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魅力的な職場を作る!従業員のやる気を引き出す5つのポイント

仕事術

はじめに

最近、こんなお悩みをよく耳にします。

「従業員のモチベーションが続かない」
「優秀な人材が辞めていく」
「指示通りに動くだけで主体性がない」

これらの問題、実は職務設計の視点から解決できるかもしれません。

1970年代、ハックマンとオルダムが提唱した「職務特性モデル」は単なる理論ではなく、現場で使える実践的なツールです。
彼らが発見したのは、ある特定の職務条件が整うと社員は自ら進んで働き、高いパフォーマンスを発揮するという法則性でした。

モデルの生まれた背景と本質

職務特性モデルは1970年代、アメリカで大量生産方式の限界が見え始めた時期に生まれました。当時は、効率重視の単純作業が引き起こす「仕事の非人間化」が問題視されていました。
テイラー式の科学的管理法で作業効率は上がったものの、社員の疎外感や離職率の高さが大きな課題となっていたのです。

ハックマンとオルダムはこの状況に対し、膨大な実地調査から、人の心理に着目した新しい考え方を提案しました。

彼らが大切にしたのは、社員が仕事を通じて
・有意義さの実感
・責任感
・成果認識
という3つの心理状態を経験することでした。

仕事の特性を工夫することで、これらの心理状態が生まれ、その結果「自発的なやる気」「仕事の満足感」「高い成果」につながるという考え方です。

実際、ボルボやトヨタなど先進的な製造業ではこの考え方を取り入れ、生産ラインの再設計を行った結果、従業員満足と品質向上の両立に成功しています。

たとえば、社員に判断の自由を与えると、自分で課題を解決する中で責任感が育ち、達成したときに大きな充実感を得られます。これは、臨床心理学的研究からも実証されています。
また、マッキンゼーの調査で「仕事の意義を実感している社員」は生産性が約1.4倍高いという結果も出ています。

職場に変化を起こす5つの特性と実践例

①スキル多様性:単調さから脱却し、多彩な能力を発揮する機会

「同じ作業ばかりでつまらない」という声、聞いたことありませんか?
人はさまざまな能力を使う仕事に魅力を感じます。

ある製造工場では、製造現場の作業者が単純作業だけでなく、品質チェックや改善提案、時には新人教育までを担当範囲に含めたところ、離職率が30%も減少し、改善提案件数は前年比150%になりました。

あるIT企業では「ジョブローテーション制度」を導入し、半年ごとに異なる種類のプロジェクトに携わる機会を提供しています。
その結果「自分の強みと弱みがわかった」「視野が広がった」という声が増え、3年間で社内異動希望が40%減少しました。

大切なのは「ただ仕事を増やす」のではなく「違う種類の能力を使う機会を作る」ことです。

例:
・コールセンターでは、単純な問い合わせ対応だけでなく、マニュアル作成やトレーニングの一部も担当してもらう
・事務職でも月に1回は顧客訪問に同行し、現場の声を直接聞く機会を作る
・専門分野以外の社内勉強会講師を順番に担当し「教える」というスキルを磨く

②タスク同一性:断片的な作業から、完結した仕事へ

「自分は歯車の一部でしかない」と感じると、モチベーションは下がります。逆に、ある仕事の始めから終わりまで担当すると、達成感が違います。

サイバーソリューションズではシステム開発の現場で、以前は設計・コーディング・テストが別々の担当だったものを、小規模機能単位でチームが一貫して担当する「機能完結型チーム」方式に変えました。
結果「自分たちが作ったものという実感」が社員の誇りにつながり、バグ発生率が25%減少。顧客満足度も15ポイント向上しました。

金融機関のある支店では、融資業務を「申込受付」「審査」「契約」という部署ごとの分業から「担当者制」に変更。一人の担当者が顧客との最初の面談から契約締結まで責任を持つようにしたところ、処理時間が30%短縮され、社員からは「顧客との関係が深まった」という反応が得られました。

現場での実践ポイント:
・大きな業務を適切に分割し「この部分はあなたのチームが責任を持って完成させてください」とまかせる
・「分業」と「全体把握」のバランスをとるため、定期的な業務プロセス全体の共有会を開催する
・一人で完結できなくても「あなたは○○の専門家として、プロジェクト全体にこう貢献している」と伝える

③タスク重要性:自分の仕事の意義を実感できる環境づくり

「自分の仕事は誰の役に立っているのか?」
これが見えないと、やる気は続きません。

グローバル経理サービスの経理部門では「単に数字を処理している」という認識から「この数字処理が正確だからこそ、現場の営業がお客様に自信を持って提案できる」という意識に変化しました。すると、処理ミスが75%減少し、部門の満足度調査スコアも23ポイント向上したのです。

この変化のきっかけは、営業部門との合同ミーティングで営業担当者から「正確な数値資料があるからこそ大型案件が獲得できた」という体験談を聞いたことでした。

医療機器メーカーでは、製造ラインの作業者に定期的に「自社製品を使用している患者さんの声」を動画で紹介し、品質管理の重要性を実感してもらう取り組みを行っています。
その結果、自主的な品質改善提案が倍増し、不良品発生率も大幅に低下しました。

重要なのは、社員一人ひとりに「あなたの仕事が○○さんの仕事を支えている」「最終的にはお客様の△△という喜びにつながっている」と具体的に伝えることです。

実践アイデア:
・社内報での部門紹介や「あなたの仕事の先にあるもの」を可視化する社内マップの作成
・顧客からの感謝の声を直接現場に届ける仕組み作り
・異なる部門間の「一日職場体験」制度の導入
・自社製品・サービスの最終ユーザーと交流会の開催

④自律性:細かく管理せず、まかせてみる

「細かく指示されて動くだけ」という状態は、ロボットと同じです。人は自分で考え、判断する余地があると、責任感とやる気が生まれます。

ファーストコールセンターでは、以前はマニュアル通りの対応が求められ、すべての会話が台本化されていました。
しかし「基本的な方針の中で臨機応変に対応していい」という形に変えたところ、顧客満足度が20%アップし、問題解決率も向上。さらに、社員の「仕事の満足度」スコアが32%も上昇しました。社員からは「自分で考えるようになった」「お客様の本当の問題に向き合えるようになった」という声が多く聞かれるようになったのです。

ある小売チェーンでは、各店舗の発注権限を本部から店長に変更したところ、地域の特性や顧客ニーズに合わせた品揃えが可能に。在庫回転率が15%向上する一方、店長たちの「経営者意識」も高まりました。

自律性を高めるコツは「何をすべきか」ではなく「何のためにすべきか」を伝えること。目的と制約条件を明確にし、方法はまかせるというアプローチです。

たとえば:
・リモートワークでは「オフィスにいる時間」ではなく「成果物と期限」で評価する
・「この範囲内ならマネージャーの承認なしで決定してよい」という権限の明確化
・「失敗してもいいから挑戦する」という文化を醸成するための「チャレンジ枠」の予算設定
・社員主導のプロジェクトを推奨する「20%ルール」の導入(勤務時間の20%を自主プロジェクトに充てられる)

⑤フィードバック:成果と成長を実感できる仕組み

「頑張っても評価されない」と感じると、誰でもモチベーションが下がります。逆に適切なフィードバックは、社員の成長とやる気を促進します。

フレッシュマーケットでは毎日の売上数字だけでなく「今日のお客様の反応」「工夫したポイント」を共有する5分間ミーティングを始めました。
そこで高評価だった接客方法を「今週のベストプラクティス」として共有するようにしたところ、社員の積極性が向上し、顧客からの好意的なコメントが42%増加しました。

某広告代理店では「360度フィードバック」を導入し、上司だけでなく同僚や部下、時には協力会社からも評価を受ける仕組みを作りました。
当初は抵抗感もありましたが「多角的な視点からの気付き」として定着し、社員の自己認識と行動改善につながっています。

効果的なフィードバックのポイントは「具体的」「タイムリー」「建設的」の3つです。数字だけでなく、行動とその影響を伝えることが大切なのだと思います。

実践例:
・「サンドイッチフィードバック」の活用:良い点→改善点→期待・エール
・週次の「小さな成功共有会」での相互承認の時間
・数値だけでなく「行動変容」に焦点を当てた評価制度の設計
・「即時フィードバック」のためのデジタルツールやカードシステムの導入

現場で明日から使える!改善の進め方

現状診断から始めよう

まずは自社の現状を知ることが大切です。ハックマンとオルダムが開発した「職務診断調査(JDS)」を参考に、部下や同僚に「5つの特性」について率直に評価してもらいましょう。

あるIT企業では、各部門で「職務特性レーダーチャート」を作成。自分たちの業務が5つの特性において、どの程度充実しているかを可視化し、改善点を議論するきっかけとしました。
「最も足りないと感じるのはどれか?」と問いかけるだけでも、多くの気付きが得られます。

診断ツールとして活用できる質問例

スキル多様性:
「あなたの仕事では、どれくらいさまざまなスキルや才能を使う機会がありますか?」
タスク同一性:「一つの仕事を最初から最後まで関わることがどれくらいありますか?」
タスク重要性:「あなたの仕事は、他の人やお客様にどれくらい影響を与えていると感じますか?」
自律性:「仕事の進め方について、どれくらい自分で決められることがありますか?」
フィードバック:「自分の仕事の成果や効果を、どれくらい明確にわかりますか?」

これらを1〜5点で評価し、平均点が低い領域から改善を始めると効果的です。

小さな一歩から改善を

すべてを一度に変えようとすると挫折します。
たとえば、まずは「フィードバック」から改善するなら「週に一度、15分の面談時間を設ける」という具体的な一歩から始めましょう。

ある製造業では、タスク重要性の強化のため、月に一度「私たちの製品がどこでどう使われているか」を共有する10分間のプレゼンを始めました。
コストはほとんどかかりませんでしたが、社員の「仕事の意義」の実感度は確実に向上しました。

スキル多様性を高めたい場合は、まずは「〇〇改善プロジェクト」のような短期的な取り組みで、通常業務とは異なる経験を提供することから始められます。

最後に:明日からの一歩

職務特性モデルは「高コストの制度」や「特殊なスキル」を必要としません。明日から、あなたの職場で実践できる実用的なアプローチです。

ある中小企業の社長は言います。

「高い給与や福利厚生は大企業には敵わない。でも『やりがいのある仕事』ならうちでも作れる。
実際、職務特性モデルを活用して仕事の設計を見直したところ、離職率は半減し、社員からの改善提案は3倍になった」

仕事のやり方をほんの少し変えるだけで、社員の「仕事への向き合い方」は大きく変わります。そしてその変化こそが職場の活力となり、生産性を高める最も確実な方法なのです。