労務管理のプロフェッショナルとして、各種社会保険の手続きだけでなく、従業員の入退社対応や労務トラブル防止のアドバイスも行います。
特に法人設立初期は、就業規則の整備や給与計算システムの導入が重要です。また、活用可能な助成金の検討も経営に有益です。

・依頼するタイミング

 〇法人設立時:社会保険加入手続き、就業規則作成
 〇従業員の入退社時:保険手続き
 〇定期的:算定基礎届、年度更新など

解説:社労士への依頼は、法人設立時の各種手続きから始まります。従業員の入退社に伴う手続きは期限が厳格なため、専門家にまかせてミスを防ぎましょう。
また、年間の労務スケジュールを作成し、必要な手続きを計画的に進められるよう支援を受けることもおすすめです。

費用対効果を高める工夫

・小規模法人の場合:クラウド型人事給与システムと専門家監修の組み合わせが効率的
・規模拡大時:税理士と社労士の連携体制を構築し、データ一元管理を実現
・システム選定時:税務申告・社会保険手続き・給与計算が連動するシステムを検討

解説:法人運営に関わる手続きは多岐にわたりますが、最適な体制構築があれば効率化が可能です。スタートアップ期は「freee」「マネーフォワード」などのクラウド会計・給与システムと専門家の定期チェックを組み合わせるハイブリッド型が費用対効果に優れています。

会社規模が拡大すれば、税理士と社労士が連携し、データを一元管理する体制が効果的です。システム選定では連携機能を重視し、データ入力の重複を避け、ミスを減らす仕組みづくりを心がけましょう。

「専門家にすべてまかせる」より「自社でできることと、まかせることの線引き」を明確にすることがコスト削減につながります。


本ガイドを基本として、御社の具体的な状況に合わせた専門家のアドバイスを受けることで、法人運営の安定化と経営資源の効率的活用の実現につながります。