最近、経営者さんと話していると「求人を出しても人が集まらない」「採用が難しい」といった悩みをよく耳にします。実際にデータを見ても、昔に比べて働きたい人や転職希望者が減っているのは明らかです。
そこで、具体的な数字を交えながら、今起きている変化とこれからの採用戦略について考えてみたいと思います。
目次
- 1. 新卒の数が減っている
- 2. 若年層の労働力が縮小
- 3. 求人倍率の変化
- 4. 転職市場の変化
- 5. 採用しやすい年齢層の変化
- 6. シニア層と女性の重要性
- 企業が見直すべき採用戦略
- 1. 採用ターゲットを広げる
- 2. 働きやすい環境を作る
- 3. 採用ブランディングを強化する
1. 新卒の数が減っている
1985年には新規学卒者が約85万人いましたが、2025年には約66万人。22%減少です。
以前は「新卒を採っておけばいい」という考えが通用しましたが、今はそもそも新卒者の絶対数が減っているため、企業の採用戦略も変えていく必要があります。
2. 若年層の労働力が縮小
15~24歳の労働力人口は、1985年には約1,700万人。それが2025年には約900万人。約半減です。
単純に若者が少なくなっただけでなく「働こう」と思う人の数も減っています。企業は「どの層にアプローチすべきか」を本気で考える必要があります。
3. 求人倍率の変化
- ・1990年頃(バブル期):1.4倍(売り手市場)
- ・2003年(不況期):0.53倍(超買い手市場)
- ・2023年:1.2~1.3倍(依然として人材争奪戦)
求人倍率はバブル期より高く「企業が人を選ぶ時代」から「企業が選ばれる時代」へと変わっています。
労働市場における求職者数の絶対数の減少と、企業側の採用競争の激化により、企業は求人を出しても、採用できる「働く意思を持つ人」が限られているのが現実です。
4. 転職市場の変化
2018年時点で、非労働力人口のうち「働きたい」と考えていた人は約332万人でしたが、2021年には171万人に減少。特に女性の就業希望者が大幅に減っています。
単に「求人を出せば人が来る」時代は終わり、「求職者に選ばれる企業」にならなければ人は集まりません。
5. 採用しやすい年齢層の変化
20代前半の新卒が減少している以上、シニア層や女性の活用がより重要になっています。
60代以上の採用割合は1980年代には5%未満でしたが、今では12%以上に増加しています。
6. シニア層と女性の重要性
日本の労働力人口は1995年のピーク時(約6,800万人)から減少傾向にあり、2025年には約6,600万人と予測されています。この人口減少に対応するには、これまで労働市場に十分参加していなかった層の活用が重要です。
- ・シニア層:65歳以上の就業者数は、2000年の約430万人から2023年には約920万人へと倍増。就業希望者は約120万人と推計されています。
- ・女性:就業率は2000年の約57%から2023年には約74%まで上昇。非労働力人口のうち就業希望を持つ女性は約170万人と推計されています。
労働力人口減少時代において、単純に「新卒採用」だけを追求するのではなく、シニア層と女性という2つの大きな潜在労働力を活用することが、企業の人材戦略として不可欠です。
企業が見直すべき採用戦略
こうした変化を踏まえると、企業は従来の採用手法を見直す必要があります。特に、以下の3つのポイントが重要になります。
1. 採用ターゲットを広げる
- ・新卒だけに頼らない:中途採用の強化
- ・シニア層の活用:経験豊富な人材を戦力化
- ・女性の働きやすさを向上:育児・介護との両立を支援
2. 働きやすい環境を作る
- ・フレックスタイム制の導入
- ・リモートワークの活用
- ・育児・介護支援の充実
「働きたい」と思われる職場を作ることが、今後の採用成功の鍵になります。
3. 採用ブランディングを強化する
- ・企業の魅力を発信(SNSや採用サイトの活用)
- ・企業のビジョンやミッションを明確にする
- ・求職者目線での採用戦略を考える
単に求人を出すだけではなく、どの層をターゲットにし、どんな働き方を提供するかを明確にすることが、人材確保のカギです。
これからの採用は「いかに魅力的な職場を作るか」にかかっています。
